遅ればせながら アフターダーク by 村上春樹2009年04月26日

 雨と晴れの交錯する、忙しい一日だったね。
 僕は、埃だらけの車を雨粒でまだらに染めながら、昔通った山の中腹の図書館に行って。iPodに入ったグレゴリア聖歌3時間分を聞く間だけ理系の勉強に没頭して。
 渋滞の道をむかし懐かしいALFEEのアルバムを聴きながらやり過ごして、家では、ハードディスクに録画したコルトレーンのライブを音だけ聞きながら、本を読んだよ。

 村上春樹の、アフターダーク。

 僕には、変な癖があってね。
 村上春樹という作家を、ご多分に漏れず僕も好きで、小説はほとんど欠かさずハードカヴァーで購入しているのだけれど。
 でも、読むのは、次の小説が発表されてから、なんだよね。特にこのごろは。
 ちょっと前に話題になった海辺のカフカも、発売日に買ってるし、評価高いのも知ってるんだけれども、読んだのは結局、アフターダークのアナウンスがされてから、だったんだよね。何でかわからないのだけれども。
 というわけで、今のところの最新作、アフターダークも、04年の発売以来、家のリビングルームに飾ってあったんだよね。文庫が出たのも気にせず、大事に、ね。
 昨日、新作の予約をアマゾンで済ませたから、っていうわけではないのだけれど、今日、ようやく手に取って。
 コルトレーンのライブと、それが終わってからはベートーヴェンのピアノ曲を聞きながら、一気に読んだよ。

 アフターダーク。上下巻の、内容的にはともかく分量的には重たいカフカのすぐ後に出たイメージがあって。それに薄目の本だから、軽いお話なんだろうな、っておもってたんだ。内容的に、ではなくって、村上春樹の位置づけ的に、ね。たとえば国境の南、太陽の西とか、スプートニクの恋人、みたいに。

 そう思って読んでいったのだけれどもね。これ、僕が思っていた以上に軽い話だったみたいだね。何度もいうけれど、内容が、ではなくて位置づけが、ね。
 つまり、短編としてのお話が、たまたま長くなっちゃって、だから一つだけで書き下ろしで本にしちゃおうか、みたいな。

 つまり、長編に向かう新たな方法論を確立する一環としての短編小説のあり方、TVピープルみたいな、そんな位置づけのお話なんじゃないかなあ、っておもったんだよね。
 つまり、これを肥やしにして創られるお話を抜きにして、この物語の価値を云々できるのだろうか、って。
 もちろん、そろそろノーベル文学賞をとるんじゃないか、っていうエラい人の作品をどうこういうつもりはないのだけれど。でも、起承転結っていうか、物語のあるお話を、やっぱり読みたいよね。長編だったら。

 一つだけ。ファイブスポット・アフターダークがちょっと前に、TVのコマーシャルで大量露出されたのは、外国に住んでいる大先生は知らなかったんじゃないかなあ。
 「今どきファイブスポット・アフターダークを知っている女の子がいるなんて」っていう台詞から、どうしても同時代性を感じ取れなくなっちゃったんだよね。有名な曲だもの。
 元々無国籍、無時代性の強い作家だからそれでもいいのかも知れないんだけどね。


 私たちの視点。結局なんだったんだろう。
 次のお話は長そうだね。久しぶりに、リアルタイムに読んじゃおうかな。

 ただ、それだけのはなし。


 追伸。
 ファイブスポット・アフターダークがCMで流れてたのって、今から20年も前の話だったね。5年前のいまどきの女の子が知らなくても、そっちの方があたり前だったね。
 僕がその当時トロンボン吹きで、カーティス・フラーのソロを一生懸命コピーしたりしていたから、ついこの間のことだと思ってしまいました。
 ごめんなさい。

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