オオウエエイジの、ブラ3 〜がんばれ大フィルさん〜2009年04月19日

 さて、番外編が一段落して。
 大フィルさんの、新学期が始まったよ。
 オオウエエイジの7年目のシーズンになるんだね。今年も楽しい演奏、いっぱい聴かせてね。
 
 新年度の第一弾は、オオウエエイジのごった煮。
 ブラームスとバーンスタインとストラヴィンスキーなんて、名曲コンサートでなければごった煮っていうしかないプログラムだよね。
 でも多分、本人にしたら大まじめに、十八番を集めたプログラム、ってことなんだろうね。
 おととしのドタキャン以来、ブラームスはオオウエエイジにとって大事なプログラムになったんだろうね。大事に、一年一曲プログラムに入れて。バーンスタインは言わずもがなだし、ストラヴィンスキーだって、結局実現しなかった大フィル就任前のミネソタで持ってこようとしたのが春の祭典だったから、十八番の一つなんだろうし、ね。
 僕は、オオウエのハルサイはあんまり感心しなかったから、火の鳥はちょっと楽しみ半分のこりは、、って感じだったのだけれども。
 
 ともかく、今年もおんなじ席で楽しませて頂きます。
 
 ブラームスの、3番。
 ブルックナーほどではないけれど、ブラームスのCDもいくつかは持っているんだけどね。全集を買うと、大体3枚組で2番3番は1枚のCDに収まっているんだよね。そのおかげで、3番だけを集中して聴く、っていうことがあんまりなくて。つまりは聴いたことはあるけれど良く知らない曲なんだ、僕にとってはね。
 その3番。
 前に書いたことがあるけれど、ブラームスの音って、独特の響きがあるよね。ブラームスフィルターって呼んでいるんだけれども。つまり、どんなによく鳴るオケがどんなにフォルテをならしても、ヴェールを一枚かけたような、蓄音機の向こうから聞こえてくるような響き。それがブラームスフィルター。多分中音域の厚さのせいだと思うんだけどね。
 オオウエの3番も、ご多分に漏れなくて。十分しっかり鳴っているんだけれども、なんかどっか他のところで演奏しているような、他人行儀感がつきまとってたんだよね。
 第1楽章はね。
 
 ところが。
 演奏中に後ろのお客さんが、鈴付きのおさいふか何かをごそごそやっていて。その音から逃れるために途中からちょっと前のめりになって聴いていたのだけれど。
 そしたら。
 いや、前のめりになったせいではないと思うのだけれど、途中から。
 突然、音が生々しくなった。
 薄い緞帳のようなブラームスフィルターの、内側に入ったような感じ。
 こうなったらもう、何でも受けてしまう状態なのだけれど。この状態で聴く3番。なんて立派な曲なんだろう。
 途中全休符がいくつかあるのかな、何楽章を演奏しているのか、途中から分からなくなったのだけれども、多分3楽章かな、ホルンのソロ。完璧。
 大フィルさんのホルンのソロでは、いつぞやのパヴァーヌのソロがものすごく印象的でね。そのおじさんは多分去年に退官しちゃったから、それ以後ちょっと寂しかったのだけれども。でも、今日のソロは凄いね。技術的に完璧かとかそういうことではなくって、歌として完璧。終演後にソリスト立たせたときに、思わずブラヴォーコールしちゃったよ。2回目だな、ソリストにブラヴォーしたの。そのくらい凄かった。
 そんなこんなで、前座にするにはもったいないブラ3、面白かった。
 
 第一部は弦バスが後ろに並んだ両翼の配置だったのだけれど、休憩中に戻してね。バーンスタインは打楽器が後ろに来るおなじみの配列で(このごろこっちがスタンダードって言えなくなってるけれど)。
 始まったバーンスタイン。キャンディードの軽快なファンファーレ。
 だと思ったら、そうではなくってね。
 
 ああ、そうか。
 星空コンサートとかで良くやるやつは、キャンディード序曲で、今日は組曲なんだ。
 僕はアメリカものはコープランドくらいしか聴かないから、キャンディードの組曲もはじめてなんだけれど。先週の京都のガーシュインと違ってクラッシックアーティキュレーションのミュージカルメドレー、楽しく聴きました。
 拍手を受けるオオウエエイジが、ヴァイオリンの楽譜を取り上げて、バーンスタインに敬意を表していたけれど、彼の師匠は作曲家バーンスタインだっただろうか?
 
 火の鳥。
 ティンパニと弦の急襲。最初の一撃だけは乱れちゃったけれど、その後のアンサンブルが完璧でね。こういうアンサンブルで聴くストラヴィンスキーは、楽しいよね。
 僕の中の火の鳥は、ムーティ/フィラデルフィアの息切れよれよれ大団円の演奏と、映画ファンタジア(2000だったっけ?)の演奏がリファレンスなのだけれど。
 そのイメージからするとオオウエエイジの火の鳥は、ゆっくり大事に進んでいくんだよね。ハルサイの時もそう感じたのを想い出したけれど。
 もうちょっと、ノリに任せて突き進んで欲しいな、っていうところもあったけれど、キメのところを一つ一つ大切に、正確にクリアしていくこの演奏も、ちょっと好き。汗かきべそかき大運動会になりやすいフィナーレも、結構余裕でクールに決めて。
 
 とか思ったらね。
 音には現れないんだけど、一人だけ、クールじゃない人がいたよ。
 コンマスの、長原君。
 ラス前の、ヴァイオリン渾身の伸ばし。
 8分音符かもっと早く、弦を上下させる最強奏の場面でね、長原君が一人だけ浮いているんだ。ビジュアル的に、ね。
 何でかな、ってよく見てみると。
 一人だけ、必死の形相。そして、もっと目を凝らすと。
 細かく往復する右手の弓。その弓の使い方が、他の奏者と全く違うんだ。
 他の奏者が弓の根本から3分の1くらいを使ってギーギーやってるのに比べてね、長原君だけは、弓の半分以上を使って弾いているんだ。
 つまり、他の人の倍、弓を使ってるってこと。弓の速さも倍なら、手の動きも倍。そこから出てくる、渾身のオーラ。
 ああ、これがオオウエエイジ御用達の、コンマスなんだよね。コンマスとしての長原君、ちょっと見直したな。
 それを見ながら追随しない1stヴァイオリンってどうよ、とは思うけれど。
 
 ああ、楽しかった。
 
 今年もこういう演奏会、いっぱい聞かせてね。
 がんばれ、大フィルさん。
 
 そうそう、さらに痩せちゃったね、オオウエエイジ。ダイエットならいいけれど。
 健康にも気を遣って、がんばってね。
 
 ただ、それだけのはなし。

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大阪フィルハーモニー交響楽団
第427回定期演奏会
大植英次:指揮

ブラームス:交響曲 第3番
バーンスタイン:組曲 キャンディード
ストラヴィンスキー:バレエ組曲 火の鳥 1919年版

ザ・シンフォニーホール