尾高さんのエニグマと、祝Trb復帰!!2026年04月13日

 春だね。

 桜の花は今年も見事に咲いて、そして今では散ってしまったけれど。今、うちには5年前にもらった胡蝶蘭が、最後の蕾を開かせようとしているよ。


 4月といえば、新年度だね。僕の生活環境もちょっとだけ変わって。

 そして、大フィルさんの定期演奏会も、新しい年度に突入したね。


 大フィルさんの定期、会場がフェスティバルホールに移ってから、ずっと同じ席で聴いていたのだけれど、今年度から、少し場所を移ったんだよ。

 BOX席真後ろど真ん中の席は、音は良いのだけれど、ちょうどフルートあたりが指揮者の影で見えない席でね。音の小さい楽器ががんばっているのを耳だけじゃなくって目でも追いかけたくって、少し後ろ、少し角度のある席に変えたんだ。

 今日が初めての新しい席、どんな音がするんだろう。


 新年度最初の定期は、尾高さんの指揮で、エルガーのエニグマ変奏曲。って、2月にオールエルガープログラムやってたやん、尾高さん。ホント、好きなんだね。


 残念なことに、僕はあんまりエルガーが好きではなくって。

 エルガーの音楽って、縦乗りなんだよね、基本的に。威風堂々は行進曲だから当たり前っちゃああたり前なのだけれど、他の曲もみんなそう聞こえる。ショスタコーヴィッチもそうんだけど、両方とも、僕はちょっと苦手。ウィンナワルツみたいに、とはいわないけれど、腰が動くような横乗りの方が聴いてて楽しいんだよね。あくまでも僕の好み、だけど。


 最初の曲は、尾高尚忠の交響曲第1番。尾高さんのお父さんの曲だね。なんかの番組で、伊福部さんの音楽を評して、「西洋音楽が入ってこない状態で創られた、西洋音楽の模倣ではない、日本独自のクラシック音楽」っていっていたのを見たけれど、尾高お父さんのこの曲も、そういう感じ。

 シンバルとティンパニの強奏から始まるロングトーンは、吹奏楽の曲みたいだな、と思って聴いていたのだけれど。

 

 なのだけど、あれ、なんか変わった?


 大フィルさんの音が、なんか違う。

 シンバルとティンパニが去った後の弦楽器の伸ばし。こんなに透明感があったっけ。

 ピッチとか、アーティキュレーションとか、そういうものではなくって、なんか、音がそれぞれ透明で、すべての楽器の音が手に取るように見える。なんか変だけどそういう感じ。

 音が織りなす景色が、それが持つ意図が、明瞭に、見える。


 それは、座席の位置が変わったからそう聞こえるのか、それともこのごろトラ頼みだったトロンボンのトップの人が帰ってきたからバランスが締まってそう聞こえるのか。

 それとも今回だけの幻なのか。よく分からないけどね。


 とにかく、スッと曲の世界の中に入れて、楽しく聴けたんだよ。


 後半のエニグマも同じで。

 変奏曲の変奏メロディの一個一個が、生き生きと踊り出す感じ。あれ、この曲全然縦乗りくさくないや。

 トロンボンのソリも、揃った高さに並んだ、まっすぐ前を向いたベルから出てくる明るい響き。懐かしいなあ、嬉しいなあ。


 ちょっと景色が変わった大フィルさんの定期、今年も楽しませてもらいます。


 次回はタバシュニクのプルチネルラ、だね。これも楽しみ。


 ただ、それだけのはなし。



ウィントンの、リンカーンセンターオーケストラ20262026年03月23日

 ウィントンの、コンサートに行って来たよ。

 JAZZ AT LINCOLN CENTER ORCHESTRA。


 ウィントン・マルサリスっていう、稀代のトランペッターがいてね。90年くらいには既に新進気鋭ながらジャズの中心にいたようなヒトで。マイルス・ディビスに正面から喧嘩売ったり、計算され尽くした正確無比なアドリブは冷たいっていわれたり、突然ディキシーにいって帰ってこなかったり。

 これからどんな活躍をしてくれるんだろう、って期待が膨らんでいるところで、1992年にJAZZ AT LINCOLN CENTER ORCHESTRAの音楽監督になったんだよね。


 このオーケストラ(ジャズではビッグバンドのことをオーケストラって言うんだよ)は、当時の僕の認識では、ニューヨークの、音楽の中心に居を構える、ジャズというゲージツを保存し、啓蒙するためのハウスオーケストラ、というもので。

 ジャズは芸術であり、エリントンは世界最大の音楽家だ、っていうウィントンには天職だろうけれど、ジャズは娯楽であり、一見冷たそうなウィントンから(わりとすぐに)こぼれ落ちる情熱の欠片が大好き、という僕には、なかなか聴く機会が、ライブであれレコードであれ、喪われそうなことが残念だったんだよね。


 だから、僕が生で見たウィントンは、マウントフジジャズフェスティバルでの、自身のバンドと、、夜のジャムセッションでのラシェル・フェレルとの饗宴や、ディジー・ガレスピービッグバンドへの飛び入りのマンテカなど、いろんなバンドへの飛び入り参加。

 そのあとは、ピットインでのエルビン・ジョーンズとの至上の愛ライブ、いくつかのホールでのコンサート、くらいなのかな。シンフォニーホールで横から聴いたのって、セプテットだったっけ? 

 2,3年前に、オクテットで聴いたのが、だから何十年ぶり、とかいう感じだったのかな。ビッグバンドは、はじめてなんだよね、今回が。


 あのウィントンが、若くして男子一生の仕事と定めたリンカーンセンターオーケストラ。どんな演奏してくれるんだろうね。


 東京からツアーで廻ってきていたから、FaceBookとかにはツアーの写真や、エリック宮城さんの感想とかもアップされていて。それは楽しみをかき立てるだけれど、自分の耳で聴くのが一番の楽しみだよね。


 チケットは、一般発売日の朝に取ったにもかかわらず、2階席三列目の端の方で。当然会場は超満員。そんなに安いチケットではないから、もう少し席選びに余裕があると思ってたのだけれどもね。客層は、ロマンスグレーの育ちが良さそうなご夫婦、奥様方と、ジャズ演ってます、演ってましたの人たち。7:3くらいなのかな。


 ステージには、こぢんまりと見えるセッティング。4トランペット、3トロンボーン、5リード、3リズムの15人。


 時間になって、真っ先に出てくるウィントン、トランペットの端の席に座って。フリーで吹き始めた。

 7枚組のライブ盤、ヴィレッジヴァンガードだっけ、あの頃に良く聴かれた、アップテンポで、無伴奏のソロ。これぞウィントン。

 いつの間にか、バンドのメンバーも入ってきて、演奏にリズムが入って、そしてトゥッティ。曲は、セロニアス・モンクのFour in One。


 何じゃこりゃ。


 アップテンポのビバップ曲だから、難しいフレーズが続くのだけれど、トロンボンも含めてのフレーズ、そしてびたりと決まる「ッカッ」っていうドゥ。

 15人で出しているとは思えない、シャープな音。音の重なりによるうねりとか、そういうのではなくって、コンボでやっているような、キレキレのフレーズにハーモニーがついている、そんな感じ。


 なんか、ビッグバンドっていうもののイメージをひっくり返されたな。とはいえ、生で聴いた常設のビッグバンドって、うたばんのアロージャズオーケストラと、アマチュアの宇治金くらいか。あんまり生で聴く機会がないものね。


 アンサンブルはキメキメで、各人のソロは、後ろからウィントンの目が光っている、と思うからなのか、勢いに任せたものでは無く、よく考えられた、無駄な音のない知的な(?)ソロ。

 ピアノは僕の好きなパラパラ系。

 いやあ、しあわせだなあ。


 短めの休憩を挟んで、2部はじまりは、ゲストピアニストの角野隼斗。この人もパラパラ系で、最初のスウィングの曲はかっこよかった。


 いやあ、しあわせだなあ。

 と浸りながら、曲と時間は過ぎていって、はっと気がついたんだよね。


 あれ、ウィントン、最初の曲しかソロ吹いてない。


 そう、バンマスのウィントンは、MCはやるけれど、各曲でソロを、ということは全くなく、一人のトランペッターとして演奏していたんだよね。

 ビッグバンドがすごすぎてあんまり思わなかったけど、やっぱりウィントンのソロ、聴きたいなあ。


 というところで、最後の曲ではウィントンのソロもたっぷり聴けて。

 アンコールではセプテット編成でディキシーものを演奏してくれて。この曲が一番客席盛り上がってたから、お客さんはウィントンをきちんと知っている人たちなんだね。すごいな。


 男子一生の仕事として、リンカーンセンターオーケストラを選んだウィントン。コンボで新しいジャズを作っていくのを見ることが出来なかったのは淋しいけれど、芸術としてのジャズをこうやって聴かせてくれて、ありがとう。


 今度は、20年も待たせないでね。


 ただ、それだけのはなし。

大阪市民管弦楽団の、ブラームス第2番 第101回定期演奏会2026年03月16日

 大阪市民管弦楽団の、演奏会に行って来たよ。

 第101回定期演奏会。

 前回のマーラーから、半年だっけ。半年ごとに演奏会って、結構大変だよね、ご苦労様。


 今回は、ワーグナーのマイスタージンガー前奏曲と、ハイドンのロンドン交響曲、そしてブラームスの交響曲第2番。ハイドンはやや短めとはいえ、立派な交響曲2曲の、欲張りなプログラムだね。


 WBCの準々決勝を気にしつつ、直前に入った座席は2階席の最前列。尾高さんのベートーヴェンを聴いた席とほぼ一緒。どんな演奏してくれるんだろう、楽しみ。


 演奏はね。

 もちろん、第一部から楽しく聴かせてもらったのだけれど、そんなこと吹っ飛んでしまうくらいの、休憩後のブラームス。上手く言葉にならないんだけど、ブラームスから始めさせてもらうね。


 ブラームス、交響曲第2番。

 ブラームスは、4曲の交響曲を遺したのだけれど、人気があって演奏頻度が高いのは1番と4番だよね。4曲しかないから、チクルス形式で演奏されることも多いし、ひとつの演奏会で1,4番ではハードすぎるからだろうけれど、1,2番と3,4番っていう組み合わせで演奏されることもあるから聴かない曲ではないけれど、単独でメインを張る曲としては「渋い」と思われる、そういうイメージの曲だったんだよね、僕の中で。

 ちょっと前に、ムーティ/シカゴ響でブラームスの1,2番を聴いた時に、2番の方が楽しめたな、って思ったはずなのだけれど、それでもまだ、「渋い」と思ってしまうんだよね。


 ところが。

 なんだこれ。

 さっき(第一部)と、全然音が違う。ブラームスの音、とも違う。

 うきうきして、わくわくする、そういう音、そういうグルーヴ。そう、グルーヴに満ちあふれた音楽。クラシックに使う言葉かどうか解らないけど、最大級の、褒め言葉。


 ブラームスの曲って、なんか箱庭を枠越しにみているようなイメージがあるんだよね。音の外枠が決まっていて、そこから外に出て行く伸びやかさがあんまりない。それは、高校生の頃に、室内アンテナでノイズの入るFM放送をエアチェックして聴いた時のイメージなのか、ファゴット、オーボエのダブルリードが輪郭を作っているからなのかよく解らないけれど、生で聴いても録音を聴いても、そういう枠を感じる演奏が多いんだよね。


 ところが、この演奏、全くそういう匂いがしなくって。

 金管だってそれなりに強奏してるのに、ワーグナーで感じたような突き刺すようなゴロゴロ感(多分席のせいで感じる)がなく、丸くて跳ねる、いいバランスで。

 そして、ホルン。

 第一楽章のオブリガード(?)は可憐に、第二楽章のソロでは朗々と、大地に根を張ったような存在感。いいなあ。

 パンフレットに、ブラームスの田園、と書かれていたけれど、然もありなん、だね。


 どこだったか忘れちゃったけど、フレーズ中のディミュニエンドとかリタルダンドとか、そういうところの揃い方が、曲の練習をたくさんしているんだろうなあ、って感じられていいんだよね。

 でも、聴いているうちに、アマチュアの演奏会だってこと、全く忘れて、聴き惚れてました。


 アンコールの、ハンガリー舞曲7番(だっけ)では、確かにブラームスの音になってたんだよね、不思議。


 この週、オケの演奏会は3回目だったんだよね。大フィル/オオウエエイジの名曲コンサート(ルスランとリュドミラ、中央アジアの平原にて、スペイン奇想曲、シェヘラザード)と、PACの定期(シベリウス2番他)。ドイツ語圏の音楽から離れた演奏会が続いていたから、正統派のドイツ語圏の音楽(ドイツなのかオーストリアなのかの区別がついてないんだ)を堂々と聴かせてくれて、ありがとう。


 ワーグナーもハイドンも、十分楽しんだのだけれど、ブラームスのインパクトが強すぎて、感想が飛んでっちゃった。ごめんなさい。

 ハイドンのラッパ、あの楽器バロック用ですか?凄いですね。


 素晴らしい演奏を、ありがとう。

 また、よろしくね。


 ただ、それだけのはなし。

お疲れ様でした! Mt.Uji Jazz Fes.20252025年12月17日

 大昔、トロンボン吹きだったことがあってね。
 高校の吹奏楽部で、それまでのユーフォニウムからトロンボンに乗り換えて。その部活が、ジャズの演奏に力を入れている部で。
 その影響から、大学に入ってもジャズ研、それと並行して、高校のOBが主体となって作ったBig Bandにも所属していたんだよね。
 就職して大阪に来ちゃったけど、何の因果か2年目からはつくばに転勤になったから、また復帰して。つくばから大阪に帰るまではお世話になったんだ。
 それから、もう30年近く経つんだけどね。

 その間、そのBig Bandは、年2回の活動、夏のコンサートと、冬のジャズフェスをほぼ欠かさず継続していてね。
 なんと驚くべきことに、メンバーもあんまり替わってないんだよね。

 そのバンド、Special 宇治金時 Lunchtimesっていうんだけどね。長いから、宇治金、って呼ぶけれど。


 宇治金は、僕の所属していた高校の吹奏楽部OBが中心になって結成したBig Bandで。最初はそんなに人数がいなかったのかな、現役の先輩も何人かトラで借り出されていて。
 僕が新入生のとき、先輩が出るから(OBがやっているから)ってことでお客さんとして動員させられたコンサート、確か第4回、って書いてあったのかな。
 それを4年目、と数えると、40年以上、続いているバンド、なんだよね。

 そのバンドの、冬のフェスティバル、「Mt. Uji Jazz Festival 2025」に、お邪魔してきました。

 つくばから、大阪に戻ったのが30年近く前だから、それ以降夏、冬合わせて50回以上のライブを宇治金は行っている勘定で。そのうち、僕が大阪から聴きにいったのは今度で多分3回目。だから、熱心な聴き手、というわけでは全くないのだけれどもね。

 Mt. Uji Jazz Festivalは、ビッグバンドである宇治金と、そこから派生した、あるいはそこから人のつながりで誘ったコンボがいくつか出演して、コンボ、ジャムセッション、そしてBig Bandっていう、午後3時から始まって8時前くらいまでやっている、フルサイズの立派なお祭り、なんだよね。
 会場は、浦和のライブハウス、ナルシス。半地下に分厚い扉を開けて入る、伝統的なライブハウス。
 最後に来てからもう10年以上?くらい?経ってるから、どんな顔して入ろうか、と、リハも大詰めの頃に顔を出したんだよね。

 まあ、予想通り、「おう、ひさしぶり」「どこ住んでんの今? 大阪から?」であとは普通に仲間に入れてもらって。ありがたいもんだね。

 会場設営など、お邪魔になりそうなのでいったん街をぶらついて。昭和の純喫茶で珈琲飲んで。
 開場後に再入場。
 薄暗い階段降りて、重い扉を開けて。小さなカウンターでチケット買って、ハイボールもらって。

 最初のバンドは、しいたけALL STARS。サザンのカヴァーバンドなんだけど、専任パーカッションからブラス隊、コーラスまで入った10人編成。
 セミプロのブラス、パーカッションを従えて、ひたすらサザンを愛するボーカルが気持ちよさそうに歌う。
 聴いててね、ブラスのパンチがかっこいいとか、コーラス効果的だな、とか。いろいろ思ったのだけれど。なによりボーカルの方の桑田愛が凄い。しゃくり方とか細かいニュアンスとか、ものすごく聞き込んでるんだろうなあ。あ、この元ネタはライブ盤だな、とか。
 ちょっと前に、ボブディランのオリジナルアルバムを多分はじめて聴いたときに、桑田、桜井さんの歌ってこの真似じゃね、って思ったのだけれど。イヤイヤ真似じゃなくって影響うけてるの、って考えると、このボーカルはホントに桑田さんの影響受けてるんだね。
 それを、この豪華なバンドを従えて、オープナーなのに満員のライブハウスで唄える贅沢さ。それを聴きながら酒を飲める贅沢さ。
 穴蔵のようなライブハウスの広いとは言えないステージは、10人乗ったら結構キツキツで、どうやって最後のビッグバンド乗るんだっけ、って余計な心配しながら楽しんだよ。

 次は、青山卓トリオ。3人とも宇治金のメンバーではないけれど、永らく出演しているコンボのメンバーを含む、正統的なピアノトリオ。
 この、正統的な、っていうのは難しい(?)言葉でね。
 ちょっと前に、Blue Giantっていうアニメ映画があったのだけれど。テナー吹きの高校生が「世界一のジャズマンになる」って云ってがんばる映画なのだけれど。
 この主人公は、パーカーやコルトレーンを聴きながら、ソニー・スティットっていいよね、とかいいながら、仲間を集めてライブハウスで演奏するのだけれど。
 その演奏が、バキバキのコンテンポラリーでね。上原ひろみが音楽担当だから、まあそうなのだけれど。
 それまでの流れで、世界一のジャズマンになる、っていうことで。最初に演奏するのはインプレッションとかコンファメーションとか、そんな感じの曲だと、なんとなく思い込んでいたんだよね。めちゃめちゃかっこいい曲を聴きながら、ああ、正統的なジャズってもうおじさんのものでは無いんだな、って思ったんだよね。

 あ、青山卓トリオね。
 こちらもだから、バップ時代のジャズではなく、最新の正統的なジャズ。
 キメキメのオリジナルから始まって、チックコリアのハンプティダンプティ。それからペトルチアーニ、そして最後は上原ひろみ。
 難しい曲なのに淡々と土台を作るベースと、好き勝手に遊び回るドラム。それをまとめるピアノ。なんか、ジャズ聴いたなあ、っていう満足感がある演奏だったね。打ち上げで、ドラムがリードだって聞いて、さもあらん、って思ったんだよね。ドラマーの選曲はえげつないからね。

 さて、順調に酒も進んで、3杯目からはジンライム。
 お次は、クニヤス率いるViSCo。ビブラフォンでスタンダードとコンテンポラリーをやるバンドだから ViSCo、だそうで。
 クニヤスさんは、宇治金のドラム・パーカッション担当なのだけれど、いろいろやりたいことが多いんだろうね。いろんな形態でバンドを作ってマウントウジを盛り上げてる。
 ちょっと前からFaceBookでビブラホンのレッスンに通ってる、っていっていて。そのブランニューな成果のお披露目。(っていうのは10年ぶりに聞く僕目線ね)
 ブレッカーブラザースのリユニオンの時の曲や、ソフトリー-朝日のように爽やかに-とか、まさにビブラホンでスタンダードとコンテンポラリ。
 このバンド、クニヤスさんに、鳥居、須田、笹田という、僕が宇治金に入ったときから変わらないリズムセクションなんだよね。ジャズに入り始めたときにすり込まれた音。なんか、懐かしいしほっとするし。帰ってきた、って感じがしたな。

 続いては、MMJG。歴史の長いバンドでね。僕がたまに聴きに来るときはいつも演ってるんだ。Mixiで集まった仲間だからMixiなんとかJazz Groupっていってたような気がするけれど、まだMixiで連絡してるのかしら? 
 このバンドは、それこそBlue Giantで上原ひろみがやったような曲を、テナー、ラッパ、トロンボンの3フロントで演奏するハイテンションなバンドで。仙台のジャズフェスに17回も出ているらしい。
 フロントの西片さん、金子さんも、僕がすり込まれたプレイヤーでね、西片さんのブロウ、これもまた故郷に帰ってきた、って感じるんだよね。

 ジャズって、簡単な取り決めだけですぐにみんなでひとつの曲を奏でられるんだよね。ソロの受け渡しで、何人でも参加できる。
 マウントウジには、ジャムセッションの時間があってね、出演者でもそうでなくても、演奏に参加できるんだ。もう四半世紀も、プラスチックの楽器を飾ってあるだけの僕は参加しなかったけどね。
 何曲か演奏したのだけれど、ラッパ3本でやったのなんの曲だっけ。3ラッパのセッションって、クリフォードブラウン、クラークテリーにいじめられるメイナードファーガソンのセッションが思い浮かぶけど、今回はみんな芸達者で面白く聴けました。

 ということで、そんなに押しもせずにビッグバンド。さっき10人でキツキツと思ったステージに、20人が並んで。
 この前ナベサダのビッグバンド聴いたけど、うたばんではない、純粋なビッグバンド、久しぶりだな。

 今回のフェスでは、入場時にQRコードがたくさん載ったチラシを配っていて。そこを辿ると、メンバーやセトリの紹介から、ビッグバンドの各曲用の小ネタまで、いろいろなものが仕込んであって。MCも担当している中山さんの力作なのだけれど。
 その小ネタを紹介しながら、1曲ずつ丁寧にMCを挟んで曲が進行していくのだけれど。まあ、40年前から演奏している人が多くて、休憩が必要なんだよね。わかるわかる。

 何曲か、僕がいるときに演奏した曲もあって。Basie Straight Aheadとか、Jamieとか。
 そういう曲を口ずさみながら聴くと、前よりも格段に迫力を増したトゥッティの中に、聴き慣れた、というよりすり込まれたタイコのおかずとか、ピアノのポロン、っていうソロの入りとか、フレーズの中で異なる八分音符の揺れ方とか。
 そういう音が、保存されているんだ。いや、新しく生み出されて、生み出され続けているんだ。

 ずっと前、僕がつくばから大阪に戻って来てしばらく経った頃、元バンマスが、最近の宇治金ってとんでもないことになってる、それを分かる人に聞いてほしい、っていってCDを送ってくれたことがあったけど。
 30年近くの時を超えて生で聴く演奏は、更にとんでもないことになっていて。でも多分、ステージの上の人たちはそんなことに気がついていないんだろうなあ。
 そんなことに気がついていないのは、選曲にも現れていて。歳取らないなあ。永遠の20代のようにきつい曲が多いセトリで、後半のバテ方も宇治金らしいなあって、楽しく聴いてました。

 打ち上げまで入れてもらって、ありがとうございました。
 今度は50周年記念の時かな。それまでごきげんよう。

 ただ、それだけのはなし。


くつろぎのジャズフェス@福井=ジャズ井 UAと山下洋輔の饗宴2025年11月27日

 長い夏がやっとどこかに行って、山には雪、野には紅葉のいい季節がやってきたね。
 小春日和の北陸で、ほっこりするジャズフェスに行ってきたよ。

 大人のくつろぎ音楽堂フェス JAZZ井。
 館内放送を聞いているとJazzyって読ませたいみたいだけど、JAZZ-iって読むよね。福井のJAZZ井、だもんね。


 福井には、立派な音楽堂があって。いまではハーモニーホールっていうのかな。国道8号線を車で走っていると、背の高い立派な街路樹の向こうに悠然とそそり立ってるんだよね。気にはなっていたのだけれど、今回、初見参。
 フェスだからね、ビール飲みながらでしょう、っていうことで福井駅から路面電車で30分かけてとことことホールへ。広大な緑の敷地と、同じくらい広大な駐車場。そうだよね、1時間に1,2本の2両編成の電車で30分かけてくる人はそんなにいないよね。


 あ、フェスの出演者はね。僕の興味でいうと、コロナ禍以降何回も聴いているUAと、学生時代から折に触れて聴いてきた山下洋輔。そして、「東京大学のアルバート・アイラー」などの著作を読んではいるけれど、実はまだ聴いたことがない菊地成孔。この3人がメインの目当てなんだよね。
 最近、山下洋輔が年内で演奏活動の休止を発表したから、図らずも僕にとって多分、最後の生山下。楽しみが募るよね。

 開演の1時間前の会場の、更にその前に到着した僕らは、ホールのある公園(?)を散策して、借景のようなもみじ、なのか楓なのかプラタナスなのかの並木まで足を伸ばしたら、それは僕が3時間前に通った国道8号線の街路樹で。車で行けばホンの15分の道を、歩きと電車で1時間くらいかけてはるばる来たんだなあ、って思ったんだ。(当日、大阪から福井の家人の部屋にクルマで行って、それから音楽堂に来たんだよね) 
 それもこれも、フェスの枕詞、ビールのためなんだけれど。

 ひとしきり散策してもまだ開場していないけれど、歩き疲れたのでロビーに入ろうとしたら。ロビー前の屋外に立食用のテーブルを置いたテントとキッチンカー3台。係員さんがフェスのポスターを貼っている。
 おお、これは、本格的な野外フェスの情景じゃないか。演奏はホールだけど。開場時間より前だからか、キッチンカーも準備中だけど。
 ホールのホワイエはワインバーになるらしい。

 開場時間になってオープンしたキッチンカー。3台はケーキ、ビール、揚げ物をそれぞれ担当していたのだけれど、僕が取り付いたのはもちろんビール。アイリッシュビールのIPA、おいしくいただきました。

 開場を待って入ったホールは、なんと立派なクラシック用のホール。二階席まである椅子の配置も心なしか広くって、なんて贅沢なんだ、福井。
 
 そんなこんなで、満員の音楽堂。
 トップバッターは、ソエジマトシキ& Nahokimama。ギターとラッパのデュオっていう珍しい形態なんだけど、ギターのソエジマさんは、最近エリック・クラプトンが来日したときに絶賛していたギタリスト。どっかのワイドショーで見たときには、そんな人がいるんだ、って思っただけだけど、ここで聴けるんだ、贅沢。
 ソエジマさんのギターは、まるっこい音を出す癒やし系のギターで、奥さんのNahokomamaはギターで伴奏もすればラッパも吹けば歌も唄う大活躍。オリジナルと、僕でも知っているカヴァー曲、Isn't She Lovelyとかで、見事に大人のくつろぎ感を醸成してくれました。

 続いて休憩なしで、このフェスのサウンドプロデューサー、福井出身の坪口昌恭率いるTextures。デラルスのパーカッショニスト大儀さんも入っているピアノトリオ+パーカッションのバンドで、そこにゲストの菊地成孔。
 菊地さんは、フリーのサックス吹き、っていうイメージなんだよね。フリーのっていうのは、流しのっていう意味ではなく、フリージャズのっていう意味なのだけれど。端正なカルテットに、菊地さんの咆哮が飛び込んで、更にインテリっぽいラップまで披露する菊地さん。結構なお歳だと思うのだけれど、パワフルな演奏、楽しみました。途中で、ツアー中のスカパラからキーボードとサックスの方も来てくれて、大盛り上がり。

 40分のワイン休憩を挟んで、山下洋輔。
 なのだけれど、この40分のワイン休憩、入ったと同時にワインバーには長蛇の列、そして屋外の3台のキッチンカーもテントに入りきらない長い列ができて、僕はそうそうにアルコール再投入を諦めました。。

 山下洋輔は、云うまでもなく、日本のモダンジャズを創った人の一人で。それこそ安保の時代に消防服で燃えるピアノを叩いていた頃から、現在に至るまで、機会があれば聞きたいミュージシャンなんだよね。僕は、学生時代の金沢のもっきりやで、グランドピアノをさわりながら聴いたのが初めてで、その後は、クラシックやバンドやビッグバンド、いろいろな形態で聴いているけれど、今回はどんな演奏なんだろう。
 会場にセットされているのは、グランドピアノひとつと、離れたところにキーボード。
 開演。いつもの白いスラックスにベストで入ってきた山下さん。最初はソロで。
 年末で演奏活動休止を発表した山下さん。もちろん、かつてのキレキレの、指の一本一本が肘打ちしてるなじゃないか、っていうパワフルな演奏スタイルではなくなったのだけれど、それでも弾けば山下洋輔。
 3曲目、ソロ最後の曲は、ボレロ。高校生の頃、センチメンタルっていうソロアルバムに入っていたボレロ、良く聴いたな。
 そこからは坪口さんが入って寿限無からの曲とか、菊地成孔も入って大きな古時計とか。
 大きな古時計は、学生の頃、もっきりやで聴いたとき、山下洋輔の対面でグランドピアノさわりながらうとうとしてしまった記憶があるんだよね。平井堅がカヴァーするずっと前だけど。気持ちよかったんだろうね。
 僕にとって多分最後の山下洋輔。その演奏、いろんな形で披露してくれて、肘打ちまでしてくれて、ありがとう。

 時間が押してるのか、次の休憩は少し短めで、UA。
 UAといえば、以前このフェスに参加している菊地成孔とジャズのアルバムを作ったことがあるよね。cure jazz。好きだったなあ。
 フェスだから、こういう組み合わせもありなのか。ジャズフェスだから、UAがジャズ歌うのか、と思っていたら。
 なんと、UAはどこまで行っても、UAのステージをやり遂げた。
 このごろ、女性のコーラスを従えてひと頃のダイアン・リーヴスみたいなアフリカンなステージをしていた印象があるのだけれど、今回はドラム・ベース・ギターのトリオを従えて、シングル曲多めのお披露目ステージ。客席もUA目当ての人が結構多かったんだろうね、「こんなのジャズじゃないわ」って怒り出す人もなく、なんかMCの声は少し出づらそうだったけれど、歌はさすがのUA。この前の30周年ライブもすげー、って思ったけど、今回も凄かった。

 そして、アンコール。
 仕事で移動した人もいたけれど、残っていた人みんなで、Night in Tunisia。UAの家将凄い。この曲の歌バージョンはマンハッタン・トランスファーでしか知らないけど、マントラに入れるぞ。
 山下洋輔も出てきてくれて、ホントの聴き納め。ちょっと泪。うそだけど。

 終演後は駅に急いで、逃したら40分待ちの2両編成の電車に、何とかみんな乗れたようでした。

 ああ、面白かった。
 福井の小粋なジャズフェス。これからも続けてね。

 ただ、それだけのはなし。