センチュリーのロマンティック 〜がんばれ在阪オケ! その3〜2009年04月11日

 さあ、どんどん行くよ。
 春のがんばれ在阪オケ、第3弾。今度は大阪センチュリー交響楽団のブルックナー。
 
 このごろブルックナーのメジャーな曲を聴く機会があんまりなくってね。高関さんの5番が最後、なのかな。あ、メジャーな曲っていうのは、4,5,7,8,9番のことね。長調ではなくて、僕の好きな、っていう意味で。だから、シンフォニーホールに響くロマンティック、聴き逃す訳にはいかないよね。
 センチュリーは、もしかしてはじめてかな。どんな音がするんだろう、わくわく。
 
 第一部は、フルート協奏曲。
 ブルックナーばっかりに目がいって、こっちのほう全然気にしてなかったけれど、知ってたら二階席じゃなくって一階席を取るんだったな。やっぱりフルートのソロは近くで聴きたいものね。
 しかも、ソリストのピエルーさん、綺麗。
 ああ、一階席にすれば良かった。
 
 演奏はね、指揮者の小泉さんは前に前に行きたがるのかな。最初の速いパッセージ、結構転びまくっていて。弦がね。弦が転びまくるようなパッセージ、ソロフルートの音が朗々と響き渡る訳もなく。どうしたものかと思ったのだけれども。
 でもそれは、演奏者が悪い訳ではなくってね。朗々としたところでは音響き、そしてロングトーンの長さ、いい感じに聴かせてくれました。
 このピエルーさん、センチュリーのフルート吹きなんだね。ゴージャスだなあ。
 
 協奏曲はあくまで前座でね。僕の目当てはブルックナー。
 プログラム見てびっくり仰天したのだけれど、何とセンチュリー、今年度9回の定期演奏会のうち、ブルックナーを3回もやるんだね。しかもライブ録音でまとめてCD販売予定。しかも4,5,6番。もしかして来年は7,8,9番?
 ちょっとうきうきしちゃう企画だけれど、いかんいかん、まずは4番をきっちり聴いてから。喜ぶのはそれからにしよう。
 
 シンフォニーホールのブルックナーといえば、もちろん大フィルさんのそれと比べてしまうのはしょうがないよね。違うオケの、違う演奏だっていうのは百も承知だけれども。
 そういう眼で見ると、やっぱり編成の大きさの差って気になるよね。特に二階席からステージを俯瞰すると。大フィルさんの第一ヴァイオリン16人、ホルン8人(あとは推して知るべし)に比べて、ヴァイオリン10人、ホルン5人ではやっぱりステージの後ろがすーすーするのはしょうがないよね。ヴァイオリンの後ろの方にひな壇を作って、すり鉢状のステージ。一体感を重視した配列なのかな。どんな音が出てくるんだろう。
 
 結果的にいえば、めちゃくちゃ楽しいブルックナーだったよ。え、結果早すぎ?
 
 一楽章。朗々と流れるホルンのソロが、びっくりするくらいゆったりとしていて。
 4番の始まりって、原始の霧っていわれている弦のトレモロから、ホルンのソロで遙か彼方の山の稜線が見えて、楽器が増えるごとに近くの景色にピントが合っていって、チューバの二拍三連ですべてが噛み合って世界が動き出す。そんな感じで大好きなんだけど。
 テンポの遅さは否応なしに緊張感を高めて。その緊張感を保ちながら決してシリアスにならないで。なんていうんだろう。
 とっても楽しい。
 そして、とってもブルックナー。
 
 右奥のひな壇前方に固まったホルンの人数が見慣れた景色より少ないから、その後ろのトロンボンの前にがっぽりとスペースがあって。そのせいかトロンボンのコラールがダイレクトに聞こえてきて気持ちがいいんだよね。ラッパのアタックはちょっと刺激的なところもあったけれど、すぐにそんなの気にならなくなってね。
 
 おいおい、まだ1楽章だよ。
 っていいたくなるくらい、ブラスも弦も飛ばす飛ばす。
 CD発売が前提の演奏会なんて、きっとそんなに頻繁ではないだろうし。これはセンチュリーさん、本気やな。
 それも玉砕覚悟の。
 
 その本気度がダイレクトに伝わってきて、思わず背筋を正したよ。ああ、これもブルックナーなんだよね。
 
 フレーズの中の音は朗々とテヌートっぽいのに、フレーズの終わりは結構ぶっきらぼうなことが多くって、慣れるまでちょっとだけ違和感があったんだけど、まあそれもオルガンらしい、ってことなのかな。
 
 ゆったりした1楽章とは対照的に、スケルッツォは今度は飛ばす飛ばす。ホルンのタンギングとかちょっと苦しそうに聴こえるくらい飛ばすんだけど、その一直線さ加減がまた楽しいんだ。もう何でも受けまくりモードだからね。出てくる音がみんな愛おしいよ。
 
 玉砕覚悟で突き進んだ分、最後のコーダの、もうひとつぐわっと来る盛り上がりというか緊張感はさすがになくって。拍手とブラボーのタイミングがちょっと早かったのは残念だけれども。
 でも、そんなこと関係ないくらい楽しい演奏だったよ。ありがとう。
 
 僕を含めて朝比奈信者は、うのこーぼーの言葉にだまされていてね。「ブルックナーの演奏には正解が一通りしかない」とか、「二人のじいさんが死んだ今、本物のブルックナーを生で聴くことはもうできない」とか。
 もちろん、そんなの嘘っぱちだよね。今日、はっきり分かったよ。
 そりゃあ、じいさんのブルックナーをCDで聴くのもいいけれど、元気なオケで生のブルックナーを聴くのとは全く違うよね。ホルンが落ちないか、弦が転ばないか、そういうはらはらどきどきまで含めて、やっぱり生は楽しいよね。
 
 演奏が終わったあと、チケット売り場に行って、ファンクラブに入っちゃったよ。
 だって、あと2回のブルックナーもそうだけど、次回は芥川也寸志のトリプティークだもんね。
 楽しみ楽しみ。
 
 ただ、それだけのはなし。

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大阪センチュリー交響楽団
第140回定期演奏会
指揮:小泉 和裕
フルート:ニコリンヌ・ピエール

イベール:フルート協奏曲
ブルックナー:交響曲 第4番 ロマンティック
ザ・シンフォニーホール