市民オペラの、モーツァルト2013年11月30日

 

 ドイツ語は、大学時代に他人の二倍も勉強したはずなのだけれどもね。なんでかっていえば、単位を落としまくったからに他ならないのだけれど。

 それでも、ドイツ語なんて、英単語に似た単語が書かれていれば、おぼろげながら意味が掴めるくらいで、聞き取るなんて無理だし、道端の広告も読めない、程度。つまりは、ダンケシェーンとイッヘリーベディッヒくらいしか分からないのだけれど。

 

 それでも、ドイツ語圏を歩いていると、フォルクス、っていう単語によくぶつかるのは、分かるんだよね。

 もちろん、ステーキ屋さんのフォルクスがドイツ語圏にある訳ではなくて。

 フォルクスっていうドイツ語の単語は、市民の、とか、庶民の、とかいう意味なのだと思うのだけれど。

 僕の愛車である、ウィーンでもたくさん走っているフォルクスワーゲンは、大衆車、っていうくらいの意味だし、フォルクスバンク、なんていう銀行もあるんだよね。市民銀行、っていう感じなのかな。

 

 そして、僕が観に行ったのは、フォルクスオペラ。大衆歌劇場、っていうくらいの意味、なのかな。

 

 ウィーンは、もちろん音楽の都で。モーツァルトの街で。ブルックナーやらなんやら、ともかくクラシック音楽黄金期のそうそうたる作曲家たちが闊歩して、今でも銅像を建てたりしてその文化を忍んでる、音楽の都。

 そういう都の、オペラといえば国立歌劇場が有無をいわさず、世界的に大人気。小澤征爾が何年か音楽監督をやったことでも有名なこの国立歌劇団と国立歌劇場。ここで上演されるオペラを是非みたいなあ、と思っていたのだけれど、見事にsold out。難しいんだね、チケット取るの。一週間前じゃ、ね。

 でも、未練たらしくwebを観てたら。ウィーンにはひとつじゃないんだね。オペラハウス。

 という訳で、いってきたよ。

 ウィーン第二のオペラハウス。フォルクスオーパー。市民オペラ。

 

 国立歌劇場は、泣く子も黙る、市内の中心にデン、と鎮座している豪華な建物。なのだけれど、市民オペラは、ちょっと外れた郊外、って云ってもいい場所に位置する、控えめなオペラハウス。

 市内の華やかな繁華街とはちょっと雰囲気の違う地下鉄線に乗って、薄暗い駅におりて。

 駅前すぐにあるはずのオペラハウスも、最初はどこだかわからなくって、いろんなポスターを貼ってあるビルに当たりをつけてひとまわりしたら、正反対の所に入り口があって。それがオペラハウス。

 ちょっとはやめについたから、ボックスオフィスで予約していたチケットをもらって。なんか食べたいなあ、ということで散策。

 30分で出てこれそうなちょうどよいレストランがなかなか見つからなくってね。隣のブロックにあった、アジアンフードの食堂くらいしか選択肢がなく。

 和風と中華のチャンポンのバイキングを、結局たらふく食べて。

 

 そして、いざ、入場。

 この劇場では、入場するときに、なんか黒い袋を配っていて。なんだろうと思ったら、飴ちゃん、というかグミなんだよね。真っ黒い、のど飴のような、のどグミ。ありがたいね。

 

 席は、バルコニー席。

 ここでいうバルコニーっていうのは、2階席。2階正面の、1列目。わーい。オーケストラピットも指揮者も、ステージもよく見えるよ。

 会場は、スカラ座のような蜂の巣の小部屋がいっぱい、という訳ではなくって。普通のホールのように、1階席、2階席、3階席とあって、左右に何個か、十数個ずつくらいかな、個室がある。

 ああいうのは、年間席なのかなあ。

 

 さて、オペラ。

 これまで僕は、ドイツのミュンヘンで、イタリアオペラのアイーダを観て、そしてイタリアオペラの本場ミラノでは、英語のヴェニスに死す、を観たのだけれども。

 今回やっと。ご当地ものの権化。

 ウィーンで、モーツァルトのオペラを観ることができたよ。

 フィガロの結婚。

 

 とはいえ、オペラに明るくない僕には、この有名なオペラも、結局良く知っている訳ではなく。

 前日に、Wikipediaであらすじの予習と、直前にムーティのCD買って一回流し聴き下程度、なのだけれどもね。

 

 「オペラのストーリーなんて単純で、結婚してめでたしめでたしか、みんな死んで可哀想か、そのどっちかしかない」

 っていっていたのは、オオウエエイジだったけれど、フィガロの結婚は、そういう意味では前者、結婚してめでたしめでたしの典型的な明るいオペラ。

 なんだけれど、その話は結構複雑でね。

 タフな女に引っ張り回される、悪徳お代官さまと、実直な若者その他大勢の男たち。

 そういう人たちが繰り広げるどたばた喜劇。

 今、スラップスティックコメディって書いて、それをどたばた喜劇、って書き直したのだけれど。市民オペラのフィガロの結婚。これはもう、どたばた喜劇以外の何物でもないね。

 

 オペラって、しゃなりしゃなりの衣装で着飾った歌手が、声を張り上げてアリア合戦、っていうのが、僕の勝手なイメージだったのだけれども。

 

 フィガロの結婚は、なのか、市民オペラ座は、なのか知らないけれど、しゃなりしゃなりは控えめで、そのかわりユーモラスな動きが満載で、そして、何よりも。

 アリア。

 

 僕でも知っている、有名な「恋の悩み知る君は」を始めとして、男も女も、主役も脇役も、みんな聴かせどころのアリアがあって。

 楽しいなあ。

 

 ドイツ語の唄は全くわからないし、ドイツ語の字幕も読めないし。Wikiで斜め読みした予習はどう考えても不足で、結局何が行われていたかよく分からないけれど。

 愚かな策略の掛け合い、化かし合い。吉本も真っ青のお約束のリアクション。

 やっぱり、楽しいなあ。

 

 重要な二重唱を、チェンバロ一本で伴奏する所とか、結構音が薄くなるところがいっぱいあって。ああ、才能に任せて書き急いだんだろうなあ、と思うところ満載なのだけれど、それがモーツァルト、なんだよね。

 

 ああ、楽しかった。

 

 また、行く機会があったら、今度は計画的に、国立オペラと市民オペラ、聞き比べてみたいな。



 ただ、それだけのはなし。

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