優柔不断のクルマ選び 番外編 新型ゴルフGTI !! ― 2013年10月14日
6月に書いた、ゴルフVIIの試乗の記事がね、おかげさまで、ずいぶんたくさんの方に読んでいただくことが出来て。
あらためて、注目されているんだね。新型ゴルフ。すごいね。
じゃあ、何でそんなに注目されるんだろうね。もちろん、卵が先か鶏が先か分からないけれど、輸入車雑誌がこぞって、これはすごい、って書いていたりするのだけれど。たくさんの人が、自分の次のクルマとして真剣に考えるって(その延長線上の僕の記事の閲覧数なのだと思うのだけれど)、そんな雑誌の記事だけじゃないんだよね。きっと。
2年前、いろんなクルマを試乗してみて、ゴルフかポロかで迷った僕としては、ゴルフが次に買う候補として人気があるのは、本当にたくさんの理由があるんだよね。質実剛健で合理的で、実用的であるのに、やっぱりガイシャっていう色も備えた才色兼備で。その割に華美ではなく実は日本の道にあった大きさと値段。
外車なんて高くってと思っていた、僕を含めた人たちが、値段表を見て、あれっこれは範囲内だぞ、と思って見に行ったら、あれっ結構扱いやすい大きさで、エンジンだって控えめで燃費も良いし、ってなって。
そして、試乗したら。
ああ、ここにあったんだ。
そうなるパターンが多いんだろうね。
僕もそうなりそうだったから。
結局は、もうちょっと小さくて、もうちょっと元気が良いpoloに決めたのだけれど。
その後、6台目のGTIや、Golf VIIにも試乗させてもらって。雑誌とかも読んでああ、こういうのが完成度が高い、っていうことか、自分なりにイメージを作ってね。
そして、ようやく。
試乗してきたよ。
新型ゴルフ、お待ちかねのGTIに。
2年前は、ゴルフGTIって、僕のスコープに入っていなかったんだ。
同じ2リットルエンジンで280馬力の、それも四駆でMTのレガシイに乗っていたからね。同じ2リットルターボで、しかもFFで、オートマで、燃費だってそんなによくない、211馬力しかないガイシャに、こんな金払えるか、って。そう思ってたんだよね。
今回も、別にすぐ乗り換えよう、とか思っている訳では(申し訳ないけれど)全然ないのだけれども。僕のクルマの兄貴分がどうなっているか。どれだけすごいのか。それを体験させてもらいに、乗ってきたんだよ。
白のGTI。
乗る前に、前から顔構えをじっくり見てみると。
すぐに目が行くバンパー横のフィンと、他のグレードよりずいぶん低い車高。そして、ヘッドライトのガラスの内側まで張り出した赤いラインのおかげで、えらい悪い印象になったね。あのいいこのゴルフが。
悪い印象、っていうのは、悪い意味ではなくってね。GTIだもの、これくらいしてくれなくっちゃ。っていう意味でね。
それから、脇にまわるとGTIのステッカー。、18インチのホイール。わくわくするね。
車の中は、GTI乗りに取ってはおなじみの、赤ステッチとチェックのシート。ステアリングはちょっと細いのかな。ステアリングにボタンがいっぱい着いているのはあんまり好きではないけれど、オーディオ取り替えられないなら、使えないボタンになる訳じゃないからまあいいか。
キーレスで、ボタンひとつでエンジンかけて、電子式のサイドブレーキを解除して。
いざ、出発。
新型ゴルフには、電子制御で幾つかの走行モードを選ぶことが出来てね。それをコンソールの液晶画面でみることが出来るのだけれども。(ちなみに、このコンソールの備え付け画面は、今のところカーナビにならないようで、この試乗車にも外付けのカーナビがついてたよ。)
まず始めはスポーツモードにして。オートマもDじゃなくってSにして。つまりは臨戦態勢モード。これでしばらく遊んでいたのだけれど。
まあ、なんというか。
なんておもしろみの、、いや、危なげのないクルマなんだろう。
街中だってSモードのエンジンは結構高回転まで廻るのに、苦しげなどころか、違った音ひとつ立てないし、出力も、ブレーキも、poloに比べればずいぶん大きな車両感覚も、なにひとつ違和感がない。
全てがあるべき所にあって、思った通りにクルマが動く。対向車を気にしながらの信号右折とか、名神とよなか入り口付近のまあるいカーブとか。poloを初めて運転したときにあまりの楽しさとかスリルについついアクセルを踏んでしまった場面でも、涼しい顔をして、しかも素早く駆け抜ける。ちょっとだけ、ハンドルがよれる感じがするのは、ダイレクトなpoloから乗り換えた一瞬の違和感なのかな。
渋滞の街中じゃなくって、持って行くところに持って行ったら、そりゃあはやいんだろうなあ。つかれないんだろうなあ。
束の間の横Gを満喫したあとの渋滞は、コンフォートモードに切り替えて。画面の情報を見ると、エンジンやサスやステアリング、そしてオートクルーズのモードまで切り替わるんだね。オートクルーズは、やり方わからなくって試してみなかったけれど。
そう、このコンフォートモード。前にVIIのハイラインに乗ったときには、エンジンがあまりにのんびりさんになるのに唖然としたのだけれど、このGTIでは、もちろんそんなことはなかったのだけれど、パワステが軽くなるんだよね。ちょっと、歩行者がバンバンよってくる街中では怖いほどに。でも、こういう性格が違うクルマを演じられる、っていうのは、人を乗せる必要のあるファーストカーには、便利だよね。
poloでは、逆立ちしたって、優雅にお年寄りを乗せるジェントルな乗り心地、なんて出来ないからね。
結局。
初めてとは思えない、懐かしささえ憶えるようなフィット感と、自在に操れると錯覚しそうな万能感を堪能したし。
出力上がったのに2割もよくなった燃費は、結構検討の余地あり、になってきたのだけれど。
でも、帰り道、poloに乗り換えた最初に感じた、ダイレクト感と安心感。右足の親指の付け根でクルマと会話が出来るような一体感。これを、まだまだ楽しんでいたいなあ、って。それを再確認したんだよね。
次かその次、クルマにジェントルさを求めるようになって、それでも枯れずにかっ飛びたい、と思っていたら、もう一回、視野の中に入ってくるのかな。その時、また、のせてね。
とはいえ、帰り道の中速からの加速。おめー、おせーよ、って、poloのアクセル蹴飛ばしちゃったんだけどね。
やっぱりはやかったんだ。ゴルフGTI。
慣れって、怖いね。
ただ、それだけのはなし。
大フィルさんの、フェス復帰!! 〜井上道義月間〜 ― 2013年10月26日
オオウエエイジがいなくなってから、そろそろ2年がたとうとしている大フィルさん。
その2年を、音楽監督なしの、10回定期/10人指揮者っていう、良く言えば楽団員の自主性やら自律性を重んじる体制で過ごしてきて。
ようやく。
来年以降の体制が固まったんだね。
井上道義さんの、主席指揮者就任。
そして、この前改装オープンしたフェスティバルホールへの、定期演奏会の移動。
井上道義さんは、朝比奈さんの時にも、なんて名前か忘れちゃったけれど、こんな感じの大フィルの役職に就いていたと思うのだけれども。
今回は、音楽監督ではなく主席指揮者。粘土更新の3年間。
それがどういう位置づけなのかよく分からないけれど。ひとまず。主のいない流浪の音楽集団からの脱却は、嬉しいよ。よかった。
この発表に逢わせた訳ではないだろうけれど、9月は井上道義月間でね。僕は行ってないけれど、その間の大阪クラシックでは、多分オオウエエイジが大活躍だっただろうから、そう思わない人も多いだろうけれど、定期と、フェスでのオペラ、きちんとしたコンサートを2回、井上さんで聴いたんだから、それは井上月間だよね。
この、9月の演奏については、あんまり語る言葉を持たないんだけれどもね。主席指揮者就任を知る前に聴いた二回。どっちもなかなかに、これで主席指揮者、っていう不安を残すものだったんだよね。
定期は、メシアンのトゥランガリラ交響曲。次の月の、定期のパンフに載っていた感想を読むと、生で聴けたことに感謝しなければいけないようなレアな曲のようなのだけれども。
付け焼き刃の予習で聴いたケント・ナガノの印象と比べると、なんといって良いか。
曲に聞こえないんだよね。とっちらかった、断片の寄せ集め。現代曲あんまり好きじゃないから、しょうがないのかな。演奏のせいじゃないのかな、とも思って、それはそれで、僕の中では解決したのだけれど。
そして、2週間後くらいになるのかな。
フェスでの、オペラ、青ひげ公の城。
新装開店したフェス。僕にとっては、インバル/都響のチャイコフスキー以来2回目のホールでね。
1,700人のシンフォニーホールに比べて、2,700人のフェス。じいさんが愛した、このでっかい箱(建て替えたけれどもね。)を、大フィルさんが、どう鳴らしてくれるのか。興味はその一点だったのだけれどもね。
第一部。オッフェンバック。
あらら、そうなんだ。
半分、不安混じりに予想していたのだけれど。
音が、届いてこないんだよね。
そんなに、後ろの席ではなかったはずなのだけれども。ステージと僕の席の間に、マジンガーゼットの基地のようなバリアがあって。生の音、あるべき音が、そのバリアを越えてこない。薄膜越しの音楽を聴いているようだったよ。
もちろん、オッフェンバックって、そんなに新しい時代の人ではないから、そんなに大きな編成で奏でるべき音楽ではないのだろうけれど。
そして、復活にいけなかった僕が悪いのだろうけれど。
僕にとって初めての、新フェスでの大フィルさん。このでっかい箱を音で満たす、そういう演奏を聴きたかったな。
オペラは、面白かったのだけれどもね。徹頭徹尾二人芝居で、その筋の面白さで聞き入ってしまいました。アンドレア・メラースっていう女の人、きれい。
これはミッキーの演出なのだろうけれど、最初に出てきた吟遊詩人も、導入として面白かったし。
何より、拍手を受けるミッキーは、やっぱり上手いね。こういうエンターテイメント系の指揮者は、オオウエエイジもそうだけれど、クラシックの敷居を下げてお客さんを増やすのにはもってこいだよね。
あとは、このフェスを満たす音。その響きを取り戻すこと。お願いね。井上道義さん。
続いて、10月の定期。
演奏はまたの機会にするとして。
開演20分前くらいに会場に着いたら、まだやってたんだよね。プレトーク。
ミッキーの常任就任や、フェスへの移動が発表されて最初の定期だから、どんなやりとりになっているんだろう、って聴きに行ったよ。
行ったら質疑応答の真っ最中だったのだけれども。
質問。昔のフェスは音響がショボかった。エロイカのトリオなんか、聴けたもんじゃなかった。シンフォニーホールでのエロイカのトリオはすごかった。こんな良いホールを捨てるのか。それとも新フェスはそんなにすごいのか。
これ質問した壮年の方。なんか見覚えあるんだよね。ひょっとして大フィルOBのかたかな? でもだったら、事務局の人は知ってるもんね。
まあいいや。
この質問、僕には異論があってね。
音響の良い、小さいシンフォニーホールで、大フィルは楽をしちゃったんじゃないかな、って思うんだよね。
たまにフェスで聴く時も、昔の朝比奈さんのときに感じた、フェスを埋めつくす音の圧力とかそういうもの、感じなくなっちゃったんだよね。
荒々しくても未完成でも、音のでっかい大フィルさん。それが時々、奇跡のアンサンブルを手に入れて、信じられないような名演奏になる。その可能性を楽しみにするためには、フェスに戻って、フェスを満たす音を手に入れること、大事だと思うよ。
きれいに聴こえるシンフォニーで、楽してる場合じゃないよ。
という訳で、10月定期は、ラドミル・エリシュカの新世界。
ちょっと長くなっちゃったから、またの機会にね。
この演奏、どう捉えるべきか。今はまだかみ砕くのを楽しんでいるから、ね。
ただ、それだけのはなし。