祭りの前 〜南大門と、自衛隊〜2009年02月01日

  あ、散歩の話だね。

 シアターキノは、大通りとすすきのの間にある狸小路の中にあってね。だから大通りをつらつら歩いてみようと思ったんだよね。
 
 昨日、タクシーで通ったときに、雪祭りの彫刻用なんだろうね、加工前のでっかい雪筒がぼんぼん置いてあったから、どうなってるんだろう、って楽しみだったんだよね。

 
 大通公園はね、基本的にひもが張ってあって、一般人は入れないようになっていて。端っこだけ通路になっていたりするんだけれどもね。
 
 踏み固められて凍って、しかも昼間の日差しで少し溶けだした滑りやすい地面を気をつけて歩きながら、祭りの前のにぎにぎしさ、楽しんだよ。

 
 いくつかの、山のように積み上げられた雪や、昨日円筒のままだった雪にとりついてスコップで加工している人たちや。
 そして、一番目を引くのが、自衛隊の車と、明細色で作業する隊員さん、なんだよね。
 
 もう、形の大部分できあがった南大門(韓国の崇礼門の通称が、南大門らしいんだ。東大寺のではなくて、そっちね)。ビルの谷間に、白い巨大な建造物。脇に止まった自衛隊車両と行き交う外国人の通行人。
 なかなかシュールな風景だよね。

 
 この南大門、かなり大きいのだけれど。これと同じくらいの雪の山が、あと二つ三つあるんだよね。
 そういえば、行ったことないな、雪祭り。

 
 今年じゃなくてもいいから、いつか行ってみたいなあ。

 
 ただ、それだけのはなし。

ほめられたね、ポメラ2009年02月07日

 そう。
 物欲旺盛な僕なのだけども、このごろそんなにほしいものってなかったんだよね。
 だけど。
 久しぶりに、ちょっと物欲をそそるものがあったんだよ。それがこれ。
 これって、今この文章を打ち込んでいるデバイス。
 電子メモ帳の、ポメラっていうんだ。

 電子メモ帳ってね、何かっていうと。
 メモ帳サイズで、テキスト入力ができる液晶とキーボードがついたアイテムなんだけどね。
 テキスト入力ができるっていうか、テキスト入力しかできないのだけれど。
 でも、持ち運びは文庫本サイズで、折り畳み式の結構ちゃんとしたサイズのキーボードがあって。しかもATOK搭載でサクサクした入力ができる。
 他に何がいるんだ、ってかんじだよね。

 わーい、買っちゃった。
 いいでしょ、これ。

 僕はこの手の、新幹線や飛行機でテキスト入力ができるデバイスってのにあこがれていてね。ずっと昔のモバイルギアも買ったし、携帯用の折りたたみキーボードも考えていたんだよね。あ、写真は、15年くらい前に買った、モバイルギアと並んだポメラ。赤い方ね。キーボードは拡げたらおんなじくらいで、幅はほぼ半分。厚さはさすがに1.5倍くらいだけどね。
 そういうわけで、発表の時から欲しかったんだけれども。
 でも、衝動買いをやめるために、2ヶ月我慢して、それでも欲しかったら買おうっていう僕の中のルールに則って、3度目の入荷でやっと決心したんだ。わーい^^/

 もちろん、けちを付けたいこともいっぱいあるんだよ。
 例えば、漢字をあんまり知らないところとか、畳んだら思ったより分厚いところとか、細かいギミックで、耐久性に問題がありそうなところとか。
 漢字は、結構知らないんだよ、こいつ。例えば、ちょっと前にヒロスエのおくりびとについて書いたときには、このポメラを使ったのだけれど。
 「穢らわしい」
 の漢字って、出てこないんだよね。汚らわしいしか出てこない。
 でも、この字は違うんだよね。だから、(あとで変換)とかメモ書きを入れながら書いていくのだけれど。もうちょっと漢字を知っていて欲しいなあ。

 でも、そんなこといってもね。
 僕はとっても気に入っているんだよ。このポメラのことを。

 この前、飛行機で北海道に行く機会があってね。そのときにこのポメラを連れて行ったのだけれど。
 そのときの飛行機の席が、直前にちょっといい席にアップグレードしたせいで、前に誰もいない、離陸時にはCAさんとにらめっこをする席になったのだけれど。
 ジュースとお菓子をもらって、持っていった本がちょっと期待はずれで時間を持て余していた僕は、このポメラを拡げて、キーボードの練習をかねて、思いつくままの言葉を入力していたんだよね。

 そしたらね。
 着陸態勢に入るちょっと前に、僕とにらめっこをしていたCAさん画ちょこちょこって来て。
「それってコンピューターなんですか?」って聞いてきたんだよね。
 てっきり、電波を発する機器は使わないでください、っていわれるのかと思って身構えた僕は、
「いや、これはコンピューターではなくて。ただのメモ帳で」
 とか訳の分からないことを行っていたのだけれど。
「ちっちゃいですよね。CAの間で、あれはなんだろう、って話題になってたんですよ」って。

 まあ、ニンテンドーで遊ぶ歳には見えなかったんだろうから、ちょっと不思議だったのかな。
 でも、ほめられたね、ポメラ。
 よかったね。

 最初に使ったときにはね、この画面の小ささが気になって。小さい画角からは、スケールの小さい文章しか生まれないんじゃないか、って。
 でも、いくら窓が小さくても、のぞき込んだら見える世界は一緒だよね。すぐに気にならなくなったよ。

 万年筆とモレスキンと、コンピュータとシステム手帳が入った僕の鞄に、また一つ、荷物が増えたね。
 おっきい鞄に変えようかな。

 ちっちゃい窓から、一緒に大きな景色を見ていこうね、ポメラ。

 ただ、それだけのはなし。

オオウエエイジの、マラ52009年02月21日

 ひさしぶりに、想いだしたよ。
 息をするのを忘れることって、あるんだね。

 いつもの二日目から一日目の演奏会に振り替えて、大フィルさんの用意してくれた席は、前から5列目の左側。ステージいっぱいに広がったヴァイオリンの、一番後ろの人の真っ正面くらいかな。
 なんかなじみのある席。アングル。
 ああ、そうだ。じいさんの一般参賀を間近で見たくて、このあたりの席に座ったことがあったな、昔。

 開演直前に息を切らせながらホールに飛び込んだらね、今日の終演時間は9時45分を予定していますっていう張り紙。あれ、マーラーだけじゃなかったんだ。
 プログラムを見たら、マラ5の前にモーツァルトのピアノ協奏曲があるんだね。それで長丁場なんだ、こんなに。

 席はちょうどね、オオウエエイジを見るとその視線の途中にソリストが見えるっていう、ありがちな写真のアングルのような席。 協奏曲は、まあモーツァルトで。あんまり演奏がどうってわかんないんだよね。ただ、今回の曲なのか、席のせいなのかはわからないけれど、やたらピアノが裸になるところが多かったような気がして。その緊張感の保ち方がよかったんだよね。
 昼間の長い会議で消耗していた僕でも、ピアノ協奏曲なのに、ちっとも眠くならずに楽しめました。ピアノの音は僕の好きなぱらぱら系ではなく、まるまる系でまあ、そんなもんでしょう、っていうかんじなのだけれど。

 結構ヴォリュームのある第一部の休憩のあと、マーラー。
 オオウエエイジのマーラーって、2番と6番と、単発でやった1番(2回だっけ?)で4曲目になるのかな。僕にとっては特に大好きな作曲家っていうわけではないけれど、楽しいしわくわくするし、なによりオオウエエイジらしい、っていうイメージがあるよね。6番はちょっといまいちだったけれど。

 さて、演奏は。

 前から5列目だと、ヴァイオリンの外側の人しか見えないんだよね。低い位置だし、近すぎて。
 だから、最初のラッパが、ステージの上から吹いているのか、袖で吹いているのかよくわからなかったのだけれど(最後にたたせたラッパがものすごく左側にいたから、たぶんステージの上で吹いていたんだね)。すごいね。細かいところでちょっとはずれちゃったから、もしCDになるとしたら明日の演奏になっちゃうのかもしれないけれど。でも、あの素直な音と、何よりも特に中音域の響き、好きだなあ。

 今日の演奏のね、僕の中のキーワードは、この中音域。ホールの響きっていうよりも生音が直接聞こえてくる今日の席だから、もちろん僕は音に満たされているのだけれど、でもその音場がどれくらいまで伝わっているかはわからないんだ。だけど、ラッパの、ホルンの、そして弦楽器の中音域のロングトーンの響き。これはすごかったな。
 迫力が凄いとかそういうことではなくってね。そんなに力を入れずに、軽く演奏しているようなのだけれども、ちょうどホールと共震する周波数にぴたりとはまったみたいに、そこかしこから音が降り注いで、どこで演奏しているのか、5メートル先に見えているのにわからなくなる瞬間が、たくさんあったんだよ。

 オオウエエイジ的な聴かせどころ満載な曲でね、久々のトロンボンの咆哮をはじめとするブラスはもちろん、木管もハープも、みんなみんないいとこがあって。
 でも、今日の主役はなんたって弦楽器だよね。それもいつものチェロとコントラバスだけじゃなくって、高音域のヴァイオリンのイロっぽさ。いや、いろっぽさっていうのではないな、なんていうんだろう。

 この曲は、管弦を問わず、ロングトーンが多いよね。ぼくも管楽器を吹いていたことがあるから(かどうかは知らないけれど)、きれいなロングトーンを聴くと、一緒に息を吐き続けて、苦しくなるときがあるんだよ。例えばじいさんやヴァントじいさんのブルックナー8番や9番のアダージョの終わりとか、ね。
 たいがいそういうところって、ホルンとかワグナーチューバのロングトーンだから、まあ一緒に息を吐いていても死にはしないよね。かわりばんこに息してるのがわかるし。
 でも、今日の曲はね、ヴァイオリンのロングトーンが続くんだよ。これは反則。だって息継ぎしないんだもん、あいつら。
 四楽章だっけ、その前のお祭り騒ぎが静まって、弦の延ばしになるところ。一緒に息を吐いていた僕は、酸素が足りなくなって、ブラックアウト直前のいい気持ちになって気がついたよ。ああ、息するの忘れてたんだ、って。久しぶりだな、そういう感触。

 そのあと、五楽章で本当のお祭り騒ぎがやってくるのだけれど、僕はそこをかなりの部分、聴き逃してしまったよ。
 ちょうどその寸前、ヴァイオリンがパート譜の最後の2ページ目をめくったあたりで、コンマスの長原君が隣の人と楽器を交換してるんだよね。隣の人は後ろで弾いていたお姉さんと楽器を交換して。そのお姉さんが紙袋から新品の弦を取り出して、そこで交換し始めたんだ。
 前にもそういうことがあったけど、そのときはバケツリレーで後ろまで楽器を回して、袖で交換してたからね、プロの弦交換なんて始めてで、そっちに注目してたらお祭り聴き逃しちゃった。まあいいや、おもしろかったから。

 もう一つ。
 今回の席から、右の方のカメラブースのガラスをみると、明るいステージじゃなくって、暗い壁をバックに指揮するオオウエエイジが映っていてね。よくほんの表紙とかポスターでみるアングルと表情。たまに首を巡らせてそんなのをみるのも楽しかったな。
 でも、ずいぶんやせたね、オオウエエイジ。ダイエットならばいいけれど、体には気をつけてね。

 ただ、それだけのはなし。


大阪フィルハーモニー交響楽団
第425回定期演奏会
1日目 1階E列7番 A席
ザ・シンフォニーホール