都構想と、北方水滸伝2015年05月19日

 さて。

 何から書いたものだろうね。

 

 大阪都構想。負けちゃったね。

 静かにメタンガスを吐き出しながら、ゆっくりと朽ちていく地上の楽園、おおさか。その大阪に突如湧いて出た、つむじ風。

 知名度だけを頼りに、徒手空拳で府庁に乗り込んだやんちゃ坊主。人と喧嘩するたびに勉強して。熱狂を生み出して。仲間を増やして。

 いつの間にか、強大な勢力と明確なビジョンで政策を語るようになった頃には、ふわっとした民意が必ずしも味方にばかりなった訳ではなくって。

 

 それは、改革者なんかでは全くなく。

 あくまでも破壊者であり、よく言って革命家。

 そう。

 橋下徹は、大阪市をぶっ壊して、革命を起こそうとしたんだよね。

 

 僕はね。

 実は、橋下徹に票を入れたことが、ないんだよね。一回しか。

 最初はうさんくささと、大阪らしい有名人だからこその盛り上がりに辟易してね。そして、強圧的な橋下に票を入れた、と後世の自分の良心から責められるのが怖くて。

 棄権したんだよね。知事選を。

 市長選もそうだったな。一度目は。

 二度目の市長選、シングルイシューのみそぎ選挙。この時には、彼のやろうとしていることが大分見えてきて。そして、判官贔屓を刺激されるほどに弱って見えたから、不覚にも票を投じてしまったのだけれどもね。

 

 都構想。

 このままでは、居心地は良いけれど、ゆったりと将来はなくなっていく。

 だから、そのしくみを覆さなければいけない。そう志を持った一派と。

 これまで続いてきた大きなしくみ。それ自体の自己保存欲。変わる事への忌避、ためらい。より明確な既得権益を持った多数派が、正面から力比べをして。

 

 そして。

 負けたね。

 

 

 僕は、僕の大好きな革命の物語と、幸運なことにその渦中に居合わせた現在の革命の物語を、重ねていたんだよ。

 

 橋下徹は、「北方水滸伝」の中の、誰の役を演じたのだろう。

 

 北方水滸伝ってね、北方謙三の描く、水滸伝を発端とする、壮大な物語。今でも続いているのだけれどもね。

 政治に不満を持つ荒くれの若者が結集して、力を蓄え、遂に国を滅ぼそうと最終の大決戦を仕掛けて。そして派手に負ける「水滸伝」。

 梁山湖の敗戦のあと、力を蓄えて宋を斃し、革命は成就したけれど。そのあとのことを考えるリーダーが苦しむ「楊令伝」。

 伝説は又聞きの想い出話になって、志は個人に応じて形を変える。伝説と歴史の狭間の、死にきれなかった人生はどこに行くんだろう。まだ連載中の「岳飛伝」。

 全50巻で終わるかどうか分からないけどね。壮大な、革命の、破壊と後始末の、物語。

 

 この中でね。橋下都構想の大戦(おおいくさ)は、どこに位置するんだろう。

 橋下徹は、晁蓋なのか、宋江なのか。はたまた楊令なのか。

 圧倒的な力強さと、人を引き寄せる魅力を持ったリーダーでありながら、人を集めた所で逝ってしまった英傑「晁蓋」。

 人々の哀しみを見つめ、志を文字にし、梁山泊のシンボルであることを肯んじた「宋江」。

 敗戦のあと、リーダーに担がれ、破壊後の構築に一人で向き合った孤独なリーダー「楊令」。

 

 やっぱり、大盛り上がりの大戦。最後に負けたところで自決した宋江、っていうことになるんだろうね。

 破壊者橋下の、面目躍如、だね。

 

 そうするとね。

 一つ疑問があるのだけれど。

 

 橋下徹は、都構想が成就した時の、その後のビジョンって、持っていたんだろうか?

 飛龍伝でヒロスエが言っていた通り、革命家は、革命が成就した時には素早く身を引かなければならないんだよね。なぜなら、その後の構築と統治は、別の個性が得意とするものだから。

 チェ・ゲバラのようにね。(カストロではなく)

 

 だから、もしかしたら。

 都構想が勝っても負けても、橋下はやめる準備をしていたのではないかなあ、と思うんだよね。

 だから、壊すだけ壊して、あとを託す誰かを準備していたのなら。

 壊しきれなかったけれど、十分に弱体化したオオサカを、中途半端な構築だけれども、志と方向性を受け継いで、これから育てていく。

 橋下のあとに求められている個性、楊令のような存在を、ぼくらに示して欲しいなあ。

 

 ああ。北方水滸伝、また読みたくなっちゃった。

 

 北方謙三の水滸伝、読んだことのない方、ごめんなさいね。全く訳分からない文章だったね。

 でも。

 読んだことのないのは、人生の損失だよ。

 かっこいい漢の、生き様と死に様にどっぷりと浸りたい人。是非、北方水滸伝を手に取ってみてね。

 10ページ読んだら、もう、やめられなくなるよ。

 

 ただ、それだけのはなし。



コメント

_ Ryoan ― 2015年05月22日 16時34分

初めまして。
読んだことはなかったんですが、ブログを読んで
北方水滸伝気になりました。
でもブログによると負けちゃうんですね・・・。また辛くなりそうですね。先に読んでいたら期待しなかったんでしょうか。
色々考えさせられました。

_ まーく ― 2015年05月23日 09時52分

Ryoanさん
コメントありがとうございます。水滸伝は有名な原作付き(?)なので、結末言ってしまいました。でも、それでもどきどきはらはらしたいなら、是非手に取ってみて下さい。志は引き継がれる、そういう物語です。

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