大植英次のマラ9 w/ハノーファ北ドイツ放送フィルハーモニー ― 2009年06月21日
大昔のミネソタ管の来日公演が、911の影響で中止になったから。
僕にとってははじめてになるんだよね。大フィルさん以外のオケを振る、オオウエエイジ。あ、きょうは大フィルのオオウエエイジじゃないから、大植英次って呼ぶことにするね。
もちろん、大植英次は世界中で活躍している指揮者で、ハノーファやミネソタや、バルセロナでも常任として棒を振っている。
でも、歩いて気軽に行けるホールで年に何回も棒を振ってくれる大植英次は、僕にとってはやっぱり大フィルさんのオオウエエイジであって。
だから、よそのオケを率いて大阪に来る大植英次、ちょっと違和感があったんだよね。それもこっちの方がつき合いも長いし勲章ももらっちゃったから本妻なんだよ、っていう感じで来られると。
もちろん、それはこっちのやっかみ以外の何物でもないのだけれど。
だから、と言う訳でもないけれど、多分このオケを率いて大阪に来るのってはじめてじゃないよね。でも僕ははじめてだから、意識的に飛ばしたのか、出張かなんかで行けなくて、ッ悔しいから忘れているかどっちかだね。
というわけで、ハノーファ北ドイツ放送フィルハーモニーを振る大植英次。しかも、マーラー9番。どんな演奏を聴かせてくれるんだろうね。
しかも、っていうわりには、僕はマーラーの9番を良くは知らないのだけれども。
バーンスタインの全集や、それからもうひとつバーンスタインが生涯でただ一度だけ、ベルリンフィルを指揮したときのディスクとかは持っているのだけれど。特に後者は、えげつない演奏だっていうことをいやという程聞かされているのだけれど。でも、あんまりぴんと来ないんだよね。
でも、あんまり関係ないんだ、そういうこと。
重要なのは、カラヤン傘下のベルリンフィルを振るのにバーンスタインが用意したように、ここぞというときのキメに使われる曲で、しかもえげつなくなれる曲。それだけ知っていたらじゅうぶんだよね。期待を煽るには。
もちろんほぼ満員の客席。
ハープ2台をはじめとした大編成を、こじんまりと配置したステージ。
チャイムのかわりにぶら下がる鉄板。
ああ、マーラーの最後の曲、なんだ。
珍しく開演時刻を5分以上過ぎてから、整列して入場するオケ。でか。
袖の扉に頭つかえそうな大男たちが、小さく配置した椅子に座ると、密度高っ。
入場時からの惜しみない拍手。
そして、ヒトの藪を掻き分けて入ってくる大植英次。
入場時としては、最高潮の拍手。
大阪のヒトは、あったかいね。このときは僕は、実はあんまり好意的な拍手をしていなかったんだ。街の名家のご亭主が、外でこしらえた別嬪の愛人連れてきた、みたいな感じでね。
高い指揮台によじ登って、いつもより長い、ずっと長い礼をする大植英次。
そして、始まった曲。
ああ。
大フィルさんとは、違うんだ。
音が。
NDRの音ってどんなもんだろう、ってちょっと意地悪な興味があってね、僕はいつも大フィルさんの定期を聴く座席のすぐ近くに席を取ったんだ。
ほぼ同じ1から聴くNDR。
なんだこりゃ。
曲がどうとか、そんなことには全くたどり着けず、音に、打ちのめされたんだろうな、僕は。
悔しいけれど。
大フィルさんが非力だとか、感じたことはなかったんだよね。今まで、僕は。
1970年代のベートーヴェンとか聴くと、やっぱり日本のオケだな、って思うけれど、生で聴いた2000年以降、フェスでだってそんなこと思わなかった。
でも、違うんだよね。NDRは。
最初聴いたとき、弦の音が荒いな、って思ったんだよね。雑なんではなくって、音の粒子が粗い。ザッていう、胴の音ではなくて弦の音中心の響き。
でも、たとえばヴァイオリンだけ裸になるところとか、チェロのトップのソロとかの艶っぽさっていったら。
それに加えて、管楽器。
あいつら、4人いたらシンフォニーホールを音で埋めつくすことが出来るんだよ。
オーボエとクラリネット。
ファゴットとコントラファゴット。
金管楽器は一人で十分だね。
ホルン、ラッパにバストロ。
そして、チューバは一人で、シンフォニーホールを音で満たすんだ。
つまりね。
音を満たす、っていうのを宇宙戦艦ヤマトに例えるとすると、大フィルさんの波動砲は確かに圧倒的な迫力を持っているけれど、NDRは主砲じゃなくって脇のバルカン砲でも、十分致命傷を与えられるんだよね。
そのくらいの存在感。
シンフォニーホールなんて小さなホールではもったいないな。
曲に行くとね。
どこをとっても十分すぎるほどに鳴っている音は、裏返したらどこをとってもおんなじ様に聞こえてきて。
金太郎飴みたいだな、って思ってたんだよ。前半はね。
だから、あまりの心地良さについうとうとしてしまったりして。
でも、3楽章のお祭り騒ぎで我に返って。
そして、終楽章。
長い長い、コーダ。
どこをとっても同じ音の密度は、信じられないことに、コーダのピアニッシモまで全く変化しないで。
そして、その密度は、最後の音が天上に吸い込まれても、大植英次の緊張感に満ちた指揮棒から拡がって、ホールを支配し続けた。
大植英次の指揮棒がゆっくりと下がって。そして、ようやく大植英次の体から力が抜けた瞬間。
ホールは、拍手で満たされたよ。
ブラヴォーコールの入る隙のない、密度の高い拍手。
長い長いカーテンコール。
待ちきれなくなった楽団さんが解散しても、拍手は止まなくってね。
扉を選挙する大男たちの流れに逆らって、泳ぐように大植英次がステージに帰ってきたよ。
一般参賀。
総立ちの聴衆。
大植英次。
ハノーファで、いい関係を築いていたんだね。
大フィルさんとも、地方に行ってこんなにあったかく迎え入れてもらう関係を築いているんだよね。ね。ね。
この演奏もたいがいえげつないと思うのだけれど。
バーンスタインのえげつない演奏、ちゃんと聴いてみよっと。
ありがとう。大植英次。
今度はオオウエエイジとして、いい演奏聴かせてね。
ただ、それだけのはなし。
==============================
ハノーファ北ドイツ放送フィルハーモニー
大植英次
ザ・シンフォニーホール 1階J列32番 A席
僕にとってははじめてになるんだよね。大フィルさん以外のオケを振る、オオウエエイジ。あ、きょうは大フィルのオオウエエイジじゃないから、大植英次って呼ぶことにするね。
もちろん、大植英次は世界中で活躍している指揮者で、ハノーファやミネソタや、バルセロナでも常任として棒を振っている。
でも、歩いて気軽に行けるホールで年に何回も棒を振ってくれる大植英次は、僕にとってはやっぱり大フィルさんのオオウエエイジであって。
だから、よそのオケを率いて大阪に来る大植英次、ちょっと違和感があったんだよね。それもこっちの方がつき合いも長いし勲章ももらっちゃったから本妻なんだよ、っていう感じで来られると。
もちろん、それはこっちのやっかみ以外の何物でもないのだけれど。
だから、と言う訳でもないけれど、多分このオケを率いて大阪に来るのってはじめてじゃないよね。でも僕ははじめてだから、意識的に飛ばしたのか、出張かなんかで行けなくて、ッ悔しいから忘れているかどっちかだね。
というわけで、ハノーファ北ドイツ放送フィルハーモニーを振る大植英次。しかも、マーラー9番。どんな演奏を聴かせてくれるんだろうね。
しかも、っていうわりには、僕はマーラーの9番を良くは知らないのだけれども。
バーンスタインの全集や、それからもうひとつバーンスタインが生涯でただ一度だけ、ベルリンフィルを指揮したときのディスクとかは持っているのだけれど。特に後者は、えげつない演奏だっていうことをいやという程聞かされているのだけれど。でも、あんまりぴんと来ないんだよね。
でも、あんまり関係ないんだ、そういうこと。
重要なのは、カラヤン傘下のベルリンフィルを振るのにバーンスタインが用意したように、ここぞというときのキメに使われる曲で、しかもえげつなくなれる曲。それだけ知っていたらじゅうぶんだよね。期待を煽るには。
もちろんほぼ満員の客席。
ハープ2台をはじめとした大編成を、こじんまりと配置したステージ。
チャイムのかわりにぶら下がる鉄板。
ああ、マーラーの最後の曲、なんだ。
珍しく開演時刻を5分以上過ぎてから、整列して入場するオケ。でか。
袖の扉に頭つかえそうな大男たちが、小さく配置した椅子に座ると、密度高っ。
入場時からの惜しみない拍手。
そして、ヒトの藪を掻き分けて入ってくる大植英次。
入場時としては、最高潮の拍手。
大阪のヒトは、あったかいね。このときは僕は、実はあんまり好意的な拍手をしていなかったんだ。街の名家のご亭主が、外でこしらえた別嬪の愛人連れてきた、みたいな感じでね。
高い指揮台によじ登って、いつもより長い、ずっと長い礼をする大植英次。
そして、始まった曲。
ああ。
大フィルさんとは、違うんだ。
音が。
NDRの音ってどんなもんだろう、ってちょっと意地悪な興味があってね、僕はいつも大フィルさんの定期を聴く座席のすぐ近くに席を取ったんだ。
ほぼ同じ1から聴くNDR。
なんだこりゃ。
曲がどうとか、そんなことには全くたどり着けず、音に、打ちのめされたんだろうな、僕は。
悔しいけれど。
大フィルさんが非力だとか、感じたことはなかったんだよね。今まで、僕は。
1970年代のベートーヴェンとか聴くと、やっぱり日本のオケだな、って思うけれど、生で聴いた2000年以降、フェスでだってそんなこと思わなかった。
でも、違うんだよね。NDRは。
最初聴いたとき、弦の音が荒いな、って思ったんだよね。雑なんではなくって、音の粒子が粗い。ザッていう、胴の音ではなくて弦の音中心の響き。
でも、たとえばヴァイオリンだけ裸になるところとか、チェロのトップのソロとかの艶っぽさっていったら。
それに加えて、管楽器。
あいつら、4人いたらシンフォニーホールを音で埋めつくすことが出来るんだよ。
オーボエとクラリネット。
ファゴットとコントラファゴット。
金管楽器は一人で十分だね。
ホルン、ラッパにバストロ。
そして、チューバは一人で、シンフォニーホールを音で満たすんだ。
つまりね。
音を満たす、っていうのを宇宙戦艦ヤマトに例えるとすると、大フィルさんの波動砲は確かに圧倒的な迫力を持っているけれど、NDRは主砲じゃなくって脇のバルカン砲でも、十分致命傷を与えられるんだよね。
そのくらいの存在感。
シンフォニーホールなんて小さなホールではもったいないな。
曲に行くとね。
どこをとっても十分すぎるほどに鳴っている音は、裏返したらどこをとってもおんなじ様に聞こえてきて。
金太郎飴みたいだな、って思ってたんだよ。前半はね。
だから、あまりの心地良さについうとうとしてしまったりして。
でも、3楽章のお祭り騒ぎで我に返って。
そして、終楽章。
長い長い、コーダ。
どこをとっても同じ音の密度は、信じられないことに、コーダのピアニッシモまで全く変化しないで。
そして、その密度は、最後の音が天上に吸い込まれても、大植英次の緊張感に満ちた指揮棒から拡がって、ホールを支配し続けた。
大植英次の指揮棒がゆっくりと下がって。そして、ようやく大植英次の体から力が抜けた瞬間。
ホールは、拍手で満たされたよ。
ブラヴォーコールの入る隙のない、密度の高い拍手。
長い長いカーテンコール。
待ちきれなくなった楽団さんが解散しても、拍手は止まなくってね。
扉を選挙する大男たちの流れに逆らって、泳ぐように大植英次がステージに帰ってきたよ。
一般参賀。
総立ちの聴衆。
大植英次。
ハノーファで、いい関係を築いていたんだね。
大フィルさんとも、地方に行ってこんなにあったかく迎え入れてもらう関係を築いているんだよね。ね。ね。
この演奏もたいがいえげつないと思うのだけれど。
バーンスタインのえげつない演奏、ちゃんと聴いてみよっと。
ありがとう。大植英次。
今度はオオウエエイジとして、いい演奏聴かせてね。
ただ、それだけのはなし。
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ハノーファ北ドイツ放送フィルハーモニー
大植英次
ザ・シンフォニーホール 1階J列32番 A席
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