リゾートのキャラメル 〜風味絶佳 by Amy Yamada2008年06月24日

 三日間と半日にわたる緊張に満ちた仕事を終えて。
 ジャケットとネクタイをかなぐり捨てて、カリフォルニアの日差しの下を一時間も彷徨って。
 早めに帰ったホテルの部屋で、ワイシャツとスラックスを脱ぎ捨てつつ乾いた汗をシャワーで流して。
 
 その後であらためて。
 ホテルの部屋から見下ろせるプールサイドで、ビキニではしゃぐおネエちゃん達の声を聞くともなしに聞きながら開く本はやっぱり、Amyがいいよね。
 やけつく日差しも、遮ってくれるパラソルの下に入るともう暑さも感じなくってね。
 汗も吸い取る乾いた空気とバドライト。時折腫れぼったくなる目蓋には、その二つが、ありがたいんだよね。

「この人は、忘れ、忘れ去られる不安な気持ちを、忘れな草に変える人」
「憐れみに肉体が加わると恋になる」
「大人が初恋をやり直すって、いやらしくて最高だろ?」

 なんでこんなに、届くんだろう。Amyの言葉って。
 なんで、こんなにも、おっさんをいやらしい気持ちにさせるんだろう。
 
 そういえば、Amyの小説で、日本のおっさんが主人公になる事って、あんまりなかったよね。素敵なダディか、酒浸りのろくでなしか。ある程度の年をいった男の人って、そのどちらかが多かった気がする。しかも外国人で。
 だから、なのかな。
 日本の、働くおじさんがたくさん出てくるこの短編集、新鮮で、懐かしくて、より身につまされるんだよね。
 遠い昔の出来事として距離を置ける、放課後の音符(キイノート)なんかよりもずっと、ね。
 
 日本語に餓えた眼と心に、染みこんで乾いてを繰り返して。ぎゅっと濃縮された言葉の結晶が、確かに残ったよ。
 
 部屋に戻って、強く効かせた冷房と、氷で冷やしたコロナビール、そしてJBLから低く流れるチック・コリア。そういう中でもう一度読むAmy。これもまた、いいんだよね。
 
 暑くても涼しくても、リゾートにはAmyがお勧めだね。
 
 あ、決してリゾートに出かけたわけじゃなくってね。ただのビジネス旅行なのだけれど。
 でも、おかげで、出張あけの月曜日、みんなに日に焼けたね、っていわれたけれど。
 まあ、いいよね。
 
 ただ、それだけのはなし。