大西順子 最後のHall Concert2012年11月18日

 大西順子が、引退しちゃったね。

 


 数年前に復帰のお祝いをしてから、アルバム2枚を残して。

 HPに、演奏家としての引退理由が綴られているけれど。お客さんの前で演奏するジャズ・ミュージシャンとしては生真面目すぎたんだね。常に最高のものを示したくて。その最高が、今の私に、とか、現時点でとか、そういうエクスキューズを一切寄せ付けない、括弧付きの「The 最高」が常に出来なくちゃお客さんに失礼。とか考えちゃったのかなあ。

 そういう人に向かって、ジャズはエンターティンメントだからいいじゃん。って軽々しくは言えないからね。

 黙って見送るしかないのだけれど。

 

 数年前に復活をお祝いしたときもそうだったのだけれど、今回も、僕はビルボードでやったライブに行きそびれたんだよね。

 チケット発売前に引退の知らせは知っていたから、それでチケットの倍率が上がらないように静かにしていて。発売日に大急ぎでHPにアクセスして。良い整理番号を取ったのに。

 急遽決まった出張でね、いけなくなった。

 

 いつもならそれであきらめちゃうんだけどね。今回は、最後の大西順子。やっぱり一目は見なくちゃでしょ。

 

 という訳で、行ってきたよ。

 ヤマハ ジャズ フェスティバル in 浜松。

 大阪から片道270kmのドライブをかねて、ね。

 

 アクトシティ浜松って、浜松駅前の立派なホールなんだけれど。地下の駐車場に車を駐めて、地上に出てみると、そこら中に響くジャズやゴスペルの音。

 お昼にウナギを食べに行く間でも、ホールのロータリーにゴスペル、駅コンコースにコンボ、そして駅前広場にはビッグバンド。

 そんな感じの演奏が、いたるところで繰り広げられて。楽しそうだなあ。

 

 ホールはね、座敷席が4階くらいまである大きなホールなのだけれど。結構なオッサンで埋めつくされていて。

 ヤマハのお膝元だから、そのスポンサー枠が多いのか、音楽好きのオッサンが多いのかは知らないけれど、結構年中行事のような会話があちこちから聞こえてきたよ。

 

 ジャズフェスだから、複数の演奏者がいるのだけれど。

 大西順子は、トップバッターで。

 

 プログラムとか作ったときには、引退が発表されてなかったからか、そのことには全く触れないまま地元アナウンサーのMCが終わって。

 出てきた大西順子トリオ。

 Quincy Davis Dms.

 井上 陽介 Bass.

 

 ジャズフェスの、頭なんだけど、長尺の、凝った編成のオリジナルをどんどん演奏する大西順子。

 拍手や口笛でわいわい盛り上がりたいお客さんのことは全く念頭に置かず、大西順子の今を、プロの演奏家としての最後の「現在」を音にすることに専念する大西順子。

 螺旋階段のように同じモチーフを使ってヒートアップしていく大西順子。負けじと丁々発止の井上陽介。決め所を損なわないQuincy。

 

 僕は、大西順子が究めようとした音楽を、小難しそうだな、って敬遠して。結局ピアニストとしての大西順子が楽しく聴けるモントレーのライブ盤ばっかり聴いていた、良いリスナーではなかったのだけれども。

 何回もあったライブハウスのチャンス、逃し続けてしまったのだけれども。

 

 それでも、同年代の演奏家として。

 それは、実際の年齢もそうだし、僕がジャズに興味を持ちはじめた頃にデビューした、って云うのもそうだし。デビュー直後のマウントフジから何回も聴いている、って云うのもそうだし。

 同年代の演奏家として、いい歳のとり方の指標にしていた一人だったから。

 やっぱり寂しいよ。

 

 満場の拍手に一礼したあとは、振り返らずに退場する大西順子。

 最後まで、大西順子だったね。

 ありがとう。

 

 

 次のセットは、小林桂。

 あんまり語る言葉はないのだけれど。

 喫茶店で、低音量で流れるための音楽。

 生でなくてもいい音楽。

 なくてもいい音楽。

 

 演奏者は、楽しいのかな。

 食べるためかな。

 

 

 そして、トリは。

 BATTLE JAZZ BIG BAND。

 僕は、偶然このバンドのアルバムを愛聴していたのだけれど。まさかパーマネントのバンドだとは思っていなかったよ。

 

 ハイソとかタチクニとかの、ヤマノの常連楽バンのスタープレイヤーを集めて、ハイスピードなうねうねハイテクニック曲をひたすら演奏する、攻撃的なバンド。

 楽しいなあ。

 ソロはヒトによって??っていうのもあるけれど、トゥッティの正確さと迫力、それから開き直った割り切りは、良いなあ。

 割り切りっていうのはね、日本のオッサンビッグバンドは、ベイシーから来てるんだけれども、何か小難しいミンガスとかそういうところにはまって、純粋に爽快なビックバンドって、エリック宮代のアルバムとここくらいしか見あたらなさそうなんだよね。

 

 そういう楽しいバンドに、何とも楽しいゲスト。

 Christian Howes Vln.

 このバイオリンのおっちゃんが、楽しそうでね。

 寺井尚子もたいがいかと思ってたんだけれど、寺井尚子のようなソロもそうだけれど。

 一人でベースラインからギターのようなカッティングから、シーケンサーでループして。

 その上で気持ちよさそうにソロを取る、一人チキン。

 いいオッサンなのに、やりたい放題の楽しさを満喫して、そしてぼくらにも満喫させて帰っていったよ。

 何だったんだろう。

 

 みんなの疲労回復のせいか、MCがやたら長くって、もうちょっと聴きたい感が残ったけれど、楽しかったなあ。

 

 ありがとうね、大西順子。

 最後に、こんな楽しいフェスに招待してくれて。

 

 ああ、楽しかった。

 

 ただ、それだけのはなし。


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