オオウエエイジの第九 '08 二日目 ― 2008年12月31日
さて、二日目。
今日は昨日よりも一列だけ後ろにさがって、ちょっとだけ端に寄った席だったのだけれども。
ずいぶん印象が違うんだよね。
それは、席のせいなのか、それとも演奏の微調整のせいなのかはよく分からないけれど。
そして、それが演奏の満足度にどう影響するかもよく分からないのだけれど。
今日の第九はね、昨日感じた、とんがった部分を全部丸めて、完璧な盆栽に仕立て上げた第九。オオウエエイジの、第九。
ラッパとかティンパニとか、ちょっとでもバランスを壊す恐れのある危険物は、細心の注意を払ってバランス取って。どこを聴いても意図した音が伝わる、そういう音楽。
そういう音楽として、ものすごく高得点を与えられるであろう、音楽。
でも、それって音楽なんだろうか。
第一楽章の頭、ちょっとだけだけれども、何が何だか分からなかったんだよね。音が鳴っているのは分かっているのだけれど、音楽として聞こえてこない。
青空が描いてあるとばっかり思って見ていた絵が、実は深海の絵で。そのことに気がつくまでに感じる訳のわからない違和感。そういう類のものだと思うのだけれどもね。何が進行しているのか分からなかった。
もちろん、絵を見間違えるのとおんなじで、僕の認識のミスのせいなのだけれども。
席が少し遠ざかったせいもあるかも知れないけれど、昨日はホールと、と言うより僕を満たしていた音の、広がりの輪郭が見えちゃったんだよね。ああ、ホール全体を満たしているものではないんだな、って。
それは地球に住んでいるのと、宇宙飛行士になって地球を外から見ることの違いみたいな感じで、優劣とか、そういうことではないのだけれど。でも、コンサートにきているのなら、内側に入って聴く方が僕は好きだな。
なんか悪口を言っているように聞こえるかも知れないけれど、もちろん楽しんでいるから二日も行くんだし、この忙しいときに無精な僕が二日も書いているんだよ。オオウエエイジだから、要求するものがずっと上になっちゃって、わがまま言っているだけなんです。もし気を悪くされた方がいたら、許して下さいね。
さて。
怒濤のブラヴォーコールで終楽章が終わって。
いつも通りの律儀なカーテンコール。
3回目か4回目かな。カーテンコールも中盤にやっと差しかかったくらいで、一人で出てきたオオウエエイジ。
手でみんなを制して、マイクを手に話し始めた。
皆さんにお詫びがあります。この年末、ベートーヴェンの荘厳な響きで終えるのが一番いいのでしょうけれど、もう一曲だけ演奏させて下さい。
50年の歴史を誇るフェスティバルホール。大フィルの音楽監督として、またこのホールで演奏した世界中の素晴らしい音楽家の代理として、ありがとうございます。
1958年に出来たこのホール、一番最初の演奏会は、非公式だったけれど、大フィルの前身、朝比奈大先生が指揮した関西フィルで、ベートーヴェンの(日本語でなんていうか分からないや、とメモを取り出して)献堂式序曲、この第九、そしてエルガーの威風堂々を演奏したものだそうです。
今日でいったんお別れのこのホール、最後は、最初の日にも演奏した、威風堂々を演奏したいと思います。
お話の最中に合唱団が退場して、ステージにはハープ2台やらパーカッションやら、チューバやらなにやら、みんなぞろぞろとあがってきて。
そして始まった威風堂々。
拍手を要求するオオウエエイジ。
最後にゆっくりになるところで、一列目の観客の手を取って立たせるオオウエエイジ。それに釣られて総立ちになる観衆。
曲の最後に、 festival hall ありがとう50年の垂れ看板が出てきて。
ああ、本当に終わりなんだな、って。
僕なんかこの10年、数十回しかきていないのに、50年の歴史が降りかかってくるような気がして、総立ちで拍手をするお客さんを見ながら、ちょっとうるうるしてしまったよ。
そして、オオウエエイジが去り、演奏者も撤収の準備をし始めたステージ。
お客さんも当然帰り支度を始めた頃。いつの間にか客席の通路に入り込んでいた合唱団員の始めた、蛍の光。
ハモるでも何でもない、ただのユニゾンの蛍の光、多分客席のみんなも唄っていたんだよね、僕も唄ったけれど。本当にあたたかく、ホールを包んだよ。
粋なことをするね。
ホールから出て、ロビーへの階段を下りる正面に、ありがとう、また会いましょうの紅い横断幕。演奏中に取りつけたんだね。
粋なことをするね、これまた。
2013年。どんなホールが出来上がるのかな。シンフォニーが霞んでしまうくらいのホールが出来たらいいね。
それまで、年末の第九は場所の取り合いだね。大フィルさん、がんばれ。
良いお年を。
ただ、それだけのはなし
DATA
==========================
第9シンフォニーの夕べ
2008年12月30日
大阪フィル
大植英次:指揮
フェスティバルホール 1階GG列R23番 A席
今日は昨日よりも一列だけ後ろにさがって、ちょっとだけ端に寄った席だったのだけれども。
ずいぶん印象が違うんだよね。
それは、席のせいなのか、それとも演奏の微調整のせいなのかはよく分からないけれど。
そして、それが演奏の満足度にどう影響するかもよく分からないのだけれど。
今日の第九はね、昨日感じた、とんがった部分を全部丸めて、完璧な盆栽に仕立て上げた第九。オオウエエイジの、第九。
ラッパとかティンパニとか、ちょっとでもバランスを壊す恐れのある危険物は、細心の注意を払ってバランス取って。どこを聴いても意図した音が伝わる、そういう音楽。
そういう音楽として、ものすごく高得点を与えられるであろう、音楽。
でも、それって音楽なんだろうか。
第一楽章の頭、ちょっとだけだけれども、何が何だか分からなかったんだよね。音が鳴っているのは分かっているのだけれど、音楽として聞こえてこない。
青空が描いてあるとばっかり思って見ていた絵が、実は深海の絵で。そのことに気がつくまでに感じる訳のわからない違和感。そういう類のものだと思うのだけれどもね。何が進行しているのか分からなかった。
もちろん、絵を見間違えるのとおんなじで、僕の認識のミスのせいなのだけれども。
席が少し遠ざかったせいもあるかも知れないけれど、昨日はホールと、と言うより僕を満たしていた音の、広がりの輪郭が見えちゃったんだよね。ああ、ホール全体を満たしているものではないんだな、って。
それは地球に住んでいるのと、宇宙飛行士になって地球を外から見ることの違いみたいな感じで、優劣とか、そういうことではないのだけれど。でも、コンサートにきているのなら、内側に入って聴く方が僕は好きだな。
なんか悪口を言っているように聞こえるかも知れないけれど、もちろん楽しんでいるから二日も行くんだし、この忙しいときに無精な僕が二日も書いているんだよ。オオウエエイジだから、要求するものがずっと上になっちゃって、わがまま言っているだけなんです。もし気を悪くされた方がいたら、許して下さいね。
さて。
怒濤のブラヴォーコールで終楽章が終わって。
いつも通りの律儀なカーテンコール。
3回目か4回目かな。カーテンコールも中盤にやっと差しかかったくらいで、一人で出てきたオオウエエイジ。
手でみんなを制して、マイクを手に話し始めた。
皆さんにお詫びがあります。この年末、ベートーヴェンの荘厳な響きで終えるのが一番いいのでしょうけれど、もう一曲だけ演奏させて下さい。
50年の歴史を誇るフェスティバルホール。大フィルの音楽監督として、またこのホールで演奏した世界中の素晴らしい音楽家の代理として、ありがとうございます。
1958年に出来たこのホール、一番最初の演奏会は、非公式だったけれど、大フィルの前身、朝比奈大先生が指揮した関西フィルで、ベートーヴェンの(日本語でなんていうか分からないや、とメモを取り出して)献堂式序曲、この第九、そしてエルガーの威風堂々を演奏したものだそうです。
今日でいったんお別れのこのホール、最後は、最初の日にも演奏した、威風堂々を演奏したいと思います。
お話の最中に合唱団が退場して、ステージにはハープ2台やらパーカッションやら、チューバやらなにやら、みんなぞろぞろとあがってきて。
そして始まった威風堂々。
拍手を要求するオオウエエイジ。
最後にゆっくりになるところで、一列目の観客の手を取って立たせるオオウエエイジ。それに釣られて総立ちになる観衆。
曲の最後に、 festival hall ありがとう50年の垂れ看板が出てきて。
ああ、本当に終わりなんだな、って。
僕なんかこの10年、数十回しかきていないのに、50年の歴史が降りかかってくるような気がして、総立ちで拍手をするお客さんを見ながら、ちょっとうるうるしてしまったよ。
そして、オオウエエイジが去り、演奏者も撤収の準備をし始めたステージ。
お客さんも当然帰り支度を始めた頃。いつの間にか客席の通路に入り込んでいた合唱団員の始めた、蛍の光。
ハモるでも何でもない、ただのユニゾンの蛍の光、多分客席のみんなも唄っていたんだよね、僕も唄ったけれど。本当にあたたかく、ホールを包んだよ。
粋なことをするね。
ホールから出て、ロビーへの階段を下りる正面に、ありがとう、また会いましょうの紅い横断幕。演奏中に取りつけたんだね。
粋なことをするね、これまた。
2013年。どんなホールが出来上がるのかな。シンフォニーが霞んでしまうくらいのホールが出来たらいいね。
それまで、年末の第九は場所の取り合いだね。大フィルさん、がんばれ。
良いお年を。
ただ、それだけのはなし
DATA
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第9シンフォニーの夕べ
2008年12月30日
大阪フィル
大植英次:指揮
フェスティバルホール 1階GG列R23番 A席