大フィルさんの、吹奏楽2008年11月02日

 もう終息してるのかも知れないけれど。巷では吹奏楽ブームなんだってね。
 僕らが中高のときにも、ちょうどそういうブームがあったな。ブラスジャーナルとか何とかピープルとか、吹奏楽関連の月刊誌もいくつかあったりして。休みの日には原宿にヤマハのグレイのケース担いだブラバンな人たちが集まって合奏したりとか。僕も一回いったことあったな、そういえば。
 
 その後、1986年の埼玉栄のダフクロから、僕はずうっと吹奏楽を離れていたのだけれど。
 ちょっと前にBlogに書いたように、テレビでやっていたギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の演奏会を観たら懐かしくなっちゃって。ネットオークションで栄のダフクロのCD買ってみたりして。
 そういう意味では、僕もプチ吹奏楽ブームなんだよね。そういえば、この前横浜で、お昼時に県警のブラス隊がビルの吹き抜けでやっていた演奏で、四半世紀以上ぶりにスパニッシュ・フィーバーなんてやってたな。この曲やりたいっていってた、アルト吹きの女の子、パッチギの沢尻エリカに似てたな。どうしているんだろう、今ごろ。
  
 そんな中で、大フィルさんのスペシャルライブ。これは、吹奏楽で良く取り上げられる管弦楽や、吹奏楽のオリジナル曲をオケにアレンジしたりして演奏するコンサートなんだけど、行ってきたよ。
 最初は迷ったんだけどね。中高の、吹奏楽部員のためのコンサートに、おっさんが席を取ってしまっていいのだろうか、って。浮くんじゃないだろうか、って。
 まあ、でも楽しそうだから、結局はいつもの通り、チケットを握りしめてしまったのだけれど。
 
 この日は、東京から直行だったんだよね。早起きで眠い頭を、帰りの新幹線ですっきりさせて準備万端、コンサートに臨むはずだったのだけれども。帰りに開いた本がとっても面白くって、結局読み通してしまって一睡も出来ず。大丈夫かなあ。
 そんな訳で、福島駅から歩いたのだけれども。
 あれ、いつもと違う。
 この時間、駅から離れる方向に向かうのは、大体シンフォニーホール行きで、いつもはオッサンばっかりなのだけれど。この日は、制服姿の高校生、去年まで制服着てたような人たちでいっぱい。
 やっぱり、学生さん半額みたいにして組織営業したのかな。お酒飲めるの、僕だけだったらどうしよう。ちょっと不安だったんだよね。
 でも、会場に行く途中で入った食べ物屋さんで、吹奏楽部のOG一年生くらいの女の子二人組が、
「この前朝から晩まで練習でな、久しぶりやし唇めっちゃきついねん。そしたら先輩がな、2曲くらいは1st吹かなあかんっていってな、エイトの曲で譜面もらってんけど、エイトの1stって、ひたすらきついやんか、伸ばしが。・・・」
 とかいう会話をしていて。ああ、エイトってまだあるんや、って、なんか嬉しかったな。(エイトってね、ミュージックエイトって言う、吹奏楽用の譜面のレーベルなんだけれど。流行歌とかをみんなで楽しもう、っていう感じでお安く、早く出してくれる、ありがたい譜面なんだよね。お世話になりました)
 
 会場に着いたらね、思ったより制服比率は多くなくって、特に二階席にはほとんどいなくって一安心。別にいやな訳じゃないけれど、ちょっと落ち着かないんだよね。
 でも、やっぱり定期とかに比べると、平均年齢半分くらいに、若い人多かったなあ。
 
 演奏会はね、吹奏楽の世界では有名な、大阪府立淀川工業高校の丸谷先生が司会をされて。とはいえ僕は全く知らなかったのだけれども。市立川口の信国センセイとか、埼玉栄の大滝先生みたいなもんなんだろうね、こちらでは。
 その丸谷先生、満員御礼で感極まっていたから、企画から選曲まで、いろいろ関わっていたんだろうね。
 
 あらら、もうかなりの文字数を使っちゃったから、演奏はちょっとはしょるけれど。
 最初は、吹奏楽で良く演奏されるオーケストラ曲。吹奏楽は、勿論弦楽器が無い上に、コンクールだと50人って言う少人数で演奏しなくてはいけないから、弦のパートが味を持つような曲はあんまり取り上げにくいんだよね。どちらかというと管楽器が活躍する曲が多い。
 ショスタコの祝典序曲とか、僕は演奏したことがないのだけれど、そういえばよく聴いたな、あの頃。
 それからユーフォニアムの協奏曲。
 僕は、中学時代はユーフォを吹いていたのだけれどもね、実は。ユーフォって、吹奏楽でしかお目にかからない楽器なんだよね。丸谷先生も言っていたけれど、吹奏楽ではおいしい楽器なんだよね。きれいなオブリガードがみんな廻ってくる。でも、吹奏楽でしかお目にかからない楽器だから、もし僕が高校でもこの楽器を吹いていたら、その後ジャズとかクラッシックとか、そういう音楽に引っぱられたかどうか、ちょっと疑問だよね。そういう意味では、高校でトロンボンに転向させてくれたことに、感謝だよね。
 チューバと一緒で、まず上に音を出す、いわゆる間接音響の楽器だから、協奏曲はちょっと辛かったなあ。
 
 ここから、この演奏会のメインになっていくのだけれど。
 アルメニアンダンス・パートI。
 この曲も、僕は演奏したことがないのだけれど。でも、演奏会やコンクールでは必ず取り上げられていた人気曲。吹奏楽の作曲家としては神様とされているリードの中でも、1,2を争う人気曲だよね。
 この曲は、今回の演奏会のために中川さんていう人に編曲してもらったらしい。
 編曲なのか演奏なのか知らないけれど、原曲ではサックスのソロが、チェロに割り当てられていて。そのチェロの艶っぽさといったらもう。
 ああ、楽しかった。
 せっかく作ったこの譜面、オーケストラの客寄せでも、演奏する吹奏楽から、鑑賞するオーケストラへの移行でもいいから、いろんなところで演奏されるといいね。
 
 そして。
 やっぱりメインはこれ、ローマの祭り。
 オルガンやバンジョーやバンダ隊。レスピーギのローマ三部作の中でも一番派手なこの曲。ムーティ/フィラデルフィアの大名盤があるけれど、やっぱり生で聴くに限るよね。

 ああ、楽しかったなあ。
 これをきっかけに、吹奏楽のお客さんとオーケストラのお客さん、入り交じって増えたらいいね、両方とも。
 すてきな企画をありがとね、下野さん、丸谷先生。

 ただ、それだけのはなし。

====================================
2008年10月23日
大阪フィルハーモニー交響楽団 スペシャルライブ
     指揮:下野竜也
ユーフォニアム:外囿祥一郎
     MC:丸谷明夫

ショスタコーヴィッチ:祝典序曲
アーノルド:ピータールー序曲
M.エレピ−:ユーフォニアム協奏曲
A.リード/中原達彦編曲:アルメニアンダンス・パートI
J.S.バッハ:コラール前奏曲 おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け
レスピーギ:交響詩 ローマの祭り

バロックの極致、おじいさんのバッハ2008年11月30日

 ヘムルート・ヴィンシャーマンの振るバッハだから、あんまり深く考えずにチケットを取ったのだけれども。
 深く考えずに、っていうのは、どんな曲を演るのか良く知らずに、っていうことね。まあ、バッハの大きな曲なんてほとんど知らないから、深く考える事なんてどっちにしてもできないのだけれど。
 ヴィンシャーマンは、数年前にボッセの代役で、大フィルさんの定期でバッハを振ってね。管弦楽組曲だったっけ。それがもう、呆然とするしかないくらいの良い演奏会で。その後、今度は代役ではなく定期でもう一度バッハを振って。そして今回はいずみホールの特別演奏会。
 最初のバッハは本当に衝撃的だったんだよね。三十人足らずくらいの人数から、聴いたこともない音が出てきて。その頃二階席に座っていた僕が、終演後ぼおっとしながら階段をのぼっていたら、真っ赤な目をしてまだ立ち上がれないおんなの人がいたんだ。その女性の赤い目、まだ覚えているなあ。
 
 ともかく、そのヴィンシャーマンのバッハだからね、曲目なんて気にもしなかったんだけど、ホールでプログラムを読んだらね、にわかに不安になってきたよ。
 ポリフォニーの探求。
 数学的、幾何学的構築美。
 一部を除けば、楽器の指定さえ行われていない。
 などなど。えっ? これって実験音楽? おじいさんのタクトから出てくる心地よい響きに浸ろうと思ってきたのに、なんかムツカシそうだなあ。
 ちょっとだけ、そんなことを思ったよ。
 
 第一部は、音楽の捧げ物。
 30人足らずの、弦楽と木管楽器のこぢんまりした編成の真ん中にデンと置かれたグランドチェンバロ(そんな風に言うかどうか知らないけれど)。そして、いくつかの椅子と譜面台。
 曲は、チェンバロのソロから始まってね。
 曲の成果楽器の成果知らないけれど、気持ちよく解決していく和音とはちょっと違った、どこまで行っても濁った響きが残る曲をソロで弾ききって、自分で蓋をたたんで奏者は一時退場。どうでもいいけれど、この黒いロングヘアのチェンバロ弾きのヒト、僕の友人によく似ていてね、思わず頬笑んじゃったよ。
 その後、ステージ前に出てきたヴァイオリンの長原君とビオラとチェロ。そしてフルート。
 その前からだけど、狭いいずみホールは、一個一個の楽器の音が良く伝わるんだよね。ヴァイオリンの弾きはじめのギッていう音が、シンフォニーホールでは聴けないくらい伝わってくる。
 そんな音場で奏でられるカルテット。ビオラとチェロはこのために、特別客演を連れてきたみたいだけれど。そういえばチェロのヒゲのヒト、あの人のいない演奏会って、覚えているかぎりはじめてじゃなかろうか。トラを連れてくるのもいいけれど、こういうソロは、自前の楽団員の名人芸を見せて欲しかったなあ。
 全体として、特に実験音楽っぽくもなく、楽しかったのは楽しかったのだけれども、なんかどっかに濁りの残る曲だったな。バッハの極北が、どんなところにあるんだろう、たとえばブルックナーの5番を、構成美の極北とかいってみたりするけれど、それよりずっと前にもっとすごいのが出来ているのかな、って思ったのだけれども、そういうものではないんだよね。質的に、ではなくて、方向として。
 プログラムをよく読むと、即興演奏をふくらませて楽譜にしたのがこの曲らしいね。
 つまりは、自分が、そして聴いている人が気持ちいいアドリブのルールを考え出したバッハが、その集大成として自身の最高のアドリブを楽譜化した、っていうことなのかな。
 僕の分かる言葉で言えば、バップを創り出したチャーリー・パーカーはもちろん偉大だけれども、その後のモードやフリーやフュージョンを経てスウィングに戻ったウィントン・マルサリスの音楽とは方向として比べられないよね、っていうこと。
 どっちがいい悪いではなくってね。
 
 ちょっとだけ濁りのある一部と違ってね、フーガの技法はすごかった。
 多分ありとあらゆるフーガの四十八手が詰め込まれていて、それはもう大変な音楽なのだろうけれどもね。僕が知っているフーガって、小フーガト短調くらいなんだよね。しかもずっと、小フーガと短調、っていう2曲のことだと思ってた。
 おっかけっこと変奏っていうのでそんなに間違っていないのかな。フーガって。
 解説には、いろいろ難しいことをしてますよ、って書いてあったんだけれども。どれも気持ちいいんだよね。単純なおっかけっこが、3人になり4人になり、リズムが跳ねてみたり違うメロディが加わってみたり。でも構造としてはシンプルで、ひとつのパートに耳を澄ませば、それだけで意味のある言葉を喋っている。
 つまり、バッハの作った技法は、みんな人々を気持ちよくする為のものなんだよね。
 僕もそれに乗せられて、どんどん気持ちよくなっていったのだけれども。
 
 どんどんどんどん、昇っていって、あともうちょっとでイキそう、っていうときに、なんといきなり、音楽が終わったんだよね。ビオラだかの下降音型だけを残して。
 そして、何事もなかったのように、一番シンプルな、最初の音楽が始まって。
 
 そう、この曲は未完なんだって。解説によれば遺稿っていう訳ではなくて、もっと前に書かれていたもののようだけれど。とにかく最後まで書いてない。
 別にいいけどさ、未完の曲を演奏しても。ブル9だってモツレクだって未完だし。でも、それぞれ、完成している楽章だけを演奏したり、弟子が書き足したりして、一応曲としての体面を保っているよ、そいつらは。
 何もいきなり、タランティーノの「この部分、フィルム消失」みたいな感じで放り出すこと無いのに。特に編曲byヴィンシャーマンなんだから。
 ホント、あともうちょっとでイキそうだったのに。
 
 でも、その分。
 アンコールのコラール。主よ人の望みの喜びを、だったっけ。僕の中のバッハの代名詞のこの曲を聴いていて、なんかホントに、ほっとしたんだよね。
 もちろん、メインの2曲も、肩の凝る音楽ではなかったのだけれどもね。でも緊張感はあったのかな。
 
 もちろん大満足なんだけれど、僕には何がよかったのかよく分からないんだよね。曲がいいのか、演奏がすごかったのか。
 アンサンブルとかソロとか、すごいと思うことはあっても、マイナス面で気になるところは全くないから、それ自体は凄いと思うのだけれど。でもその分、この演奏のここが凄い、っていうところもないんだよね。
 聴こえてくるのは演奏者の音じゃなくって、バッハの音。
 それって、ある意味到達点だよね。
 凄い瞬間に、僕は居合わせたのかも知れないな。
 
 ボッセには悪いけれど、2004年に代役としてヴィンシャーマンに振ってもらって、大フィルさんはものすごいお宝を発掘したよね。
 もう88歳のおじいさんだけれども、受難曲とか、聴きたいな。
 
 ただ、ちょっと空席が目立っていてもったいなかったな。シンフォニーホールは大きすぎるけれど、定期にしても大満足の演奏会になると思うのに。


====================================
2008年11月27日
いずみホール特別演奏会II
~バロックの極致『フーガの技法』~
ヘムルート・ヴィンシャーマン:指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団
いずみホール 1階K列21番 A席

J.S.バッハ(ヴィンシャーマン版):音楽の捧げ物
J.S.バッハ(ヴィンシャーマン版):フーガの技法