薬師丸ひろ子 @フェニーチェ堺 ― 2022年11月03日
僕が小学生とか中学生だった頃。
角川映画がやたら元気でね。
テレビでCMばんばん流して、映画の宣伝を大量にしながら、その勢い(?)で本を売る、って言う。そういう商法が映画業界からはずいぶん煙たがたれていた事が、当時の僕にも分かるくらいだったけれど。
メディアミックス、っていう素の売り方は、今では、というかすぐにあたり前になったよね。
そういう、メディアミックスの中で、流行歌のように刹那に消費されるべきものとしての映画。KADOKAWA映画は、そういう風に思われていた、んだと思うんだけれども。
でも、実は。
きちんとした監督さん、スタッフを迎えて、お金をかけて創った映画たちは、実は世代を超えて残っていくものが多かったんだよね。僕も、好きな映画がたくさんあるよ。KADOKAWA映画。
もちろん、女優さんの存在も大きいよね。特に初期のKADOKAWA映画を作ったふたり。薬師丸ひろ子と原田知世。
セーラー服と機関銃と、時をかける少女って、二本立てだったんだよ、知ってた。
このふたりの女優さんは、最初の頃はアイドル女優、って言う扱いだったから、映画に主演して、その主題歌も歌って。それを年に何本かやる、って言うすごいことをしてたんだよね。
ちなみに、僕が最初に買ったシングルレコードは、セーラー服と機関銃。今でも持ってて、たまに聴くんだよね。CDとかサブスクで聞けるのって、このバージョンがあんまりないからね、好きなんだ。
この二人は、最初のうちこそアイドル扱いだったけれど、お二人とも現在に至るまで女優として、そしてなんと、歌手としても活動しているんだよね。
そしてなんと、その歌声は。。。
という訳で、行ってきたよ。
薬師丸ひろ子の、コンサート。@フェニーチェ堺。
40周年のコンサートなのかな? 若いうちからやってるからね。歌番組や、あまちゃんで時々歌声も聞いていたから、変わらない声を期待していたのだけれど。
いやあ。
フェニーチェ堺って、4階か5階くらいまで客席がある、天井が高くって、この前はロンドンフィルが暴れ回るような大きなホールなのだけれど。
その、広大な空間を、螺旋階段をモチーフにしたシンプルなセットの、真ん中に立って唄う薬師丸さん。
最初の何曲かは、ちょっと声が固いな、PA高音下げないかな、とか思っていたのだけれど。
ああ、そんなこと、どうでも良くって。
1部の中盤くらいなのかな。弦楽をバックに唄った、みゆきの時代。
薬師丸さんの、どんなときでも歌詞が聴き取れる発音と、ホールをまるごと満たすその発声と。そして、個人の感情に寄り添う、その母性と。
ちょっと泣きそうになりました。
みゆきをはじめ、ユーミンや、井上陽水や、竹内まりやとか。そうそうたる人たちから、若い頃に曲をもらって。そして、40周年のアルバムでまた曲を書いてもらって。
みんなが知っている映画の主題曲と、もしかしたら本人のカヴァーの方で有名な提供曲と、それから現在の新曲と。足りない分はメドレーで。
そして、最後は怒濤の映画主題歌集。
あえて当時のようなまっすぐな発声で歌ってくれたセーラー服と機関銃。それ、僕には通じたよ。この曲だけえらい素直やな、って思って聴いてました。
そして、最後は。
Woman Wの悲劇。
薬師丸さんは、和田アキ子と一緒で、発表時のスタイルやキーのまま、聴いている人のイメージを壊さないで唄っていきたい、ってなんかの番組で言っていたのを聞いたことがあるけれど。
この、Wの悲劇が、プレッシャーになるんだろうなあ、って思いながら聴いていたのだけれど。
いまだに、映画公開時のテレビCMでかかっていたサビのインパクトが、僕の、みんなの耳に焼き付いているものね。
なのだけれど。
ご安心あれ。
薬師丸ひろ子は、健在です。
健在です、は嘘です。
成長しています。
薬師丸ひろ子は、成長しています。
この曲だけでなく、どの曲にも。
侘びも、サビも、色も艶も、自由自在に込められて、広いホールを一人で満たして、二時間半近い別世界を創ってくれる。
ありがたや、ありがたや。
ホントに大満足で、あとこれ聴きたかった、って曲が思い浮かばないくらいてんこ盛りのコンサートでした。
あ、あまちゃんの曲聴けなかったけど。
ただ、それだけのはなし。