ロシアW杯 日本の空気感コロコロ記2018年06月30日

 サッカーって、面白いよね。

 

 僕は、加茂監督が更迭された頃からの、4年に一度のにわかウォッチャーなのだけれど。

 もっと正確に言うと、Numberっていう雑誌に、「戦略的加茂監督更迭論」って言う記事が出て、僕の目にとまったときから、なのかな。

 

 あの時は、ドーハの悲劇のあと、日本がまだW杯に出場できるって信じられていない人が多くて。それでも次回の自国開催が決まっていて、今回はどうしても自力で出場しなくては次期開催国として恥ずかしい、っていうプレッシャーがあって。

 そんなアジア予選の中、勝たなければいけない試合に勝てない加茂監督を、予選のさなかで電撃解任して。

 まあ、その頃はサッカーのシステムとか、協会がどうのとか全く分からなかったけど、会長のインタビューで、「辞任ではなく解任、更迭です」って言っていたのが、すごく印象に残っているんだよね。とはいえ、言葉遣いはあやふやだけれども。

 

 まあいいや。

 それから20年も経って。

 幸運にも日本は、それからずっとW杯の本戦にコマを進めることが出来ていて、今ではW杯なんて出て当然、と日本中が信じ切っている。そういう環境を日本のサッカーは作り上げてきていて。(イタリアでも出れない事がある、って言う事実を、いつか噛みしめるのだろうけれど)

 

 そんな中では、予選突破したから英雄とか、参加することに意義がある、とかではなく、本戦で我々観客を楽しませてくれるのか、という事で監督の人事が動くんだよね。

 いろいろなヒトが、予選直後から言っていた監督交代論、何があったか知らないけれど、本戦の2ヶ月前になって実現して、新監督はお手軽な日本人、それも、前監督を補佐する立場なのに孤立を避けられなかった(公式な解任理由によれば)ヒトに決まった。

 

 時間の無い新監督が選んだ人選が、世代交代を進めようとしていた前監督とはちがって実績重視の布陣に見えた事もあって、また、最後の強化試合3連戦の内の二つが、なすすべ無く負けたように見えたこともあって。

 新監督はものすごく批判をされたね。前監督の方が良かったとか手のひら返すようなことも言われたりして。

 

 そして、最後の強化試合。がらっと先発陣を入れ替えてのパラグアイ戦では、なんとまさかの快勝。どう見ても想い出造りメンバーと見えたのにまさかの好成績で、喜んでイイやら今後のメンバーどうするのか、余計な心配をかき立てられたりして。

 でも、日本にいるぼくらのムードはこれで一転。新監督は稀代の戦術家なのでは、という期待も持てるようになって、お祭り前夜の盛り上がりを、ようやく見せてきた。

 

 そして、開幕。

 H組の日本は、開幕からずいぶん待たされた気がする初戦。コロンビア戦。

 とはいえ前評判はやっぱり高いものでは無かったけれど。

 ところが、メンバー発表でこれまでの大黒柱、ホンダの先発落ち。これはカントク本気だぞ、というのが野次馬的に伝わってきて。

 そして、ゲーム開始。

 思い切りのいい大迫のシュートのこぼれ球を拾った香川のボレー。たまらず手が出たコロンビアの守備。

 PK。そして退場。

 

 列島爆発。最高潮。

 

 細かい難点はいろいろありそうだけれども、打ち合い上等の日本代表なんて、アジアでしか見たこと無かったからね。10対11だった、ていうことは置いといて、みんなで応援する強い日本代表が、ようやく姿を現した。

 

 つぎは、セネガル戦。

 セネガルって、僕がにわかになり始めたフランスW杯の開幕戦で、開催国のフランスに勝ったセネガルだよね。どこからでも足が出てくるアフリカ勢だし。これは守りに入るかな。

 と思ったらね。

 勢いって怖いね。打ち合い上等のまま試合に入って。こちらも初戦勝ってモチベーションの高いセネガルと打ち合った。

 引き分けだったけど。

 チャンスもミスもいっぱいあったけど。ニシノ監督の采配は、途中出場のホンダが前回のアシストに続いてゴールしたことで、魔術師の域に(評価が)達していて。

 それでも暫定一位。ただし勝負は3戦目。

 そして、裏では、11人いるコロンビアの強さをまざまざと見せつけられていて。日本の闘ったコロンビアって、なんだったんだろう、という思いも少しよぎりーの。

 

 この時、列島のファンはどうだったんだろう。まだ一週間も経ってないのに、良く思い出せないよね。

 

 日本は、勝ち点取れば決勝リーグ進出。負けても裏試合が引き分けでなければ進出。

 相手のポーランドは、2敗で敗退決定。それでも誇りをかけて1勝を取りに来る。中には敗退でモチベーションが、とかいっている人もいるけれど、どうだろう。日本の最初のW杯、3戦目のジャマイカ戦にモチベーションがなかったとか思っていたヒトって、いないよね。

 そして、裏の試合。

 グループ二位と三位の最終戦は、勝てば勝った方が進出。負けたら敗退。日本が負ければ、引き分けでも可。

 

 そういう試合。

 

 僕は、夕方5時からの東京での会議を終えてから新幹線に飛び乗って、タクシー飛ばして前半の真ん中くらいから観戦、という感じだったのだけれども。

 新幹線の中でメンバーはチェックしていて、これまでの先発から6人交代、ってところで、心配はしていたのだけれど。

 なんだろう。

 ポーランドを甘く見てるのか、裏試合の引き分けはないとみてるのか。

 日韓のときに、奇策がずばり当たって調子に乗ったトゥルシエが、トーナメント一回戦のトルコ戦で変なメンバー組んで試合にならなかったこと、想い出しちゃったよ。

 

 そして、家に帰ったら、試合を見ていた家人のひと言。

 おかしいの。横パスばっかり出して、全然前に行かないの。

 見ればその通り、もらったパスを足下に止めて周りを見渡し、前にコースが見つけられなくて横斜め後ろにパスを出す。

 いつもの、おなじみの日本代表の試合。

 僕の中では、ナカムラシュンスケに代表される、つまらない日本代表。

 あるいは、

 雰囲気に飲まれ、攻めあぐねている日韓のトルコ戦。

 その再現。

 

 グループリーグは、別に全部に勝つ必要は無いからね。主力温存で引き分け狙いでもいいとは思うのだけれども。

 それでも。

 後半にポーランドに先制されて。それでも攻めあぐねている感は変わらなくて。

 そうしている内に、同点だった裏試合でコロンビアが先制して。

 残り時間が少なくなって。

 

 そしたら。

 あろうことか。

 

 日本は、自陣でパスを回して、露骨な時間稼ぎにでた。0対1の一点差負け狙い。

 もとより、ポーランドは誇りをかけて勝ちに来ているけど、1点差と2点差に意味は無くて。1点差で勝たせてくれるならOK。その時間稼ぎ、乗った。

 という事で、双方の利害が一致して、あの、醜悪な5分間。

 それは別にいいんだけどね。双方の利害が一致して、これ以上点を取るのを放棄してパス回しをするのは。グループリーグの第3戦なら珍しいことではないし。他のゲームでの、のどかな終盤はいくつもあったし。

 

 なのだけれど。

 日本のこれは、ちょっと違うんじゃない、って思っちゃうよね。ちょっと違うから、海外メディアからもさんざん悪評を連ねられているのだろうけれど。

 

 なにが違うって。

 このまま0対1で試合終了。

 双方めでたしめでたし。

 そうならない可能性が、これを仕掛けた日本にはあって。それは、同時刻に試合をしているセネガルが、コロンビアからたった1ゴールを決めることで。

 

 もっと正確に言うと。

 このままでは予選敗退するセネガルが、決勝トーナメント出場を掛けて必死で1点取りに来るのに対して、たとえ1点取られても、結果的には決勝に進めるコロンビア。(一位と二位の差はあるけどね) 

 これだけモチベーションに差がある裏の試合。

 その中で、セネガルが1点差を追いつけない。それを前提としたおままごと。

 これが、西野カントクが選んだ賭。

 

 僕が、世界が嫌悪した、賭。

 

 他人に、自らの命運をゆだねる。それも、自力で勝ち取る事を努力する機会も能力も時間も持ちながら、それを全て放棄して、コロンビアの堅守に全てをゆだねる。そういう賭。

 

 もちろん、確率とリスクと、いろんなものを秤に掛けて、出した結論だ、って言うのは分かっているつもりだけれどもね。

 特に、アトランタ五輪で2勝1敗で決勝トーナメント逃がしている西野が、良く恐怖に打ち勝ったな、とは思うのだけれども。

 それでも、好きにはなれないね。


  僕は、最後の数分間、コロンビア対セネガル戦を見ていたよ。だって、日本の命運は、こちらのゲームが握っているからね。

 セネガルが意地を見せて、消極的な日本に鉄槌をくれてやればいいのに、と少しだけ思いながら、ね。コロンビアは強かったけれど。

 

 打ち合い上等のイケイケチームから、一歩路を外されただけで、攻めあぐねて横パスしてしまうチームにすぐになってしまう日本。

 トーナメント一回戦の相手はどこがいいですか?と聞かれて「なるべく強い相手とやりたい」と言ってしまう選手がいる日本。(それって、1回戦敗退を前提としている発言だよね。勝ち進めばイヤでも強いチームと出来るから)

 

 最後の強化試合から大盛り上がりの日本列島は、この第3戦で少し我に返ったのかな、と思うけれど。

 

 それでも、勝てば正義の一発勝負。

 一つ勝って、日本のこれまでの壁を、壊して欲しいなあ。

 稀代の戦術家、西野カントクの魔術に、期待してるよ。

 なんだかんだいっても、ね。

 

 

 ただ、それだけのはなし。



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