東京ジャズ 15周年2016年09月11日

 15回目、なんだね。
 バブルの崩壊を受けて、マウントフジやライブアンダーとかの、大物アーティストをたくさん呼ぶジャズフェスが姿を消して。
 スイングジャーナルも廃刊になった今、CDの通販サイトは昔の音源のアナログ復刻とかばっかりで、大阪に住んでいる僕としては、ビルボードライブ大阪から送られてくるライブスケジュールくらいしか、今のジャズの情報がないんだよね。

 そんな中で、いつもテレビ放送を楽しみにしている東京ジャズ。

 新聞によく載る広告を、羨ましく見てるんだけど、今回はあまりに面白そうだったから、行ってきちゃったよ。

 あんまり書くともったいないので、簡単に感想を書いておくね。

 最初は、小曽根。
 とはいえ、小曽根は一音も発していないのだけれど。
 小曽根が4音大から選んだ選抜メンバーのビッグバンドと、アメリカの音大、バークリーではなくジュリアードから連れてきたコンボの共演。
 最初はみんな固くって、本当に学祭のジャズ研レベルだったのだのだけれども。そのうちほぐれてきて、見えるようになってきたのが、日米の主食の差。
 肉食のアメリカ人と草食の日本人、っていうことなんだけどね。
 受けるためにはなんでもやる、自分の持っている武器をあの手この手で繰り出して。そういうアメリカ人に、なんか自信なさげで、順番だけこなせばいいや、っていう日本人。ジャズ好きなら、もっと頑張ってよね。
 ちょっと欲求不満。

 次は、寺井尚子。
 僕は、メインのミュージシャンの名前だけを見て、行くことを決めたのだけれども。それぞれのプログラムには、全部じゃないかもしれないけれど、サブタイトルがあってね。寺井さんのセッションのタイトルは、なんだっけ。
 タンゴミーツジャズ、みたいなやつなんだよね。
 アルゼンチンタンゴのバンド、バンドネオンが入ったカルテットに、寺井さんがゲスト出演、っていう感じで。
 バンドネオンって、ボタンを押す、ちっちゃいアコーデオンみたいな楽器でね。タンゴの、あの物悲しい、キレの良い音を出すんだけど。
 それに比べると、ヴァイオリンっていうのは、音色そのものに色気があってね。バンドの音が全く変わっちゃうんだけど。だけど、ヴァイオリンとバンドネオンは、なかなか並び立たないなあ。バンドの中の役割、っていうか立ち位置がおんなじだからなのかなあ。
 とか思いながら、圧倒的に気持ちいい音楽と、5時半起きビール飲みまくりのせいで、心地よくウトウトしちゃったよ。
 休憩セット、これだけなんだもん。

 そして、昼の部最後は、ハービーハンコック。
 ちょと前に大阪にもきたんだけどね。ビルボードで37000円。ショーターとのデュオとはいえ、ちょっとで手が出る値段じゃないよね。
 ということで、マウントフジ、あるいはライブアンダーのVSOP以来、ともかく四半世紀ぶりの、ハービー。
 もう。
 ハービーが動いてる、ってだけで大満足なんだけどね。
 ピアノとキーボード、ショルダーキーボードやボコーダーを持ち出して、カメレオン、ウォーターメロンマン、そしてアコースティックのカンタロープとか。懐メロ、あるいはそのフレーズをちりばめて。
 楽しく聞きながら、僕の好きなハービーは、ここにいるんだろうか、ってちょっと思ったよ。

 もちろん、ハービーは60年代から常に最前線で活躍して、あの偉大なマイルスが足元にも及ばないようなセールスを記録しているミュージシャンだから、いろいろな側面があるのだけれど。
 前日、ハービーってどんな曲作った人?っていう家人に、カメレオンとかスイカ男とか口ずさんでみたけどまったく通じなくって、処女航海を説明するために今夜は最高のジャズオペラを、結局全部見せてしまったのだけど。
 でも、そのどれもこれも、これがハービー、ではないんだよね。僕にとっては。
 僕にとってのハービーは、なんだろう。
 VSOPであったり、マイルストリビュートやブートレグのnyライブであったり。もちろんプラグドニッケルであったり。
 テンションの高いライブでの、アコースティックピアノでの、どこまでも行っちゃって帰ってこない、そいういうソロなんだろうな。
 上原ひろみとかとは全然違う次元で、ちょっと聞いただけでハービー以外にいない、ってわかる。そういうソロ。
 そういうのが、聞きたいよね。やっぱり。

 そういう意味では、わりとアコースティックっぽかったカンタロープの、ソロの1フレーズ。それが一番だったのかな。身体が騒いだのは、アンコールのカメレオンだったけどね。

 っていうわけで、わりと押して終わったお昼の部。1時間ちょっとのインターブレイクで、夜の部突入だから、ここで食べ物とアルコールの補充。
 とはいえ、アルコールは大阪の空港から飲み続けなんだけどね。
 中庭でやっているアマチュアのビッグバンドの熱演をBGMに、キューバ料理っぽい屋台に並んで、ジャガイモとチキンと。飲み物はもちろんミントいっぱいのモヒートで。
 座るところないから、おばちゃんが二人で座っていた丸テーブルに、食べ物だけ置かせてもらって。
「なんか急に混んできたね?」
「今、ホールが終わったんでお客さんが出てきてるんですよ」
「ホールでもやってるんですか? 誰出てたんですか?」
「ハービーハンコックとかですよ」
「え、ハービーハンコック? そんな有名な人きてるんですか」
「そうですよ。僕なんかこれ観に大阪から来たんですよ」
 とかいう会話を楽しんで。
 たまたま通りかかった、ちょっとジャズが好きな人にとっては、この、屋台と人がいっぱいで特設ステージからジャズが聞こえてくる、国際フォーラムの中庭が東京ジャズ、なんだね。
 渋谷に引っ越しちゃうなんて、もったいないなあ。

 というわけで、お腹もいっぱいになったところで、後半戦、夜の部。
 メセニーとクリスチャン。
 メセニーは、マウントフジが横浜だかの屋内コンサートになった時に見たのかな。山中湖でも一回来たっけ? 大学ジャズ研の時にふぁーすとさーくるとか80・81とか流行ってたけど、その頃は爽やかな音楽ってあんまり興味なくって、素通りしてたんだよね。ちょっと後のジョンスコとジョーロバーノだったっけ、あのバンドの方が好きだったなあ。

 というわけで、メセニーなんだけど。
 ウッドベースとのデュオで、アコースティク系のギター3本を使い分けるメセニー。これがいいんだよね。ロンカーターとジムホールみたいで。
 あまりに丁寧に刈り込まれた盆栽を愛でている感じで、本当に気持ちよくウトウトしちゃったよ。
 あ、めちゃくちゃ褒めてるんだけどね。

 そして、その次。
 多分、知名度から行ったらこの日のダントツワースト1なんだろうけどね。キューバのピアニスト。
 キューバの音楽って言ったらそれはもうすごいし、ゴンサロちゃんだっているから、僕的にはものすごく期待してたんだけどね。

 そして。
 いやあ。楽しかったなあ。
 ピアノはね、パーカッシブな情熱系ピアノ、っていうことでは、ゴンサロちゃんや、みしぇるかみろ、上原ひろみとかよりインパクトには欠けるなあ、と思って見てたんだけど。
 何よりも、このバンド。
 ベースが、変態。超変態。
 セネガル人のエレキベースなんだけど、暴虐無人、KY。前後のつながり全く無視して、全く違うテンポのおかずを入れまくって強引に曲を変えてみたり、ピアノより指回るんじゃないか、っていうチョッパーソロを入れてみたり。
 ピアノの弟でこれも元気のいいたいこと合わせて、サイモンフィリップスが二人いる上原ひろみトリオみたい。誰も苦笑いしながら後ろから支える、とか考えないの。やりたい放題。
 ジャンルは違うけど、マイルス黄金カルテットの時のやりたい放題感ってこんな感じだったのかなあ。まあ、ただただ楽しくって大笑いしてただけなんだけどね。

 あんまりお腹の皮よじれちゃって。
 次はトリのナベサダなんだけど。心の準備ができないまま、ハイボールだけ飲んで突入しちゃったんだよね。
 これもマウントフジ以来、25年ぶりくらいのナベサダ。あの頃から伝説の巨匠だったけど、まだまだ現役なんだよね。

 ナベサダバンドは、ルーニーとかアメリカのバリバリミュージシャンいっぱいよんで、bebopナイト。
 そうだね。ナベサダは、bebopを日本に持ち込んだミュージシャンなんだよね。多分。

 ジャズっていう音楽は、時代とともに形を変えていく音楽で。bebopっていう肉食系の音楽や、それに使われていたフレーズは、ハードバップからモード、スムースジャズとかどんどん草食系になってトゲトゲ感が薄れていくんだけど。
 ナベサダのbebop、かっこいい。
 横にいるのがマイルスの物真似で世に出た(嘘だけど)ルーニーだったこともあって、それはもろにパーカーフレーズ。

 bebopって、基本的にはバンド内バトルの音楽なんだよね。誰が受けるか、誰がもてるかをバンド内で競うために、テンポは早く、メロディは複雑で、ソロは、あるものは溢れるブッ速フレーズで勝負して、あるものはハイトーン、ビッグトーンで勝負して。負けたらすごすご引き下がる、っていう、そういうバトル。
 ナベサダのbebopには、そういう匂いがプンプン残っていて。ハードバップの曲だと単なるジャムセッションになっちゃうんだろうけど、いいなあ。bebop。
 小曽根の草食系バンドの人たち、見てたかな、これがジャズだよ。

 ああ、楽しかったなあ。
 久しぶりに、思う存分ジャズ聴いたよ。

 ただ、それだけのはなし。

西海岸の、オーケストラ サンフランシスコ響 MTT conducts Erich, Copland2016年09月19日

 いやあ。やらかしちゃったよ。

 

 オオウエエイジのブル9がすごく良くて。あらためて楽しみにしていた兵庫文化芸術センター・佐渡裕のブル9。

 なんとか金曜日のチケットを取ったんだけどね。補助席の。

 当日、仕事終わりにそそくさと西宮の会場に向かったら。

 あれ、なんかオカシイ。

 暗い。誰もいない。

 

 あれれ。

 日にち合ってるよねえ。とチケットをよく見てみたら。なんと。

 3時からやん。コンサート。

 

 え。

 平日3時から。。定期が。。

 なんと。なんと。なんともいえん。

 

 という訳で、いけなかったコンサートのことは忘れてね。

 行って来たコンサートの話をするよ。

 

 ちょっと前に、アメリカに行くことがあってね。サンフランシスコの近くの田舎町。

 週末を挟んで違う年に移動するから、ぽっかり空いた土曜日。その土曜日に、たまたまサンフランシスコ響の演奏会があってね。わーい、ってチケットを取ったんだ。海外出張の常で、4時前に起きてiPadで遊んでた時にね。

 不慣れなiPadから、エイゴのHPで入力して。わーい、いい席とれた。と思ったのだけれども。

 折り返しの確認メールを見たら、あれ。金曜日になっている。。あわててキャンセルか土曜日への移動をお願いしたらね。土曜のいい席ありまっせって。前から7,8列目のど真ん中の席を取ってくれた。ありがとう。

 

 という訳で。

 サンフランシスコ空港から車でホテルに入ったから、当然僕はサンフランの郊外にいる野田と信じていたのだけれどもね。

 海外ではきちんとワークするgoogle mapの乗り換え案内で見てみると、なんとホテルからサンフランまでは2時間以上かかるんだ。しかも、8時に始まるコンサート、終わってからじゃあ電車で帰れない。

 まあ、いいや。

 お目当ての曲は前半だし。つまんなかったら前半で帰ってくればいいし、面白かったら、タクでもなんでも使えるでしょう。

 という訳で、行ってきたよ。

 サンフランシスコ交響楽団。

 MTT Conducts Copland and Reich

 

 サンフランシスコの死役所の向かいにあるDavies Symphony hallは、何となくシンフォニーホールに似たホールでね。

 高い天井からつられている透明アクリルの反射板とか、ステージ後ろに堂々と控えているパイプオルガンとか。パイプオルガンの大きさはそれこそ壁一面、っていう感じで,シンフォニーホールの比ではないのだけれどもね。

 MTTっていうのは、アメリカの電話会社、ではなくってね。Michael Tilson Thomasっていうこのオケの常任指揮者。

 そして、プログララムは。

 コープランド、ガーシュイン。そして、良く知らないけど現代の作曲家、Reich。

 いいなあ。アメリカの音楽をアメリカのオケで聴けるなんて。

 

 とはいえ。

 陽光と強風のサンフランの街を4時間もさ迷った後に飲んだビールのおかげで、とにかく眠たくってね。

 僕の中でのメインプログラム。コープランドのビリーザキッド、うとうとしちゃったよ。だって、あまりにも気持ちがいいんだもの。

 もったいなかったけどね。

 

 今回のプログラムは、やたらセッティングが変わるプログラムで。

 普通のオケの編成で演奏したビリーザキッドのあとは、ソプラノ歌手が入って。コープランドの中でもこれは知らない曲だったのだけれども、from Eight Poems of Emily Dickinson。歌曲集、っていうのかな。歌もの。

 Susanna Phillipsっていう女性歌手が、なんともかわいくてね。コケティッシュ、っていうのかな。

 英語の歌詞だから、ドイツ語よりは断片的に分かるのだけれど。

 Going to Heaven!思わせぶりにくり返されちゃうと、きゅん、ってしちゃうんだよね。

 

 そして、ガーシュイン。

 プログラムに曲名があるけれど、これはこの歌手へのアンコールの位置付けで、SummertimeとI Got Rhythm。

 

 ガーシュインはね、何度か書いているけれど、コープランドはどこまで行ってもクラシック音楽であるのに対して、ガーシュインは、ジャズ、なんだよね。演奏のアーキテクチャがJAZZのそれ、なんだ。

 だから、日本のオケで聴くと、なんかちょっと気恥ずかしいことが多いのだけれども。

 いやあ。さすがにアメリカのオケ。

 

 Summertimeはまだオケの曲だったけれど、I Got a Rhythmなんて、ハンドマイク持って、オケも遠慮卯市内ビッグバンド状態。これがかっこいいんだ。なんか得した気分。

 お客さんも、ブラボーコールじゃなくって、Yeah!!とか、ヒューヒューとか。口笛とか乱れ飛んで。いいなあ。

 

 大満足の前半。

 後半期かないなんて、もったいないでしょ。電車なんかどうでもいいや。

 

 後半はね。Reichっていう現代の作曲家で。

 最初の曲は、Double Sextet。まあ、その名の通り、なんだけどね。

 ステージ上にふたつのセクステットが左右対称に並ぶんだけど。その編成がちょっと篇でね。

 ピアノ、マリンバ、フルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ。これで6重奏。鍵盤と打楽器が、ずっとリズムを奏でていて、その上で管弦がメロディーを受け渡す。

 これは、ジャズだよね。

 たゆたうリズムが20分もかけて盛り上がってくれば、それはもう、トランス状態。熱狂。

 まだまだ元気な作曲家が2階から挨拶すれば、それはもう、大歓迎。いいなあ。

 この曲が2007年の作品で、つぎの、最後の曲が1985年、なんだけどね。

 この差が、完成度の差なのかな。最後のThree Movementsは、フル編成のオケで、同じように通奏のリズムの上でメロディーがたゆたうんだけど。前の曲でやってきたトランス状態がもう一度、っていう訳には行かなかったなあ。

 

 でも。

 なんかカジュアルで、ブラボーじゃない、心からの拍手と口笛が飛び交うオーケストラの演奏会。

 そういうのも、いいよね。

 

 SAN FRANCISCO SYMPHONY

 September 10, 2016 at 8:00 pm

 Savies Symphony Hall

 

 Michael Tilson Thomas conducting

 Susanna Phillips soprano

 

 Copland Billy the Kid

 Copland from Eight Poems of Emily Dickinson

 Gershwin Summertime

 Gershwin i Got Rhythm

 

 Reich Double Sextet

 Reich Three Movements

 

 Premier Oechestra H 13