世界最高のバイオテク企業2015年09月10日


 アムジェンの元CEOが書いた、成長期真っ只中のアムジェン史。

 あ、アムジェンってね、バイオベンチャーから製薬企業に成長した会社。現在も独立を保っている、という条件を付け加えれば、文字通り世界最大のバイオテク企業、かな。

 科学者集団であったアムジェンに、経理畑のCFOとして参加して。製品がない時期の資金繰りに苦しみながら会社としての体裁を整え。シンプルかつ強力な社是を制定しぶれずに実行して。急成長していく中で必然的に起こる官僚主義、セクショナリズムを排除し。科学に忠実に、患者によりそうためには、科学者の無関心にも敢然と立ち向かう。
 有意義でやりがいのある目標を掲げ、気持ちいい仲間を集めて、気持ちよく働いてもらう。

 ただ、それだけのこと。
 きっと、難しいんだろうなあ。

 科学の成功物語ではなく、会社としてのバイオテク企業の黎明期を、科学者ではない経営者の目線で描いたこの本。いわゆるビジネス書にはあんまり興味もないのだけれど、これは、いろんな人に読んでほしいなあ。
 ハッとするところや、なるほど、って思うところが満載で。
 何より、元気になるから、ね。

オオウエエイジの、ひさびさの快演 マーラー3番 〜大フィル第491回定期演奏会〜2015年09月23日

 水害や噴火とか、いろいろなことが起こった夏だけれど、陽も短くなって、鈴虫が鳴き出したね。

 秋だね。

 

 オーケストラにも、シーズンオフがあってね。それが8月、夏なのだけれども。

 秋がやってくると、大阪では、大阪クラシックっていう催しがあってね。スタバとか銀行とか、ビルのロビーとかいろんな所でゲリラ的にオーケストラの人たちが少人数のアンサンブルを披露してくれるんだ。無料でね。

 今年は、僕の知らない間に終わっちゃっていたけれども、ね。

 

 その催しをプロデュースした大植英次が、そのまんま大阪に残って振る、9月の定期。オオウエエイジは、常任じゃなくなってから定期ではマーラーしか振らなんだよね。

 定期でブルックナーを振ることを頑なに拒絶している井上道義の得意曲も、マーラーなのだろうと思うのだけど、そのうち、マーラー対決も聴いてみたいなあ。

 

 という事で、オオウエエイジのマーラー3番、聴いてきたよ。

 


 久しぶり、の感じが強いんだよね。

 大フィルさん自体も久しぶりだけれども、大植英次は、年一回ペースなのかな。大阪クラシックとか、定期以外の演奏会からちょっと足が遠のいている蚊ね。

 しかも。

 オオウエエイジのマーラー、なのか、そもそもマーラーが、なのか分からないけれど。

 あんまりいい想い出がないんだよね。オオウエエイジのマーラー。

 

 もちろん、就任記念の2番、復活。これはすごかって、僕は一発で大植英次の大ファンになったのだけれども。そのあとって、実はあんまりいい印象がないんだよね。外タレを引き連れてきた9番くらいかな。わーい、っていう演奏。

 

 だから、今回はどうなのかな、って思ったのだけれどもね。

 

 マーラーって、時代的にブルックナーと重なっているようで。わりと同列に論じられる事が多いんだよね。

 ベートーヴェン、ブラームスと来た交響曲、っていう形式の熟成期。共に大編成の、CD1枚に収まらないくらいの長大な曲を作り上げたマーラーとブルックナー。

 似ているのはそのくらいでね。

 

 視点の持ち方が、全く違うと思うんだよね。マーラーとブルックナーとは。

 朴訥なオーケストレーションの技術と信仰を武器に、神から見た世界を音にしようとしたブルックナーと、煌びやかな技術と超人思想で、音で世界を作り上げようとしたマーラー。

 似て非なるもの、そのものだよね。

 

 まあいいや。演奏会だね。

 

 3番は、アルトの独唱と女性、児童合唱の入る大がかりな曲でね。ミッキーもプログラムに書いていたようにフェスの大きさが似合う曲。

 

 フェスティバルホールって、おっきいんだよね。体感的に、シンフォニーホールの倍くらいの容積、って感じ。ホントはもっと大きいのかもしれないけれど。

 僕は実は、ミッキーがブルックナーをフェスで演奏しないのは、びびってるからじゃないかな、って思ってるんだよね。

 オオウエエイジの10年間。小さくてしかも音響のいいシンフォニーホールをホームグランドとしていた大フィルさん。朝比奈のじいさんの時代の、やたらでっかくて響かない昔のフェスで鍛えられていた「音の大きい大フィル」が、その10年ですっかり小奇麗な音を出すオケになっちゃって。

 僕を含む、じいさんのブルックナーを記憶の中で美化している大フィルさんの頑固なお客に、ブルックナーでフェスを鳴らし切る演奏を聴かせる自信が無いってびびってるんじゃないかな、って思ってるんだよね。

 まあ、今年くらいはそれも良いけど、ね。

 

 ああ、オオウエエイジのマーラーだよね。

 

 この曲は、大編成の大曲なのだけれど、棒がいつも気にするような、音圧でフェスを満たしたかどうか、っていう評価軸はあんまり当てはまらないのかな。

 冒頭のホルンのファンファーレ。ホルンは代替わりしてからすごく安定感が増したよね。かっこいいファンファーレの最後とそのつなぎのフレーズのテンポ。なにもそこをいじらなくても、と思うのだけれど、そこをいじるのがオオウエエイジ。ちょっとずっこけたけれど、でも、そんなことはすぐに気にならなくなってね。

 すごい、演奏だったよ。

 

 大編成だけれども、分厚いトゥッティの迫力、というよりは、思いがけない楽器の組み合わせで重層感を出していく曲で。弦バスとホルンのユニゾンなんて、なんてかっこいいんだろう。

 ベルアップしたクラリネットや、ラッパ、トロンボンのソロや。コンマスの色気あるソロとか。

 そして何より、袖のラッパのカッコ良さ。

 

 後ろのおっさんのいびきが気になって身を乗り出して聴いていたのだけれど、100分の長大な曲を、全く飽きさせないオーケストレーションと、そしてもちろん、緊張感を持続させた演奏。

 

 曲の終わり。

 血気にはやる観客を、見事に押さえ込んで静寂を創ったオオウエエイジ。

 

 いやあ。

 僕は、好きだなあ。これ。

 久しぶりに、両手を挙げてブラボー、だよ。オオウエエイジの、マーラー。

 

 ありがとうね。

 また、良い演奏を聴かせてね。

 

 ただ、それだけのはなし。

 

 あ、そうそう。

 橋下市長になってから、助成金が大幅に削られて財政危機に陥っている大フィルさんを始めとする在阪オケ。

 そのオケ(を含む大阪の文化事業)を救うため、大フィルさんに使って、って指名できるふるさと寄附金制度が出来ました。

 ここをぽち、っとね。

 所得に応じた範囲内なら、つぎの年の税金軽減、という形で2000円を引いた全額が帰ってくるふるさと寄附金(ふるさと納税)は、普通の大フィルさんへの寄附よりも個人負担が少なく、大フィルさんへの応援が出来ます。

 僕はサポート会員にもなっているけれど、それよりこのふるさと寄附金の方が、安心して多くの応援が出来るんじゃないかな。

 皆さんも、ちょっと考えてみて、ね。