南の島のA2Z 〜by 山田詠美 & 金城一紀〜 ― 2009年06月20日
![](http://mark.asablo.jp/blog/img/2009/06/21/abed1.jpg)
さて、僕は今、南の島に向かう飛行機の中にいるのだけれど(今じゃないよ。一週間とちょっと前の話ね)。
ほとんど弾丸ツアーともいえる急な仕事で、心の準備もできないままに、15年前に同じ南の島に行ったときに使った以来のほこりをかぶったスーツケースに、とりあえず着替えを詰めて。梅田から関空に向かうバスに乗り込んだのだけれども。
旅のお供の文庫本だけは、ちょっと時間をかけて選んだんだ。今回のお供の一冊目は、レヴォリューション No.3 by 金城一紀。
このお話は、もちろんとっても魅力的で。そして前に紹介した対話篇とおんなじで、やっぱりちょっと警戒心を呼び起こす、そんなお話。でもそれって、僕がオッサンになっただけなのかな。
まあ、いいや。
そしてもう一冊。。
南の島のお供は、もちろん、これ。
ベッドからのぞける、レースのカーテンの向こうの空がだいだい色になって、やがてまぶしいお日さまが顔を出して。
いつもはねぼすけの僕だけれど、弾丸ツアーの最後の朝、気持ちのいいベッドよりもお日さまの光を浴びる方が気持ちよさそうでね。バルコニーのいすに座って、本を広げたんだよ。連日の夜遊びで出番のなかったコロナビールを、血豆を作りながら開けて。
そしてもちろん。
南の島のお供は、これ。
山田詠美。今日はA to Z。
明るくなったばかりの、28階のバルコニーはまだ、短パンだけでは肌寒かったのだけれども、太陽が大急ぎで南の島の空気を創っていく、それを肌で感じたくて、上半身裸のまま本を広げたよ。
AtoZ。編集者の夫婦の、夫婦の関係と恋の物語。自覚的に子供になれる大人たちが、でもどうしようもなくホントの子供に魅かれていく自分の中の子供に振り回される物語。
なんかこうやって書くとしょうもなく見えるかもしれないけれど。Amyの物語はどうやったって要約できないからね。開き直るよ。僕の要約がどれだけしょうもないか、興味ある人は本を手に取ってみてね。最初の1ページでわかるから。
においが。
この物語の。
Amyのお話を南国で読むのって、3冊目なのかな。放課後の音符、風味絶佳、そして、AtoZ。Amyの描く若い女の子ももちろんいいのだけれど、35歳、仕事でもきちんとプレゼンスを持っている大人の女の人、絶品だね。実はあんまり多くないのかな、このくらいの年代の女の人を描くのって。アニマルロジックのヤスミンはちょっと違うし、トラッシュやベッドタイムアイズの女の人は若いし。
Amyの描くガールズトークは、いいよね。大人の女の人が、自分で代償を支払いながら身につけてきた知性や倫理や他人との距離。そこから生まれる厳しさにくるまれた優しさ。
自分のための隙間を作ってくれる他人。そういう関係を、僕は忘れちゃってるんだな、そう思ったよ。
アラフォーのあけすけなガールズトークっていうことで、SATCを思い出す人もいるかもしれないけれど。僕はSATCを全部で30分くらいしかみていないからわからないのだけれども。Amyの描くガールズトークの、3分の1でもいいから魅力的だったら、教えてね。見てみるから。
コロナ2本を飲み干して、お日さまが南国の空気を仕上げるのに成功した頃、AからZのお話は終わったんだ。もちろん、Zで終わるお話だから、まあ、そういうことなのだけれども。
でも、ハッピーエンドだよね。
このお話が悲しいか、といわれたらもちろんNoで、切ないかと聞かれてもやっぱり僕はNoって答えるのだけれど。
ぼくのなかでは、感情的に解決がつかない話が切ないお話で、感情を整理できていたら切なくない、という風に思うのだけれども、この本を読むと自信がなくなってきたな。
感情が整理できたと思い込む、あるいは無理矢理解決したことにすることの方がよっぽどせつないのかな、って。
Amyのせつなさ、どっかで定義されてたよね。3粒の涙か、フランスのゲイの画家のエピソードで。ちょっと本箱ひっくり返して読み返してみよう。
あ、ぽめらの電池が切れそう。じゃあ、ね。
ただ、それだけのはなし。