マーラーとブルックナーの二本立て 〜大フィルさんと広響さん〜2020年11月17日

 めっきり。
 夜がが長くなったね。あんなに暑かったのに、いつの間にか部屋ではフリース着込んだりして。
 秋だね。

 コロナの波は、春に来て、夏に来て、そしてまた秋にも来ているけれど。
 僕らはこの永い自粛期間に、正しく恐れることを、その恐れ方を学んで。いままでどおりではないかも知れないけれど、日常のささやかな楽しみを取り戻しつつあるよね。

 人が集まるからって画一的に中止になっていたコンサートも、格子状に人を入れてみたりしながら、今では飲食なし、マスク着用、ブラヴォーなしのお約束でとなりにも人が座るようになった。
 何しろ、ウィーンフィルだって来ちゃうんだからね。今年は行かなかったけど。外国から100人の人たちが、演奏しに日本に来られるようになったんだね。嬉しい限り。

 という訳で、秋の夜長のクラシック。聴きに行って来たよ。
 とはいえ、週末だから、夜ではないのだけどね。
 今回は、土日でマーラーとブルックナー。なんとも豪華な二本立て。
 ああ、面白かった。

 まずは土曜日。尾高忠明/大フィルさんのマーラー5番。@フェスティバルホール。


 尾高さんって食えないオッサンでね。
 オオウエエイジとかコバケンとか、井上ミッキーみたいに外連味のある、派手なイメージはあんまりないんだけどね。
 ないし、去年のブラームスチクルスみたいな、正統派ドイツ音楽をしっかり聴かせたら凄い演奏するし。
 かと思えば、今年のチャイコフスキーチクルスみたいな、泣かせて酔わせて大運動会、みたいな派手な曲もきちんと聴かせるし。
 そういう、しっかり/きちんとした指揮者の奏でるマーラー。どんなんだろうね。
 あ、僕の色眼鏡を通して見た(聴いた)マーラーは、先に挙げた、ニホンジンなのに刀か表記が似合う様な、外連に満ちた指揮者が演奏するのが似合う、ケレンの曲、なんだけどね。(あくまで、個人の感想です)

 という訳で、しっかり系の尾高さんのマーラー5番。はじまりはじまり。
 とはいえ。。
 あんまりマーラーを語る語彙がないんだよね、俺。
 トランペットのファンファーレから始まる曲なんだけど。幕間に袖でラッパが練習してたんだよね、このファンファーレ。
 それ聞いて、おおおお、こんなに引っ張るんや、ここ、とか思っていたんだけど。
 ステージでは、袖の練習よりちょっとだけ緊張気味のラッパから始まった曲は、なんていったらいいんだろう。
 尾高さん、若いね。

 老化が深刻なのか、既に細かいところ思い出せないんだけど。
 この曲は、ラッパとホルンのトップの顔が、交互に朱く染まっていく曲でね。トロンボーンも活躍するんだけど、中低音域が多いからか個人の性質によるのか分からないけど、トップの福田さんの顔が紅くなる事はなかったのだけれど。
 金管だけじゃなく、木管も、フェスの広いステージを埋めつくした弦楽器も、みんな揃って大運動会。の爽やかな汗の演奏だったね。(すいません、マーラーを語る語彙がなくって)
 カーテンコールで喋る指揮者の尾高さん。「今日、マーラー5番なんてばかな曲を演奏するオケは、大フィルだけです」
 って言っていたけど。演奏人数の多いマーラーを演奏できるのは、広い(かは知らないけど)練習場と、広いステージ(こちらは間違いない)を持つホールで定期をしている大フィルさんの特権なんだろうなあ、って、ちょっとお得気分だったよ。

 さて。
 次の日、日曜日。
 今度は場所をシンフォニーホールに変えて。
 下野竜也/広島交響楽団の来阪公演。ブルックナー4番、ロマンティック。


 下野さんは、朝比奈さんの弟子(非公式?)だったこともあり、ブルックナーをとても大事に演奏していて。
 広島にポストを得たときに、お披露目演奏会で8番を演奏したんだよね。
 あれから、もう4,5年経ったのかな。
 今度は4番を持って、大阪まで来てくれた。

 第一部は、ピアニストの小山実稚恵さんを迎えて皇帝と、アンコールの可愛いエリーゼのために。

 そして。4番。
 あらためて見るシンフォニーホールのステージは、フェスのそれに比べると狭くってね。オケの大きさも、大フィルさんに比べると小さいのだけれど。たとえば、ビオラ10、弦バス7、ホルン5だったかな?
 
 もちろん。
 曲が始まると、そんなことは全く気にならないんだけどね。
 今回、まだまだだと思っていたこの演奏会、FaceBookのリマインドで、前々日に慌ててチケット取ったから、少し前寄りの右側だったのだけれど。
 ホルンかトロンボンか、って言ったら少しトロンボン側のこの席で聴く、下野竜也のブルックナーはね。
 すごいんだよ。
 
 下野さんは、僕がいつも聴いている、尾高さんとかミッキーとか、オオウエエイジとかに比べて、二世代くらい若いのかな? ほぼ僕と同世代の指揮者だから、若手、って言うのはちょっとヘンだけど、指揮者って年くってなんぼのところがあるから、まだ若手で通じるくらいの歳なんだろうけれど。
 背中から見ててもエネルギッシュで分かりやすい指揮棒からでてくる音楽は、とても熱くて、みっしりしていて。
 そして、違和感がないんだよね。

 僕のブルックナー体験は、朝比奈のじいさんに始まって。特に94年くらいの全集を、CDすり切れるほど聴きまくったんだよね。
 その後、いろんな演奏家で聴くブルックナーは、そのCDとの違いがざらっと意識される事がほぼいつもだったのだけれども。
 その違和感が、あんまりないんだよね。

 要因はいろいろあるんだろうけれど、ひと言でいえば、鳴らし切る感覚。音の切り方。そして、音の作り方。特に、トロンボンとホルンの関係性。
 そして、ブルックナー休止に残る余韻の音色。
 じいさんとは全く違う、若々しいブルックナーなんだけど、なんか、重ねちゃうんだよね。

 第1楽章から容赦なく鳴らし切っていたオケが、いつ失速するかとはらはらして聴いていたんだけれど、どうやらそのままの勢いでフィナーレまでたどり着いて。

 20年前にシンフォニーホールで聴いたじいさんの4番では、コーダくらいで、天上の反射板から光が降りてきて、パトラッシュの犬の最終話みたいに天使が迎えにきた映像が見えた気がしたのを憶えているのだけれど。
 若い下野さんの演奏では、天使は迎えに来たんじゃなく、祝福しに来たのかな。一瞬だけ、ホールの空間がスッと薄暗くなって、天上が無限に高くなったような気がしたんだよね。

 フィナーレの興奮にたまらなくなって眼に飛び出した水の膜が見せた幻想なんだろうけどね。

 いやあ。
 得しちゃったよ。
 
 昔、大フィルさんは、東京公演のことを「討ち入り」って言っていたらしいけれど。
 多分、同じような緊張感と気合いで大阪に来た広島のオケの皆さん。
 凄い演奏、聴かせてもらいました。
 また、楽しみにしていますね。

 ただ、それだけのはなし。
2020年11月14日(土)
大阪フィル 第543回定期演奏会
尾高忠明
G.ウィリアムス 海のスケッチ
マーラー 交響曲 第5番

2020年11月15日(日)
‟讃” 平和を讃えて
広島交響楽団 第405回プレミアム定期演奏会 大阪公演
下野竜也/広島交響楽団 @シンフォニーホール
ベートーベン ピアノ協奏曲 第5番 皇帝
ブルックナー 交響曲 第4


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