山下洋輔スペシャル・ビッグバンド ジャズ週間その12014年12月20日


 それにしても、寒いね。

 まだ12月だって言うのに、大雪とか。

 もちろん、大阪では、雪の心配は新幹線が遅れるとかそんなことくらいなのだけれども、他の地域の皆さんは、大変なんだろうなあ。

 

 という訳で、冬のJAZZ週間がやってきたよ。

 あ、あくまで僕の中で、のことだけれどもね。

 

 その第一段は、これ。

 山下洋輔スペシャル・ビッグバンド。

 


「ジャズって言うのは、ジャズっていう音楽がある訳じゃなくてね。ジャズな人、っていうのがいるだけなんだよね」

 このごろ、ヨルタモリでタモリがしきりに言っているのだけれども、これ、オリジナルは山下洋輔なのかな? 今回のチラシにも(いや、次回のリサイタルのチラシかな?)書いてあったね。まあ、根は一緒なのだけれど。

 

 そう、山下洋輔といえば、タモリや、筒井康隆の一派、っていう印象が強くって。その流れで言えば、山下洋輔のビッグバンドは、パンジャスイングオーケストラ、であるべきなのだけれども。

 今回は、スペシャルビッグバンド。どういう音を聴かせてくれるんだろうね。

 

 会場は、兵庫県芸術文化センター。お久しぶりです、っていつ以来だろう。駅から近いのに、ショッピングモールの方に紛れてしまって、さんざん迷いながら直前に滑り込んだよ。

 ちょっと前目の、右寄りの席。

 プレイヤーよりも、スピーカーに近い席。

 

 この席が災い(?)したのか、それとも僕がジャズを聴くのが本当に久しぶりだからなのか。最初の曲、ロッキンインリズムは著と違和感があったんだよね。

 マイクを通した、ややキンキンした音が、視覚とは別の方向のスピーカーから聞こえてくる、っていう、違和感。

 ポピュラー音楽の生演奏ではあたり前なんだけれど、クラシックの新しい殿堂であるKOBELCOホールで聴く、ちょっとキンキンしたPAの音に、最初ちょっとあれ、って思ったんだ。

 すぐ、慣れたけどね。

 

 さっきパンジャと比べたけれど、このビッグバンドは、フリー寄りのパンジャとは全く違った方向性で。ビッグバンドの編成でクラシック音楽をやろう、っていうすごい試みをするバンドなんだね。

 

 ラプソディー・イン・ブルーは、まあ、分かりやすいよね。JAZZの曲だから。

 でも、オーケストラの多彩な楽器をフルに使ったオーケストレーションを、ビッグバンドの、シンプルな楽器群でどうやって再現するのかな、と思いながら聴いていたら。

 持ち替えでクラリネットとフルートが加わっただけの、ホントのビッグバンド編成で。これは、紛れもなくビッグバンド用に作られた、ラプソディ・イン・ブルー。

 山下洋輔や小曽根や、この前テレビで大西順子の(クラシック版)ラプソディインブルーをたくさん聴いてきたけれど、なんだろう。本当に、最初からこのために作られたんじゃないか、っていうくらいのピッタリ感。スコアに忠実に編曲している訳では決してないのだけれどもね。

 

 でも。

 ラプソディ・イン・ブルーは、分かりやすいよね。だって、元々ジャズの話法を使って作られて、ジャズの奏法で演奏される曲だからね。

 でも。

 つぎの曲。これはどうなんだろう。

 親しみやすいとは言え、バリバリのクラシック。アメリカに関係するとはいえ、ヨーロッパの文脈で作られた、曲。

 ドヴォルザークの、新世界から。

 しかも、全楽章。

 どんな編曲で、どんな演奏を、聴かせてくれるんだろう。

 

 もちろん、

 心配したのは曲が始まる前だけなんだけれどもね。

 

 最初の1フレーズで、ああ、心配ないや、って。これは、間違いなく新世界でありながら、間違いなく、JAZZ。

 中川英二郎の器用さに依存して、ホルンが活躍するこの曲を、薄さも感じさせずに良く編曲しているのだけれども。

 

 でも、聴いていてちょっとだけ感じたのは。

 クラシックの演奏家の、1フレーズの説得力って、半端じゃないんだな、って。

 遠き山に、陽が落ちて。

 の所かどうか忘れちゃったけれど、管楽器がソロで演奏する印象的なフレーズは、ジャズにしたってやっぱりソロで演奏されるのだけれども。

 その時の、唄い方とかね、フレーズの説得力。

 それは、やはりクラシックの演奏家のものなんだろうなあ。

 その分、ここぞという爆発力のメリハリは、オーケストラからは絶対に出てこないものなんだけどね。

 

 曲は、ピアノやいろいろなソロをちりばめながら進んでいくのだけれど。

 4楽章。クライマックスで。

 なんと信じられないことに。

 エリック宮城と、中川英二郎の掛け合い。今回はハイトーンというより、パラパララッパのエリックに、パラパラトロンボンで応酬する英二郎。随所にダブルタンギングで逆襲する英二郎に、循環ブレス括弧指は英二郎括弧閉じるの大技に出るエリック。いやあ、楽しかったなあ。

 

 結構忠実な編曲に、ソロが挟まるものだから、オリジナルより長くなるのはどうかと思うけど、でも、楽しいなあ。

 洋輔さんのパラパラピアノは今度のリサイタルでじっくり聴かせてもらおう、っと。

 

 ただ、それだけのはなし。

 

 山下洋輔スペシャル・ビッグバンド

 ラプソディ・イン・ブルー&新世界

 

 Rockin' in Rhythm

 Rhapsody In Blue

 Symphony No.9 From the new world ドヴォルザーク 松本治編曲

 

 山下洋輔スペシャル・ビッグバンド

 山下洋輔

 金子 健 Bass

 高橋信之介 Drums

 エリック宮城、佐々木史郎、木幡光邦、高橋龍一 Trumpets

 松本治(指揮)、中川英二郎、片岡雄三、山城純子 Trombones

 池田篤、米田裕也、川嶋哲郎、竹野昌邦、小池修 Saxophones