おかえり、ミッキー。 〜大フィル第482回定期演奏会〜 ― 2014年10月26日
秋の夜長だね。
今年はあんまり暑い夏の印象がなかったけれど。その分秋が長いのかな。
まあいいや。
涼しくなった大フィルさんに、ミッキーが、帰ってきたよ。
前回の、オオウエエイジのマラ6は、前に聴いたマラ6とほとんど同じ気持ちで聴いたんだよね。大植とマーラーと6番の組み合わせは、残念なことに、僕とはちょっと相性が良くないんだなあ、って。
まあ、それは良いとして。
相変わらず僕は、今日は大フィルさんの日だ、ということだけは把握しているけれど、誰が、なんの曲を振るか、についてはあんまりよく分かっていなかったんだよね。
今回は、なんの根拠もなく、ヘムルート・ヴィンシャーマンだと信じていたんだけれどもね。
ところが、会場に着いてみると。
なんと。
今日はミッキーの、大フィルさん復帰の日。まあ、少なくとも僕の持っているチケット的には、ミッキーは穴を開けた訳じゃないから、復帰、っていうのはどうか、とも思うけれど。
でも、せっかく大フィルさんの音楽監督、じゃなくって首席指揮者だっけ? になって、10年前に聴きそびれた、ショスタコの4番で派手な主席デビューを飾って。
それでいきなりがんで休養、って。
心配したんだぞ。こら。
ということで、今日は、ミッキー復帰記念の、チャイコフスキー。
いやあ。楽しみ。だけど、4番って、どういうんだったっけ。
プログラムは、オールロシアプロ。
ショスタコの小品から始まって、プロコのピアノコンチェルト。そしてチャイコフスキー。
ショスタコは、楽しかったのだけしかあんまり憶えていないのだけれども。
プロコのピアノは、面白かったよ。
普通のP協って、ピアノがソロ楽器で、オケはその伴奏なのだけれど、いかんせん一人のピアノと80人のオケなので、なかなかバランスが厳しかったりもするのだけれど。
この、プロコのp協は、いや、この演奏は、なのかもしれないけれど。そういう音作りではなくってね。
ピアノの延長線上にオケがいる、っていうか。
右手をバン、ってやるとバイオリンが、左手をバン、ってやるとチェロと弦バスがドン。っていう風に、ピアノの動くままにオケが動く。そうすると、出てくる音は、ピアノがかちっとした輪郭をつけて、オケが中身をみっしりと詰め込んだ、とっても気持ちのいい音。
もちろん、それをやるには、ほとんど完璧なアインザッツが求められるのだけれどもね。その、ほぼ完璧な演奏、愉しませてもらったよ。
会場で売ってたミッキーの新譜。エクストンなんだね。今回もマイクいっぱいの江碕さんセッティングなんだけれど、ピアノの中は録らないんだね。コンチェルトは録音対象じゃないのかな。ちょっと残念。
そして。
休憩はさんでチャイコフスキー。
ベルアップしたホルンのど派手なファンファーレに、トロンボンがつけて。
ラッパがそれをなぞった頃には、もう、訳分からなくなってね。
ホルンは、左の間接音として聞こえてくるのだけれど、そのあとに出てきたトロンボンは右側の直接音として、ボックス席すぐ後ろの真ん中の席に突き刺さってきて。そこにラッパまで加わったらもう、このでっかいフェスティバルホールを大フィルさんの音が満たせるか、っていういつもの聴き方なんかどうでも良くなって。
この、下世話な音楽に、たっぷりと身を浸したよ。
チャイコフスキーってね。
ハイドンが作って、モーツァルトがそこで無邪気に遊んだ交響曲って言うフォーマット。ベートーヴェンが、そこには世界さえも入れられる、っていうことを証明したんだ。その、世界さえも入れられるでっかい容れ物を、なんと、色恋にまつわる自分の感情だけを入れて、でっかく膨らませたんだ。
だから、チャイコフスキーの交響曲は、狂おしくて、劇的で、甘くて。
だから、チャイコフスキーの交響曲は、大好き、なんだよね。
その4番を、聴いているうちにね。その前のP協と合わせて。
なんて、しっかりしたアンサンブルなんだろう、って。
派手な曲をこけおどしじゃなく派手にやるには、アンサンブルの乱れがあっちゃいけないんだよね。楽しいなあ。こういう演奏。
劇的なクライマックスのあと。
何度目かのカーテンコールで、ミッキーのマイクパフォーマンスがあったよ。
「 ぼくらは、すげえ練習した。
ピアノも良かったけれど、ショスタコも良かったでしょ。
大阪と東京は分化が違うけれど、大阪の人なつっこさは好き。大フィルの音も、そういう風だと思うし、そうしていきたい。
ブルックナーだけじゃないんだぞ。
みんなの拍手が、とても励みになる。これから20年。拍手で支えて下さい。」
すげえ練習した。っていうのは、よく分かったよ。
おかえりなさい。ミッキー。井上道義。
楽しみにしてるよ。これから20年の活躍。
ただ、それだけのはなし。
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