中川英二郎の、ディキシーワンダーランド ― 2024年12月09日
ようやく、冬らしくなってきたね。12月に入って、ようやくダウンコート着たよ。
12月は、クラシックの世界は第九の演奏会のシーズンでね。オーケストラの定期演奏会とか、そういう普通の演奏会はシーズンオフ、なんだよね。
ベートーヴェンの交響曲第九番、通称第九は、合唱付きっていうサブタイトルもある様に、大編成の合唱がついているんだよね。日本にはプロの合唱団ってそんなにはないから、そこかしこで演奏している第九を歌っているのは、ほぼアマチュアの合唱団。アマチュアの合唱団には、それぞれのメンバーに家族やら学校、職場の友人とかがいて、その人たちがチケット買ってくれるから、かなりの聴衆が見込めるんだよね。だから、第九のコンサートは楽団さんにとってもドル箱、12月は稼ぎ時、っていうことみたいだね。
年末は第九、って日本だけの風習みたいだけど、誰が言い出したんだろう。土用の丑の日は鰻、っていった平賀源内くらい偉大なマーケターだよね。
それはいいのだけれど。
というわけで、クラシックのコンサートは(第九をのぞけば)あんまりなくて。でもクリスマスシーズンだし、っていうことで、西宮の兵庫県立芸術文化ホールでは、じゃあJAZZをやろう、っていうことで、いくつかのジャズコンサートを企画してくれたんだ。
そのうちの一つ、中川英二郎のディキシーワンダーランド、行ってきたよ。

中川英二郎君はね、君付けにしちゃうけど、僕がたぶん学生だったときにデビューした、トロンボンの神テクプレイヤー。デビュー作を録音したのがたぶん16歳のときだったんだけど、その中の一曲、SCRAMBLEっていうのがあってね。ぶっぱやのブルースなんだけど、あまりの速さにソロを取るラッパとかピアノとかがあっぷあっぷしている中で、最後にソロを取った英二郎の、ブレイクあとなんと1コーラスの無伴奏ソロ。
若さゆえのひけらかしもあったのだと思うのだけれど、同じトロンボンを吹いていた僕はア然として息が止まってしまって、2コーラス目にバンドが入ってきてはじめて息が止まっていたことに気がつく。そんなインパクトのあるデビューだったんだよね。
その後、なかなか生で聴く機会がなくって。オケや吹奏楽との共演を何回か聴いたくらいなのかな。あ、この前、Slide Monsterっていうトロンボン4人だけのバンドのライブを聴いたな。こんど、PACで中川君作曲のクラシック、演るんだよね。
というわけで、中川英二郎のディキシーワンダーランド、大人の部、聴いてきました。
大人の部、っていうのはね、同じ日の昼から、0歳からのジャズ、っていうことでことどもの部があったからね。
兵庫県立芸術文化センターには、大中小のホールがあって、僕がいつも行くのはオーケストラとかの演奏会をする大ホール。中ホールはオーケストラピットがある本格的な演劇用のホールで、チケット取ったけど行きそびれてしまった宮沢りえちゃんのお芝居とかもここでやっていたよね。
そして、小ホールは、今回初めて入ったのだけれど。すり鉢状の立派なホール。すり鉢の下にこじんまりとしたステージがあって、全方位階段状に客席が10段くらいある。2,300人くらいは入るのかな。
僕の席は、一番左の、一列目。
小さなステージにデンと置かれたグランドピアノの背中越しに指がよく見える、そんな席。正面まで廻って、どんなセッティングになっているか確かめてみたら、ピアノの他には椅子が一つとスタンドマイクが二つ。返しのモニタはあるけど、客用のスピーカーはほぼなくて。
あれ、タイコもない。今日どんな編成なんだっけ、ってパンフを見てみると、お父ちゃんラッパと英二郎君の他は、ピアノとバンジョーのみ。なるほど、ディキシー。
っていうわけで、演奏開始。
マイクスタンドが二つあったけど、それはMCと歌用のマイクで、演奏はPAなしの生音。僕の席からは後ろ姿を観ながらの反響音だったのがちょっと惜しかったけど、英二郎のトロンボンと、82歳のおとーちゃんラッパの生音、いいなあ。
僕のイメージでは英二郎君はジャズの人、だったのだけれど、満州のオケの主席チェロ(ビオラだったっけ?)を祖父に持ち、父親とその兄弟はディキシーのミュージシャン、っていう音楽一家。なのでディキシーがルーツなんだね。
僕がジャズを聴き始めたのは、モダンジャズっていう1950年代に盛んだった音楽からだったから、1920年代くらいの匂いのするディキシーランドジャズは、あんまり守備範囲ではなくって。シーデキっていってちょっと遠目で見てたんだよね。
それに加えて、全てのジャズをお芸術にしてしまおうとするウィントンってやつが、神父さんの説教入りの30分もある壮大な曲の入ったシーデキのアルバムを出したりして、結局ディキシーってナンなんだ、って分からなくなっちゃったこともあり。
ディキシーとはナンだ、それは”サッチモ”ルイアームストロングだ、っていう単純なことが分かるまでなんか寄り道しちゃったよね。
というわけで、演奏はね。
もう、これは、中川喜弘さんの勝ちだね。
金管楽器は歳取ったら吹けない、と思ってたんだけど、ごめんなさい。82歳、あっぱれ。歌もいいね。踏んできた場数が違うな、って思わせる脱力感と伝わる楽しさ。ジャズってこういうものだよね。
あと、バンジョー。ラプソディーインブルーをソロで演奏したのだけれど。ソロパートをバンジョーで演奏したんじゃないよ。オケも何も含めて全部をバンジョー一本で演奏、ね。これすげー。ピアノ越しなんで右手の動きとか見れなかったんだけど、ホントに二本の手で弾いてた?
英二郎君のテクはクラシックの曲で堪能させてくれたし、タイガーラグとセイントでホンモノのデキシーも聴かせてくれたし、お隣に座った品のいいオネエサマと、「楽しい時間でした」といって帰途についたよ。
ああ、楽しかった。

そうそう、ディキシーランドジャズは2拍子が基本だから、手拍子は1,3拍に入るのが正しいのかな、と思ってたけど、神戸の人たちはジャズの素養があるのか、2,4拍に入るんだよね。
それが、アンコールの聖者の行進だけは、自然と1,3拍(2拍子だから1,2拍なのか)になったんだよね。フシギ、というかちょっと感動してしまいました。
あらためて、
あー、楽しかった。
ただ、それだけのはなし。