ウィントンの、リンカーンセンターオーケストラ20262026年03月23日

 ウィントンの、コンサートに行って来たよ。

 JAZZ AT LINCOLN CENTER ORCHESTRA。


 ウィントン・マルサリスっていう、稀代のトランペッターがいてね。90年くらいには既に新進気鋭ながらジャズの中心にいたようなヒトで。マイルス・ディビスに正面から喧嘩売ったり、計算され尽くした正確無比なアドリブは冷たいっていわれたり、突然ディキシーにいって帰ってこなかったり。

 これからどんな活躍をしてくれるんだろう、って期待が膨らんでいるところで、1992年にJAZZ AT LINCOLN CENTER ORCHESTRAの音楽監督になったんだよね。


 このオーケストラ(ジャズではビッグバンドのことをオーケストラって言うんだよ)は、当時の僕の認識では、ニューヨークの、音楽の中心に居を構える、ジャズというゲージツを保存し、啓蒙するためのハウスオーケストラ、というもので。

 ジャズは芸術であり、エリントンは世界最大の音楽家だ、っていうウィントンには天職だろうけれど、ジャズは娯楽であり、一見冷たそうなウィントンから(わりとすぐに)こぼれ落ちる情熱の欠片が大好き、という僕には、なかなか聴く機会が、ライブであれレコードであれ、喪われそうなことが残念だったんだよね。


 だから、僕が生で見たウィントンは、マウントフジジャズフェスティバルでの、自身のバンドと、、夜のジャムセッションでのラシェル・フェレルとの饗宴や、ディジー・ガレスピービッグバンドへの飛び入りのマンテカなど、いろんなバンドへの飛び入り参加。

 そのあとは、ピットインでのエルビン・ジョーンズとの至上の愛ライブ、いくつかのホールでのコンサート、くらいなのかな。シンフォニーホールで横から聴いたのって、セプテットだったっけ? 

 2,3年前に、オクテットで聴いたのが、だから何十年ぶり、とかいう感じだったのかな。ビッグバンドは、はじめてなんだよね、今回が。


 あのウィントンが、若くして男子一生の仕事と定めたリンカーンセンターオーケストラ。どんな演奏してくれるんだろうね。


 東京からツアーで廻ってきていたから、FaceBookとかにはツアーの写真や、エリック宮城さんの感想とかもアップされていて。それは楽しみをかき立てるだけれど、自分の耳で聴くのが一番の楽しみだよね。


 チケットは、一般発売日の朝に取ったにもかかわらず、2階席三列目の端の方で。当然会場は超満員。そんなに安いチケットではないから、もう少し席選びに余裕があると思ってたのだけれどもね。客層は、ロマンスグレーの育ちが良さそうなご夫婦、奥様方と、ジャズ演ってます、演ってましたの人たち。7:3くらいなのかな。


 ステージには、こぢんまりと見えるセッティング。4トランペット、3トロンボーン、5リード、3リズムの15人。


 時間になって、真っ先に出てくるウィントン、トランペットの端の席に座って。フリーで吹き始めた。

 7枚組のライブ盤、ヴィレッジヴァンガードだっけ、あの頃に良く聴かれた、アップテンポで、無伴奏のソロ。これぞウィントン。

 いつの間にか、バンドのメンバーも入ってきて、演奏にリズムが入って、そしてトゥッティ。曲は、セロニアス・モンクのFour in One。


 何じゃこりゃ。


 アップテンポのビバップ曲だから、難しいフレーズが続くのだけれど、トロンボンも含めてのフレーズ、そしてびたりと決まる「ッカッ」っていうドゥ。

 15人で出しているとは思えない、シャープな音。音の重なりによるうねりとか、そういうのではなくって、コンボでやっているような、キレキレのフレーズにハーモニーがついている、そんな感じ。


 なんか、ビッグバンドっていうもののイメージをひっくり返されたな。とはいえ、生で聴いた常設のビッグバンドって、うたばんのアロージャズオーケストラと、アマチュアの宇治金くらいか。あんまり生で聴く機会がないものね。


 アンサンブルはキメキメで、各人のソロは、後ろからウィントンの目が光っている、と思うからなのか、勢いに任せたものでは無く、よく考えられた、無駄な音のない知的な(?)ソロ。

 ピアノは僕の好きなパラパラ系。

 いやあ、しあわせだなあ。


 短めの休憩を挟んで、2部はじまりは、ゲストピアニストの角野隼斗。この人もパラパラ系で、最初のスウィングの曲はかっこよかった。


 いやあ、しあわせだなあ。

 と浸りながら、曲と時間は過ぎていって、はっと気がついたんだよね。


 あれ、ウィントン、最初の曲しかソロ吹いてない。


 そう、バンマスのウィントンは、MCはやるけれど、各曲でソロを、ということは全くなく、一人のトランペッターとして演奏していたんだよね。

 ビッグバンドがすごすぎてあんまり思わなかったけど、やっぱりウィントンのソロ、聴きたいなあ。


 というところで、最後の曲ではウィントンのソロもたっぷり聴けて。

 アンコールではセプテット編成でディキシーものを演奏してくれて。この曲が一番客席盛り上がってたから、お客さんはウィントンをきちんと知っている人たちなんだね。すごいな。


 男子一生の仕事として、リンカーンセンターオーケストラを選んだウィントン。コンボで新しいジャズを作っていくのを見ることが出来なかったのは淋しいけれど、芸術としてのジャズをこうやって聴かせてくれて、ありがとう。


 今度は、20年も待たせないでね。


 ただ、それだけのはなし。

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