尾高さんの、最後の?、ベートーヴェンチクルス I ― 2025年10月11日
尾高さんの、今年の特別演奏会は、ベートーヴェンのチクルス。
大フィルは、創設者の朝比奈さんが、「指揮者たるもの、自分のオケを持ったらベートーヴェンを全曲演奏すべし」っていう考えを持っていたからなのかどうか、指揮者が変わるたびにベートーヴェン交響曲の全曲を振ることが多いよね。
朝比奈さんの晩年、定期と企画演奏会、それに年末の第九を組み合わせた1年間で全曲演奏。オオウエエイジのチクルスは、一演奏会で3曲の交響曲っていうハードな企画だったね。
定期でのドイツ物を徹底的に避けた井上道義(音楽監督、っていうポジションではなかったよね、多分)はやらなかったけど、尾高さんは、就任後早速、ベートーヴェンチクルスを振ったね。7年前になるのかな。
そして、今回。尾高さんが大フィルと2度目のチクルス。
9年(?)かけて、ブルックナーの交響曲全曲をレコーディングして、それが完成した翌年に二度目のベートーヴェン、っていうと、どうしても大フィル音楽監督としての集大成、とか思ってしまうのだけれど、まだそういうニュースは聞こえてこないよね。
というわけで、尾高さんのベートーヴェン、26年前に朝比奈さんのベートーヴェンを聴いた(近くの)席、シンフォニーホール2階の右側最前列から、聴かせてもらいました。
前回の尾高さんのベートーヴェン、あんまり良く覚えていないんだよね。その頃出張とか多くって、シリーズでとったチケットもずいぶん無駄にしてしまう事があって。全階のシリーズも多分2回か3回しか聴けてないんだよね。Blogを見てみても、記録も残ってないし。
その前の、オオウエエイジのチクルスは印象に残っていて。交響曲を順番に3曲ずつ、演奏するチクルスだったから、1,2,3番、4,5,6番って2回の演奏会で進んでったんだよね。9番はさすがに独立したから、7,8番と9番の残り2回で完結したのだけれど。
この時は、1番を聴いて、なんかとんでもないことが起こっている、ってぞわぞわして、そして、2番が神曲、神演奏に聴こえたんだよね。3番はさすがに体力的にしんどかった記憶があるけれど。ベートーヴェンと云えば合唱、運命、田園、英雄などのタイトルがついている交響曲が人気あるけれど、1,2番って云う初期の、地味(?)な交響曲も棄てがたい、って思ったんだよね。
まあいいや、今回の尾高さん、だよね。
2階席から見る今回の編成は、こぢんまりとしていてね。初期の交響曲だから、トロンボンは編成に入っていなくって、金管はトランペット2本とホルン2本、木管だってクラリネット、ファゴット、フルート、ダブルリードそれぞれ二人ずつ。それに大フィルさんから見たら十分小編成の弦楽器とティンパニ。2階席から見ると、それがステージ中央にこぢんまりと乗っかっていて。
そして、序曲。プロメテウスの創造。
ベートーヴェンの曲を、ひと言で云うとね、「ゲージツは、爆発だ」。
破裂音が多いんだよね。破裂音、っていうのか、Tuttiでみんなで短音をフォルテシモでドカン、っていうやつ。英雄の冒頭のジャン、、、ジャン、、、とか、運命のジャジャジャジャーンもその変形だし。今回の曲も含めて、序曲のはじまりにもそういうの多いよね。
俺の曲が始まるぞ、みんなこっち向いて集中しろ。自己顕示欲の強い(といわれている)ベートーヴェンさんだから、この位のことは考えていたんだろうと思うんだよね。
それはものすごく効果的で。
短音の連発にこもる指揮者と演奏者の間の緊張感っていうのかな。見てると予備動作もあんまりない尾高さんの手から、エッヂの効いたTuttiが繰り出されていく。ああ、やっぱりベートーヴェンは爆発なんだ。
多分1番の感想と混ざり合っているけれど。
爆発のあとの響きが、なんかブラームス的なのがちょっと気になってるんだよね。ブラームスを生でも録音でもいいから聞くときに良く感じる、中音域がこもって、音域のレンジが小さいんじゃないか、っていう音。AMラジオで聴いているみたいな、ね。音域に枠をはめて四角く切り取っているみたいだから、僕は箱庭的な音、って呼んでいるのだけれどもね。
1番を聞いていると、クラリネットとかの木管のフレーズにホルンが被さっていて。その音色が本当に見事にひとつの音に溶けあっていて別々には聴こえないんだけど、そこで高音域がスポイルされてるのかなあ。とか、弦のTuttiにティンパニが入る時に、ティンパニが弦の少なさに遠慮して小さく叩くとそういう箱庭的な音になるのかな、とかいろいろ考えていたんだけど、よく分からないや。
しかし、この1番、立派だね。
尾高さんの振る大フィルさんの音、中身が詰まった音、っていうことで、みっしりっていう言い方をよくしてきたのだけれど、そのみっしりさがすごく感じられて。いいなあ。
ベートーヴェンの中では大曲ではないし、有名な人気曲、っていうわけではないのだけれど、でも、ベートーヴェンそのものだよね。『鷹の爪』って云ったのは朝比奈さんだっけ? 全体像は見えていないけれど、確かにベートーヴェンの一部分であってそれだけで既に秀でている、っていう意味だと思うけれど、その通りだね。あ、鷹の爪って唐辛子じゃないよ。
休憩あとの2番は、弦楽器が少し増えた。
オオウエエイジのときに1番以上のインパクトを感じて神曲認定した曲だから、期待したのだけれどもね。
今回は、1番の方がよかったなあ。
なんか、編成を大きくした分、タイトさが無くなっちゃったような気がするんだよね。
ホルンが高橋さんに変わったおかげで、木管とのSoliでホルンが(見た目的にも)勝ってしまう感じもするし。
まあ、でも。
ベートーヴェン楽しい。
原点にして、頂点。
尾高ベートーヴェンの頂点、期待してるよ。年末じゃない第九って、なんか特別感あってそれもいいよね。
ただ、それだけのはなし。
2025年9月10日(水)
ザ・シンフォニーホール特別演奏会
ベートーヴェン・チクルス~原点にして頂点~Ⅰ
指揮:尾高忠明
大阪フィルハーモニー交響楽団
ベートーヴェン
バレエ音楽「プロメテウスの創造物」op.43 序曲
交響曲 第1番 ハ長調 op.21
交響曲 第2番 ニ長調 op.36