23年 新春の3連発2023年02月02日

 せっかく復帰した山遊びが、合宿やらツアーやらで開店休業状態で。

 だからという訳でもないのだけれど、いろんな演奏会に行ってるんだ。


 まずは、大フィルさんの定期。

 池辺晋一郎って言う日本の作曲家の交響曲。10番って言うから、もう10曲も作っているんだね。東日本大震災に祈りを捧げた曲。

 そして、ブルックナーの7番。

 もちろん、尾高さんだからね。って言うか。大フィルさんはよく鳴って、ブルックナーの音楽はとても感動的なのだけれど。

 それでも、「いつもみたいに」良かった、と思うのは、なんか慣れちゃったのかなあ。

 数日経つと、全然何があったか思い出せないんだよね。

 反省。


 お次は、多分僕ははじめてだと思うけれど。シオンのコンサートに行って来たよ。

 Osaka Shion Wind Orchestraって言うのが正式名称なのだけれど。大阪市音楽団から、民営化されてShion担ったプロの吹奏楽団。

 一回、中川英二郎さんがソリストになった吹奏楽の演奏会に行ったけれど、あれはShionだったのかな? 

 まあいいや。


 今回は、ソリストとかではなくて、プログラムに惹かれたんだよね。Shion。

 オール・ホルスト・プログラム。

 第一、第二組曲に、惑星全曲。その他諸々。

 どんなやねん、って思うよね。

 

 ホルストは、クラシックの作曲家としては珍しく、吹奏楽のための曲も作曲しているんだよね。あるいは、珍しく、吹奏楽の曲がメジャーに演奏されている。

 吹奏楽のための第一、第二組曲って、僕が吹奏楽をやっていた頃の、結構な人気曲。僕は演奏したことは(少なくとも本番では)ないと思うのだけれど、それでも歌えちゃうくらいの人気曲。

 そして、惑星は、言わずと知れた、こちらはクラシックの人気曲。ジュピターだけ知っている、っていう人も多いと思うけれど。


 久しぶりに聴く吹奏楽はね。

 ああ、管楽器ってデジタルなんだ、って。

 僕が演奏していたトロンボンはおいといて、管楽器って基本的には半音階を指でキーを押さえたりピストンを押さえたりで区別するよね。弦楽器はフレッドのない弦の上を指がすべって音を変えていくんだけど。

 オーケストラではヴァイオリンがいる位置に、吹奏楽ではクラリネットが大勢いて、ヴァイオリンが奏でるであろうパートを奏でているのだけれど。

 それが、オーケストラの響きに慣れた耳で聴くと、パカパカするんだよね。パカパカって、なんだろう、って思って良く聴くと、ああ、キーの開閉で半音が変わるデジタルの音なんだ、て。

 それがいい、悪いは置いておいてね。


 肝心の演奏は。

 組曲や他の曲は、吹奏楽のために作曲されたものだから、これが原曲の響き、なんだよね。オーケストラの響きとはちょっと違うけれど、でも歯切れのいい、ちょっと速めの演奏を聴いていると、だんだんと違和感もなくなって。

 休憩を挟んで惑星の頃には、すっかり馴染んじゃったよ。

 惑星は、もちろん木星がメジャーなのだけれど、それぞれ耳になじみがあって、何より聴いているのが楽しい。

 飽きない速さで曲が進んで、その度に曲調が変わるから、どんどん聴いて行けて、あれ、これって吹奏楽がオリジナル? とか思いながら聴いていたのだけれど。

 最後の、海王星だっけ?  女声コーラスが袖から入るのも、すごくいい効果で。

 吹奏楽、楽しい。


 間髪入れず、つぎの日も、同じシンフォニーホールで、大フィルさんの4大オケ。

 運命と、英雄の生涯。


 オオウエエイジの時代、シンフォニーホールで定期を聴いていたときと同じ席で聴いたのだけれど、今の大フィルさんはフェスティバルホールで鍛えられて音が大きいのか、シンフォニーではちょっとハレーション気味なのかな。

 どこを取ってもよく鳴ってる、というべきなのだろうけれど。


 演奏が終わって、ホール下りのエレベーターで、どこぞのオケの常連さんらしき方が、「英雄の生涯良かったけど、前半のベートーヴェンのノリを引きずった感じやったわ。良くも悪くも大フィルさんやなあ」って。

 ああ、それはその通りだなあ、って思ったよ。


 ベートーヴェンもシュトラウスも、同じように会場ごと鳴らし切る大フィルさん。

 それはやっぱり、良くも悪くも大フィルさん、なんだよね。

 嫌いじゃないけれど、毎週聴くのはちょっとつらいかな。それは、僕が歳を取っただけ、なのだろうと思うけれど。


 ただ、それだけのはなし。



大フィルさんの、激アツ・巨人2022年12月18日


 なんか、秋のコンサート週間になっていて。

 昨日は大フィルさんの定期で。今日はNDRのコンサートなのだけれど。

 

 昨日の、巨人。

 すごかったんだよ。

 マーラーはあんまり好んで聴く方ではなくって、特に1番は交響曲としてどうよ、と思ったりもしているのだけれど。

 それでも、演奏効果は抜群で。

 昨日みたい歯切れの良い、しかも大編成を鳴らし切って、ソロもそれぞれものすごい、そういう演奏を聴くと、楽しいんだよね。

 袖で吹くラッパ隊、ベルアップしたり立って演奏したり大忙しのホルン。やっぱりきれいな音色のトロンボン。これらの金管に加えて。

 マーラーの効果音担当、なのか分からないけれど、効果音的なフレーズを、チャーイングに吹ききるクラリネットや、ソロでフェスを満たす弦バスのトップとか。

 なんなんだろうね。


 外国人の指揮者だから、なのかよく分からないのだけれど。

 デュトワのときもそう感じたのだけれど、こういう、フレーズの端々、ノリが「違う」と思うのって、外国人指揮者の時が多いんだよね。

 もちろん、脳内補正である可能性が高いのだけれども。

 でも、脳内補正でも良くて。

 

 そういう演奏にまた逢えるようになったのは、嬉しいよね。

 それにしても、あの大編成をフルに鳴らして、濁りがない大フィルさんって、すごいな。


 ただ、それだけのはなし。


フェニーチェ堺の、ベートーヴェン by NDR2022年12月18日

 なんだかんだで、行く機会が多いんだよね。フェニーチェ堺。

 大阪の端っこに住んでいる僕にとって、車ですぐに行けて、リーズナブルな駐車場もあって。そして、フェスやシンフォニーホールに来てくれない魅力的な演奏家達が来てくれる、というところで、いずみホールも入れると、4つめのチェックすべきホール、ということになるんだね。


 今回は、ちょっと前だけれど。

 NDR 北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団の、ベートーヴェンプロ。


 NDRは、朝比奈のじいさんが何枚か録音を残していたり、「演奏技術ではベルリンフィルより上」みたいなことを言っていた(と朧に記憶している)り、オオウエエイジが常任になっていたことがあったり、で勝手に親近感が湧いているんだよね。派手じゃないけど渋そう、って。

 何より、本場のベートーヴェン、ってあんまり聴く機会がないんだよね。ウィーンやベルリンから来るなら、もう少し大きかったり煌びやかだったり、というものを求めてしまう貧乏性、なもので。..


 という訳で、聴いてきたよ。NDR。

 

 ベートーヴェンも、3番だと、まだトロンボンが入らないんだよね。だからなのか、広いとは言えないフェニーチェ堺のステージにも、きつきつではなく楽々入る大きさの編成で。ロンドンフィルとは大違いだね。

 

 そして、ゲルハルト・オピッツのピアノで、皇帝。

 その前の日に、大フィルさんの定期でミシェル・ダルベルトというヒトのピアノでモーツァルトの狂想曲を聴いたのだけれど、これは、あんまり印象に残らなかったんだよね。ピアノがあんまり前に出てこないな、って言うくらいで。


 それが、オピッツさんの皇帝は。

 なんだろう、やさしいんだよね。音が丸っこくて。もうひとつきほど前の演奏会だから、記憶の方も細部がとれて丸っこくなっているのだけれど、なんかしあわせな時間だな、と思ったのは良く覚えているよ。

 その前のエグモント序曲では、爆発するベートーヴェンを堪能したのだけれどもね。


 そして、英雄。

 なんていうんだろうね。この英雄は、生々しい。席が前の方だったからか、編成が小さくて音の分離が良かったからか、普段は響きに入ってしまって聞こえてこない、筋肉の筋、みたいなものが見えてくるような演奏で。だからといってグロテスクではなく。弦楽器も、大フィルさんの大編成に比べると少ないんだけれど、一人一人の音が合わさっているんだな、って言うのがよく分かるような、そんな演奏。

 なんかしあわせな演奏会だったな。


 アンコール曲は、「羊飼いの娘の踊り」って言っていたけれど、誰の曲か分からなかったら、フェニーチェのホームページに乗ってた。ヒューゴ・アルヴェエーンの、組曲「山の王」より、という事でした。楽しい曲だったね。


 やっぱり、一月前の演奏会はキジにするほど思い出せないや、ごめんなさい。


 ただ、それだけのはなし。



ひさびさのビッグバンド 狹間美帆@フェニーチェ堺2022年11月20日

 多分、数年前にフェニーチェ堺にJazzを聴きに行ったときだと思うのだけれども。

 狹間美帆という名前をものすごくインプットされたんだよね。

 その時は、山下洋輔とか渡辺香津美とか、ヒノテルとかを聴きに行っていて、北村英次さんとかは名前を知っている程度だったし、唯一の若手であった狹間美帆さんは、山下洋輔がすごい人がいる、といっていたのが印象に残っただけで、演奏も、聴いたか聴いていないかも良く覚えていないくらいだったのだけれども。

 でも、山下洋輔のおかげか、名前はインプットされたんだよね。僕の中に。


 そんなこんなで、数年後のコロナ禍で、僕はフェニーチェ堺に結構通うようになって。

 そこでまた大々的に宣伝されていたのが狹間美帆。今度はデンマークのビッグバンドと来るらしい。

 ビッグバンドジャズって、アロージャズくらいしかあんまり聴く機会がないモンなあ、と思って、行ってきたよ。

 

 狹間美帆&デンマークラジオ・ビッグバンド


 デンマークのジャズって、全然知らなくって、デューク・ジョーダンのアルバムにフライトトゥデンマーク、って言うのがあるからデンマーク録音なんだろうなあ、っていうくらいしか思い浮かばないのだけれども。

 結構アメリカのミュージシャンが移住したりしているみたいだね。ビッグバンドの神様みたいなサド・ジョーンズも、晩年は移住して、お墓もあるし、通りの名前にもなっている、って言うこと。

 このビッグバンドは、国営のラジオビッグバンドという事で、多分エリートバンドなのだろうと思うけれど。2019年から狹間さんが首席指揮者を任されている、とのこと。


 バンドはね、ラッパが5人の5、4,4にギターの入った4リズムのオーソドックスな編成で。

 バンドメンバーが席に着いたあと、搭乗してきた狹間美帆さんは、なんの楽器も持っていなくて、あ、指揮者なんだ。

 ビックバンドって、カウント・ベイシーとかデューク・エリントンとか、トシコ・アキヨシもそうだけれど、ピアノがリードを取るか、ベニー・グッドマンとかグレン・ミラーとか、管楽器奏者がリードを取るかのイメージが強くって。

 僕がむかし参加していたビッグバンドも、指揮者っていうヒトはいなかったから、指揮者がどう言うことをするのか、よく分からないのだけれど。

 でも、首席指揮者、というポジションがある、という事は必要な役割、なんだよね。


 オーソドックスな編成の割に、最初のオリジナル曲とか、次にやったsing sing singとか、ちょっとリズムをひねった曲が続いて。

 ビッグバンドは踊りのための音楽だと思って聴いていると、ちょっと無条件で気持ちいい、って言う感じではないんだよね。

 もちろん、ビッグバンドはダンスフロアのバンドとして発展したけれど、それだけじゃないんだぞ、という意気込みは分かるし、そういうのもいいと思うんだけれどもね。


 ビッグバンドが奏でているのって、ジャズなんだろうか、っていろいろ考えながら聴いちゃったよ。

 

 僕は、ビッグバンドは演奏する方から入ったから、それはジャズだって、信じて疑ったことはないのだけれど。

 でも、ジャズが好きっていう人が、「グレン・ミラー最高」とかいっていると、あれがジャズだと思っているのか、と内心思ったりして。

 だったら、聞く立場からジャズであるビッグバンドってなんだ、といったら、ベイシー、サドメル、ジャコのバンドとかかな。ジャコのバンドはテーマとリフが大編成ナだけで、基本はアドリブを聴かせるバンドだからわかりやすいけれど、ベイシーがジャズでグレンミラーがジャズじゃない、ってどういうことだろう、とかいろんな事を考えながら聴いていると。


 やっぱりビートに乗った切れのいい音楽は、ジャズだよね。いろんな音色を出そうとしてみたり、リズムを変えてお芸術にしようとしているのは、そういう意味ではジャズじゃない、って僕は感じるのかな。

 ウイントン・マルサリスが率いるリンカーン・センターのビッグバンドも、そういう意味ではお芸術だよね。

 じゃあ、エリントンは、といわれると困るのだけれど、あれは、ジャズだよね。


 あ、だからってデンマークのビッグバンドがどう、というのではなくてね。

 狹間美帆さんは、というか歴代の首席指揮者の役割は、オリジナルの新曲を創る、という事らしく、コンサートも大半は狹間美帆&デンマークラジオ・ビッグバンドの新アルバムの曲と、過去の首席指揮者の曲だったし。

 新曲を堂々とひっさげて、それを中心にしたコンサート、しかも外国にも遠征が出来るって、すごい事だよね。


 という事で、久しぶりに聴くビッグバンドの音色、堪能しました。

 ありがとね。


 ただ、それだけのはなし



山下達郎 at 神戸国際2022年11月16日


 多分、みんな知っているようで、本当は信じていないのだと思うのだけれども。

 山下達郎って、本当にいるんだよ。

 活きていて、動いて、唄ったりもする。

 たぶん、この眼で見ないと信じられないんだと思うけれども、ね。


 僕は、熱心な山下達郎ファン、という訳では全くなくて。

 リアルタイムに聴いたアルバムは、On The Street Cornerの最初のやつだけで。それだってレンタルレコードをダビングしたカセットテープ。

 だから、山下達郎のイメージといったら、どっちかって云うとオタクの総本山、なんだよね。だって、無伴奏のアカペラdoo wopアルバムを、一人で創ってんだからね。オタクだよね。

 毎年聴く超ロングセラー、クリスマスイブのCM15秒だけでは、Popの権化、って分からないよね。竹内まりやのライブアルバムに、達郎がコーラスで入ってた曲があったから、歌は超絶上手い、って言うのは知ってたんだけどね。


 歌謡曲とJazzしか聴かなかった学生時代には既に大御所扱いだったから、そこから接点が生まれるとはあんまり考えていなかったんだけど。

 家人に、4枚組のベスト盤を借りてって頼まれて、そこから車の中でたまにかかるようになって。

 今回の新しいアルバムのプロモーションでテレビにも(声だけ)でたりして、達郎について語る人たちの言葉を聞くことが多くなって。

 でも、新しいアルバムはサブスクでは聴けないから、結局買っちゃったりして。そこにおまけでついていたライブ音源がすごかったりして。


 そんなときに、ダメ元で抽選に応募してみたら、なんと当たっちゃったんだよね。神戸国際。

 というわけで、達郎のライブ、初体験。


 ホールのコンサートって、このごろ太田裕美とか高橋真梨子とか、薬師丸ひろ子とかにいっても、あんまり凝ったセットって見かけないし、それで全然気にならないから、山下さんもそうだとばっかり思っていたら、結構作り込んであるセット。ちょっとレトロなどこぞのダウンタウン。神戸国際の大きなステージだと少し横のスペースがあまってて、ああ、市民会館とか津々浦々廻る用のセットなんだ、ってなんか感激。

 チケット転売防止のために、顔写真入りのIDとの照合があって入場に時間がかかる、とか脅されて早めに行ったけれど、ほとんど並ぶこともなくスムースに入場。だから灯のついていないセットをぼーっと見てたのだけれども。

 隣の家人はずっとテンション高くて、待ち時間を愉しんでいたみたいだけどね。


 そして、時間通りに始まったライブ。


 さっき言ったように、決して熱心な聴き手とは言えない僕でも、チケット取れてからは、Sugar Babe含めていくつかのアルバムを聴いて。

 そんな中で、自分なりの山下達郎像を造ってきたんだけどね。

 それは、歌とコーラスとリズムのエンジニア、みたいな感じなのだけれど。


 ところが、一曲目で、それだけじゃないぞ、って思い知らされたんだよね。

 ああ、この人はギタリストなんだ、って。

 それも、めちゃめちゃ鋭いカッティングのギター。

 なんて曲か分からないけれど、「夜と往け」ってやつと、つぎの「あまく危険な香り」。のっけの2曲のイントロのカッティング、かっこいいなあ。

 ギターのつぎは唄かな。歌詞の明瞭に分かる唄は、全て原曲キーを保っている声もそうだけど、やっぱりリズム感なんだよね。僕が心地よく感じるのって。

 もうなんやら刺激が多すぎて、なんやら分からんけど。一人アカペラや、一人ノーマイクのシャウトやら、曲のたびに変わるギターやら、難波弘之さんががんばっているツインキーボードやら。

 「今までで一番受けた」カバー曲で大滝詠一やら、自作の近藤真彦やら。


 ヒットチャートを常に賑わした、って言う訳ではないし、武道館はやらん、っていうから多分フェストか神戸国際が一番大きいくらいのホールを丹念に廻っているのだろうし。テレビに出ず顔は出さないし。


 山下達郎は、一体なにになりたいんだろう。

 すごく愉しみながら、ずっと考えていたよ。


 自分が出ていく事に興味があるのか、自分くらい歌えるヒトが他にいないから自分で歌っているのか。

 Popの真ん中に位置する音を創りながら、流行歌として消費することに、多分最初から真っ向からあらがって。

 Popといわれている音楽の中で、質のいいものを創りたかったのか、作り続けたかったのか。


 結論は、PopStarではなくて、職人さんなんだなあ、ってこと。多分、みんな百も承知なのだと思うけれど。

 

 すごく良いものを聴いたよ。

 来年からはライブ盤が何回かに分けて出るらしいから、それを聴きながら、つぎの抽選に当たる幸運をまた楽しみにしよう、っと。


 あ、過去盤のアナログも順次出るらしいから、それも、かな。


 ただ、それだけのはなし。