ミッキーの、ブル8 〜井上道義/大フィル 大ブルックナー展〜 ― 2015年01月25日
ミッキー、愛してるよ。
唐突にごめんなさい。
でも。そう叫びたくなるコンサートに、出逢ったよ。
来年度の、大フィル定期のプログラムが発表されてね。
前のコンサートで、大フィルはブルックナーだけじゃないんだぞ、ってマイクパフォーマンスしていた通り、ブルックナーはあえて避けた、そんなプログラムが並んでた。
それはそれで良いけれど、やっぱりブルックナーも聴きたいなあ。そんな僕みたいな人のために、ミッキーと大フィルさんが用意してくれたコンサート。
1年かけて、西宮のKOBELCOホールでの、大ブルックナー展。
一回目の、8番。嫁と二人で、行ってきたよ。
KOBELCOホールは、兵庫県立芸術文化センターにある大ホールでね。オーケストラが4つもある大阪にこんなに近いのに、独自のオケなんか持っちゃって、大丈夫なんだろうか、なんて10年前の杞憂を見事吹き飛ばして、集客力抜群の、すごいオケと、そのホールとして、見事に地元に根付いたね。
佐渡裕の献身的な貢献と、題名のない音楽会が大きいが大きいのだろうけれど。すごいことだよね。
その、芸術文化センター管弦楽団の地元に、今回はアウェーで乗り込んだ形の大フィルさん。フェストも、シンフォニーともまた違うこのホールで、どういう音を聴かせてくれるんだろうね。楽しみ楽しみ。
もちろんブルックナーだからね。アウェーだって超満員。
このホール、そんなにステージは大きくないのかな。大編成のオーケストラでステージ上は黒山の人だかり。そりゃあ、そうだよね。ブルックナーだもんね。8番だもんね。
僕にとって、8番って、いつ以来だろう。朝比奈さんで2回聴いて、大植英次でも2回聴いて。あとあったかなあ。
朝比奈さんのときは、まだブルックナーを聴き始めたばっかりで。あまりの曲の大きさにあっぷあっぷして終わっちゃったのだけ憶えていて。
大植英次の時には、朝比奈さんの、94年の演奏が耳にこびりついていて、ここが違う、あそこが違う。そればっかり気になっちゃったんだよね。
ミッキーのブルックナー。どうなんだろう。
第一楽章はね、正直、どうなることかと思ったんだよね。
聞き慣れているのより、ちょっとゆったり目で、ちょっと強めに出たトレモロと低弦。エッジの効いた音は、フレーズのぶっつり感とか、他の楽器への受け渡しのつたなさを強調していて。管楽器のぶりぶりした吹き方も相まって、なんていうんだろう。ごつごつした、取っつきにくいブルックナー。
あれ。
それって、どっかで読んだ、朝比奈さんがスコアを見て感じた事とか、どっかの評論家が、ブルックナーがなぜ女性に人気が無いか書いた時に表したブルックナーの音楽、そのまま。
なるほど。この演奏聴いたら、そう思うわな。
そんなことを思いながら、聴いてたんだよ。
KOBELCOホールは、思ったよりデッドなのかな。1階席の後ろの方でも、音に包まれる、というより、ステージの音を聴く、という感じだったのも影響しているのだろうけれど。
でも、だからってつまらない訳じゃなくってね。インテンポで流れている(といわれている)朝比奈さんの演奏では気にならない、音のつながりとかフレーズの朴訥さとか、それが高じた見得とかケレンとか。
あれ、俺どれだけ聞き込んだんだろう、ってびっくりするくらい知らない展開とかフレーズのない曲を、それでも新鮮に聴いていったんだよね。
という訳で、1楽章はまだ余裕があったね。
2楽章なのかな。
管楽器のぶりぶり振りは相変わらずなのだけれど。急に音が薄くなって、ヴァイオリンだけが残るところ。
僕は、聴いたよ。
音の絨毯が、フッと、ステージの床から持ち上がって。ミッキーの頭上くらいまで持ち上がって、そして、消えたんだ。
不思議な、音だったんだよ。
それまでは、人の創りし演奏、とか思っていたのだけれどもね。なんか、そんなことどうでも良くなって、この音が鳴っている場所に今いることが、たまらなく嬉しくなった。
そうしたら。
3楽章の長さは、もう天国にいるようでね。新しく入ったホルンのトップもそうだけど、ワグナーチューバが奏でる天上の音楽。またまた相変わらずのバリバリ感と、ちょっとだけ音程が、なのかな。スコアのせいかもしれないけれど、微妙に揺れる音の浪が、天国に行ききらないで頭上で揺れている天使みたいでね。
もう、なんでもよがりまくり。
4楽章は、音の洪水と、それがくり返される喜びで、もう、茫然自失。
ブルックナーだけじゃないんだぞ、とたんかを切った気恥ずかしさから、あえて西宮ではじめた大ブルックナー展。(なのかどうか知らないけれど)
大フィルのブルックナーが響いたことのないこのホールをあえて選んで、前人の影響から無理矢理抜け出して。
ミッキーのブルックナー、聴かせてもらったよ。
ありがとう。
愛してるよ。ミッキー。
ただ、それだけのはなし。
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