大フィルさんの、お引越 〜第476、477回定期〜 ― 2014年04月12日
今年は息の長かった大阪でも、さすがに桜はすっかりと葉桜になってしまったね。
新年度は、なかなかにばたばたと始まってしまったのだけれど。でも、年度が変わったんだなって実感する、大事な出来事があったんだよね。
大フィルさんの、お引越。
今年度から、井上ミッキーが主席指揮者に就任するのに合わせて、新築なったフェスティバルホールに、大フィルさんの定期が移るんだよね。
という訳で、シンフォニーホール最後の定期と、フェスティバルホール最初の定期。
二つ一遍になっちゃったけれど、きちんと聴いてきたよ。
まず、3月の、尾高さんの、シベリウス。
シンフォニーホール1階席、J列30番。僕はこの席に、結局何回座ったんだろう。オオウエエイジの就任した、シンフォニーに引っ越した最初の年は2階席だったんだよね。確か。2005年くらいから今の席に替わって。1日目に振り替えたり、嫁に行ってもらったり。結局いけなかったこともあったりで、ずっとじゃないけれど、70回くらいはこの席で見たのかな。なじみの席、だよね。
なじみのホールのなじみの席から聴く、なじみのオケ。尾高さんだってなじみ、って言える。
特に感慨、っていうものはなかったのだけれどもね。
シベリウスって、鳴りきらないと意味のない音楽を、一音一音しっかり鳴らしていく丁寧な演奏。
そして、僕は、聴いたよ。
三楽章だと思うけれど。最後のコード。
低弦の伸ばしがだんだん消えていく、最後の音。
あれ、シンフォニーホールってこんなに残響長かったっけ、っていうくらい、永い、永い残響。最後の音が高い天井に吸い込まれてからも残る、余韻。そして、静寂。
シンフォニーホールの天井の高さを意識したのは、じいさんのブルックナー4番を聴いたとき、かな。その時は、高い天にじいさんが昇っていっちゃうんじゃないか、っていう、神々しさの中に不吉な感じがあったと憶えているのだけれど。
尾高さんと大フィルさんが、僕の耳に残した、シンフォニーホールの置き土産。
僕は、確かに受け取ったよ。
そして。
桜の咲き始めた4月の土曜日、ミッキーのフェス定期に、いってきたよ。
まあ、ミッキーもフェスも、最近だけでももう5回目くらいになるから、新鮮みはない、のだけれどもね。
1700席のシンフォニーホールから、2700席のフェス、それも二日間公演、ということでどうなるのかちょっと不安だったのだけれども、土曜日、学生席の充実とかでがんばってるんだね。ミッキーが高校オケ振ったりもしているみたいだし。もちろんミッキー顔見せとあれば満員御礼。これが続くと良いね。
今度の席は、一階BOX席すぐ後ろのど真ん中。指揮者の右にチェロのトップが見えるくらいの角度がついていて、視覚的には最高の席。音は、どうなんだろう。
3月定期のプレトークの時に、大フィルのヒトが、シンフォニーは音が昇って行って、天井の反響板から跳ね返る。でもフェスは壁についたランダムな角度の反響板で、直接音を跳ね返す。だから演奏者にとっても音がダイレクトに聞こえて演奏しやすい、みたいなことをいっていて、それからはそういう目線(耳線?)でも聴くようになったのだけれども。この席ではどう聴こえるんだろう。
プログラムはね、ショスタコの4番。
僕が大フィルさんを聴き始めた2000年に、一回やっているんだよね。この組み合わせ。
その頃は、お正月の特別演奏会、朝比奈隆のブラームス、っていうのをはじめて聴きに行って、それから朝比奈さんの演奏会に通い出した頃で、5番じゃないショスタコなんて知らなかったし。まだ定期会員になる前だったから、結局行かなかったんだよね。
結構評判になった演奏会みたいで、あとから悔しさがこみ上げてきたのだけれどもね。
という訳で、楽しみにしていたショスタコの4番。
その前に、神尾真由子のチャイコv協。
プログラムに、ウォッカ臭い曲、とかさんざん脅かされて聴いたのだけれども。
いやあ。すごい。
曲もすごいけれど、音がすごい。
神尾さんって、すごい子供の頃の印象があるのだけれど(その頃の演奏の、ではなくて、子供だった、という印象ね)、彼女の演奏なのか、どうなのかよく分からないけれど。すごい、音。
フェスは広いから、前に聴いていたシンフォニーのJ列より、今回の15列の方が少し遠いのかな、と思うのだけれども。
最初に聞こえてくるのは、楽器からまっすぐ飛んでくるんじゃないか、っていう直接の音。
ただ、それと同時に、直接音のとげとげしさを優しく、邪魔しないように包み込むオーラのような反響音。それがふわっと包み込むように直接音を取り囲んで。
何とも心地良い、響き。
そして、オラオラ系のチャイコフスキー。オラオラ系のミッキー節と相まって、永い永い第一楽章はまるでクライマックスのような終わり方。
思わず巻き起こった拍手を、ミッキーが手首で止めて。
初演後に2楽章は上品なものに差し替えられたらしいけれど、さもありなん。これぞロマンティック・チャイコフスキー。
ああ、面白かった。
そして、お待ちかね。
ショスタコの4番。
いやあ。
反則だね。
ミッキーは、このホールがこんな音を鳴らすって、しってたのかなあ。曲決めるときに。
チャイコフスキーと同じく似の人とは思えないくらい、悩み、怒り、そして怖がるヒトであるショスタコーヴィッチ。
その苦悩が、木管のソロで、トロンボンの和音で、打楽器の乱れうちで、これでもか、って迫ってくるのだけれど。
その、どの一瞬をとっても、あの、音。
息苦しく身悶えしたくなる直接音と、全方位から優しく包んでフォローする間接音。
そのブレンドがね、とにかくとっても心地良い。
今まで、後ろの方とか2階席とかで聴くことが多かったのかな、フェス。あんまり感じたことがなかったけれど。
もしかしたら、BOX席近くだけの、魔法なのかもしれないね。
だとしたら、ラッキー。この席は手放せないぞ。
今年もよろしく、大フィルさん。
あ、そうそう。
チャイコの1楽章でおこった拍手。
思わずしてしまって、周囲からにらまれたりしたかもしれないけれど。
僕は、嬉しかったよ。
土曜になって、学生1000円で気軽に入れるようにして。そういう大フィルさんの努力が、あんまりコンサートに来たことない人たちを呼び込んだ、ってことだもんね。にらまれても懲りずに、また来てね。
楽しかったでしょ?
大フィルの事務局の皆さん、ありがとう。よかったね。
ただ、それだけのはなし。
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